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1日15分の免疫学(61)自然免疫と適応免疫②

本「ILCがつくるサイトカインは、ナイーブT細胞直接作用したり、所属リンパ節にきた樹状細胞を調節したりして、ナイーブT細胞の分化にも間接的に関与すると考えられている」
大林「ほぉ、……自然リンパ球がそこまで推しに関わっていたとは」
自然リンパ球(innate lymphoid cell: ILC)は、リンパ球類似の形態をもち、Tリンパ球と同様のサイトカインを産生する、抗原受容体をもたない細胞


本「閾値以上の抗原が生成されると適応免疫が誘導される」
大林「それ、意外だった、同じ病原体が2度目に現れたら、適応免疫は必ず出ると思ってたんだよね。でも、自然免疫で抑え込める程度なら出てこないってことだよね」

本「細胞内寄生細菌やウイルスの場合、マクロファージ樹状細胞IL-12をつくることで、ILC1NK細胞IFN-γをつくる」
大林「ほぉ……」

◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
>①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている

>②インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)

>③インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。
IL-7:B細胞、T細胞、NK細胞の生存、分化、ホメオスタシスに関与する

>④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

本「蠕虫の場合、上皮細胞TSLP,IL-33,IL-25をつくることで、ILC2IL-5,IL-13をつくる」
大林「ふむ…」
本「細胞外寄生細菌の場合、マクロファージ樹状細胞IL-23をつくり、ILC3IL-17,IL-22をつくる」
大林「自然センサーをもつ細胞が、見つけた敵に合わせてサイトカインを作る。次に、そのサイトカインを受けて担当の自然リンパ球が特定のサイトカインを作る……そして更にそのサイトカインの受けて担当の適応免疫が……というわけか」

本「適応免疫応答はどのように始まる?」
大林「所属リンパ組織(要は感染が起きた場所の最寄りのリンパ組織)で樹状細胞抗原ナイーブT細胞に提示して、その抗原に特異的なナイーブT細胞がエフェクターT細胞となり、特異的なB細胞も抗体産生B細胞となり、それぞれが増殖して……戦力になるまで数日必要」
本「その間、ILCが時間稼ぎをする」
大林「時間稼ぎ……連携プレイぽくてかっこいい」

本「抗体血中に放出されると自然エフェクター機構特異的に機能する」
大林「自然免疫は非特異的な反応しかしないと思ってたけど、適応免疫で作られる抗体によって、オプソニン化(特定のターゲットに抗体が結合して貪食細胞の食作用を促進する)抗体依存性細胞性細胞傷害antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity(ADCC)ができるんですよね!」

本「適応免疫であるCD8T細胞は、抗原提示している標的細胞(細胞内に抗原が侵入していることを示している細胞)を直接殺傷し、CD4T細胞マクロファージに直接サイトカインを放出して殺菌作用を増強する」
大林「マクロファージに直接っていうのが意外だったな~CD4T細胞が周りにばら蒔いてるイメージだったから、結合して直接一人占めで浴びてるとか……ンフフ」

◆復習メモ
T細胞:胸腺(hymus)で分化・成熟する免疫細胞。ヒト細胞表面にあるMHC分子を認識し、自己と非自己を区別することができる。

T細胞の主な種類
CD4陽性T細胞ヘルパーT細胞と制御性T細胞に分かれる)
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
>ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhがある)
>>Th1:細胞性免疫にかかわる。上記のCD4T細胞はおそらくTh1のこと。
>>Th2:液性免疫にかかわる。
>>Th17:炎症性の免疫応答を促す。
>>Tfh(濾胞性ヘルパーT細胞):B細胞の形質細胞への分化を促す。

>制御性T細胞:エフェクターT細胞を抑制する

CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)

本「病原体の供給源が完全に除去されることで感染が終了し、ほとんどのエフェクターリンパ球死滅する」
大林「我が推し、役割を終えると死んでしまう…」
本「残るのは、長寿命抗体産生プラズマ細胞少数のメモリーB細胞とメモリーT細胞」
大林「メモリーはわりと長期生き残るよね」
本「長寿命抗体産生プラズマ細胞数ヶ月または数年にわたって抗体を作り続ける」
大林「そしてその抗体が体内を循環し続けるわけだ」
本「メモリーB細胞とメモリーT細胞も、何年もの間生存して2度目に速やかに適応免疫応答を引き起こすために備える」
大林「ひたすら待機……」

本「ちなみに、メモリー機構によって絶対に再感染が起こらなくなる感染源と、症状が軽くなるだけのものがある」
大林「あー、一度かかったらもうかからないってやつあるよね。麻しんとか」

本「自然免疫応答の非適応機構のみで解消する感染がどれほどあるかはわからない」
大林「まぁ……自然免疫だけで鎮圧できるなら症状とかもほとんど出ないまま終わるのもあるから、そりゃカウントできないよな」

本「適応免疫が正常で自然免疫を欠損したマウスを見ると、生体防御に自然免疫は必要であり、自然免疫によって完全に治癒しなくとも多くの感染が軽減する」
大林「自然免疫は存在しなければ適応免疫が発動できないしな」



本「多くの感染症では、適応免疫応答が効果的に機能すれば症状はほとんど残らない」
大林「ほとんどということは」
本「感染そのものまたは免疫応答によって激しく損傷することがある」
大林「強い攻撃力は人体も傷つける…」
本「また、感染源が除去されず体内に潜伏するものもある。サイトメガロウイルスや結核菌など」
大林「潜伏といえば免疫不全症候群(AIDS)」
※後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome)
本「AIDSは感染後、適応免疫応答が弱ったときに、病原性の強い全身感染症として再発する」
大林「敵もあの手この手と策を講じてくるよねぇ…」
本「この辺の話は第13章で詳しくやるよ」
大林「おっ、その攻防詳解楽しみ」

本「病原体によって、どのエフェクター機構、どのクラスの抗体が効果的かは異なる」
大林「せやね」
本「新しい概念として免疫応答の様式に応じて特定免疫エフェクターモジュールimmune effector moduleが活性化されるという考え方がある」
大林「なんて???」
本「免疫応答の様式ごとに特化した自然免疫系と適応免疫機構が編成されて協調的に機能するという概念です」
大林「……つまり、病原体の種類に応じて用意される免疫部隊が異なるってこと……かな?」
本「エフェクターモジュールの構成要素は、自然センサー細胞・ILCエフェクターT細胞のそれぞれのサブセットと、抗体のタイプで構成される」
大林「組合せが選ばれてカスタマイズなわけね」

今回はここまで!

免疫細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓


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