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1日15分の免疫学(62)自然免疫と適応免疫③

本「循環型の骨髄単球性の細胞は、感染局所に動員され、ILCエフェクターT細胞のつくるサイトカインや、抗体によって強化される」
※骨髄単球性の細胞…好中球単球(感染組織でマクロファージになる)、好酸球好塩基球
自然リンパ球(innate lymphoid cell: ILC)は、リンパ球類似の形態をもち、Tリンパ球と同様のサイトカインを産生する、抗原受容体をもたない細胞
大林「現場に呼ばれて、強化されて、戦ってくれてるんだな」

本「好塩基球によく似た組織常在性マスト細胞も、エフェクターモジュールによって機能強化される」
大林「マスト細胞と好塩基球は機能が似てるもんね」

本「ILC1,ILC2,ILC3とTh1,Th2,Th17の三種類の主要なサブセットは、骨髄単球系攻撃機能を調整し、適応免疫と統合して制御することで最適な病原体の排除ができるように進化してきた」
大林「カップリングが3つというわけですな。ILC1とTh1、ILC2とTh2...第一防衛の指揮官が第二防衛の指揮官と連携をとる感じかな……かっこいい」
本「これらはサイトカインとケモカインのネットワークで制御されている」
大林「ほう」

◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
>①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている

>②インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)

>③インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。
IL-7:B細胞、T細胞、NK細胞の生存、分化、ホメオスタシスに関与する

>④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

1型応答type 1 responseについて

本「グループ1ILC(ILC1)とTh1細胞、オプソニン化IgGアイソタイプ、マクロファージが、細胞内に寄生する病原体やウイルス、寄生虫に応答する」
大林「んん?寄生虫にも?」

2型応答type 2 responseについて

本「2型応答はグループ2ILC(ILC2)とTh2細胞IgE自然エフェクター細胞(好酸球・好塩基球・組織マスト細胞)で編成され、好塩基球・組織マスト細胞はIgEを結合するレセプターをもつ。多細胞の寄生虫(蠕虫)を標的とする」
大林「編成って響きがかっこいい。軍隊っぽいな」

3型応答type 3 responseについて

本「グループ3ILC(ILC3)とTh17細胞、オプソニン化IgGアイソタイプ、好中球が、細胞内寄生細菌真菌に応答する」

大林「ふむ、これで3種類の編成はわかった、どれがどうやって選ばれるの?」
本「初期の自然免疫応答でどのILCサブセットが活性化するかで決まる」
大林「ほぉん」
本「それではILCの各サブセットの活性化について説明するよ」

1型応答の活性化について

本「病原体と遭遇して活性化した樹状細胞とマクロファージIL-12IL-18をつくり、ILC1NK細胞がこれに反応してIFN-γをつくる」
大林「IFN-γはマクロファージを活性化して殺菌力を高めるよね」


本「そう。マクロファージ病原体をとりこみ、素早くIL-12とIL-18をつくることでILCにIFN-γをつくらせて細胞内寄生病原体に対する自身の殺傷能力を高める。これによってTh1細胞が動く前に数日早くマクロファージの殺傷能力が高められる」
大林「ILC1による補助と、Th1による補助に、レベルの違いとかあるのかしら……Th1の方が強力だったり…してほしいなぁw推しだから」
大林「あっ、Th1はILC1と違って特異的に応答するし、そのマクロファージに結合した状態で直接サイトカインを浴びせる。マクロファージはサイトカインを独り占めできるから強力か……!」
本「ちなみにILC1がつくるIFN-γTh1細胞への分化の初期段階を担っていると考えられている」
大林「え、やば。そんなに関係が深かったのか……描かなきゃ……」

本「ILC1はTh1細胞の応答誘導へとつなげている。活性化したNK細胞によるIFN-γ産生細胞傷害性CD8T細胞の分化を促進していると考えられている」
大林「なんですって???!!!兄弟め!」

2型応答の活性化について

本「次はILC2の話ね。粘膜組織にいるILC2は、STAT5を活性化するサイトカインである胸腺ストローマ由来リンホポエチンthymic stromal lymphopoietinと蠕虫に反応してつくられるIL-33,IL-25によって活性化される」
※STAT……分子内にSHドメインをもっており,それによって受容体のチロシンリン酸に結合し,JAKでリン酸エステル化されるタンパク質.サイトカインの受容体

大林「それらのサイトカインを作るのは自然センサー細胞とかかな?」
本「上皮細胞だよ。上皮細胞蠕虫に共通する分子パターンを感知するからね」
大林「へぇ」
本「活性化したILC2は、IL-13とIL-15を大量に産生する」
大林「蠕虫だもんね、けっこうな規模の防衛戦だ!」
本「IL-13は、上皮の杯細胞を刺激して粘液をつくらせる」
大林「物理防御!」
本「また粘膜平滑筋を収縮させて寄生虫排除を促進する」
大林「ゲホゲホするわけですな。IL-5は?」
本「IL-5は、好酸球の産生と活性化を促進する」


大林「なるほど、戦闘員の準備か。ILC2は我が推しTh2細胞と機能が同じなんだね」
本「でもIL-4を産生しないよ」
大林「えっ、この流れだとType1みたいにILC1がTh1細胞への分化を促進してるのと同様に、ILC2がTh2分化促進するIL-4を作るのかと思ったのに……やっぱりTh2細胞を分化促進する最初のIL-4の創り手はまだ謎なんだ……素敵」
本「まぁILC2がつくったケモカインで誘導された好酸球や好塩基球が、ILC2がつくったIL-5,IL-13で活性化してIL-4をつくるから、間接的にはTh2細胞への分化促進にはかかわってるかもね」
大林「ほぉ…!」
本「それに、ILC2のつくるIL-13が樹状細胞を活性化して局所リンパ組織への遊走を制御しているよ。まぁ樹状細胞がIL-4をつくるかは不明だけど」

3型応答の活性化について

本「ILC3は、バリア組織で細胞寄生細菌と真菌に対する防衛の初期を担う。IL-23とIL-1βに応答してIL-17やIL-22を産生する」
大林「IL-17!Th17だ!」


本「Th17細胞もIL-23とIL-1βに応答してIL-17やIL-22を産生するよ」
大林「ほぉ~お揃い。IL-17やIL-22はどんな作用を起こすの」
本「IL-17炎症性サイトカイン。ストローマ細胞、上皮細胞、骨髄性細胞などに作用して、他の炎症性サイトカイン(IL-6,IL-1β)や造血性増殖因子(G-CSF,GM-CSF)、ケモカインを産生をさせる」
造血性増殖因子造血産生能を増加する作用をもつ物質

大林「ケモカインは単球や好中球を感染局所に招集するよね」
本「IL-22上皮細胞に作用して抗菌ペプチドantimicrobial peptide(AMP)を作らせる」
大林「なるほど、バリアの強化か!」
本「ILC3のつくるサイトカインは間接的に、局所的なIL-23とIL-1βを増やすことで3型応答を促進する」
大林「ILC3もペアになるTh17細胞の分化を促進してる?」
本「そうだね、IL-6,IL-1β,IL-23の上昇によってTh17への分化を促進していると考えられる。実際、多数のTh17が粘膜リンパ組織にいるよ」
大林「おぉ~」

ILCの役割

本「ILCの重要な役割は、他の自然免疫系細胞に微生物を排除するための『資格』を与えること」
大林「エフェクターCD4T細胞と同じだね」

◆復習メモ
T細胞:胸腺(hymus)で分化・成熟する免疫細胞。ヒト細胞表面にあるMHC分子を認識し、自己と非自己を区別することができる。

T細胞の主な種類
CD4陽性T細胞ヘルパーT細胞と制御性T細胞に分かれる)
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
>ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhがある)
>>Th1:細胞性免疫にかかわる。上記のCD4T細胞はおそらくTh1のこと。
>>Th2:液性免疫にかかわる。
>>Th17:炎症性の免疫応答を促す。
>>Tfh(濾胞性ヘルパーT細胞):B細胞の形質細胞への分化を促す。

>制御性T細胞:エフェクターT細胞を抑制する

CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)


本「そう。エフェクターCD4T細胞と同様に、ILCは自身にはそのような資格を与えることはない」
大林「補助helpに徹するわけだ、最初についてた名前はナチュラルヘルパー細胞だもんね」
本「骨髄単球系や粘膜上皮などの細胞はすべて、ILCエフェクターCD4T細胞制御下で機能する」
大林「それってつまり、骨髄単球系や粘膜上皮細胞たちはすべてILCやエフェクターCD4T細胞の補助…サイトカインで指揮されてるってことかな」
本「NK細胞だけは例外だよ」
大林「おっ!さすがは生まれながらの殺し屋!設定が特別だぁ!!!」
本「細胞を直接殺傷するって意味でね」
大林「なるほど、NK細胞は元から『資格』をもっているってことね。『Natural Killer生まれながらの殺し屋』だから」
本「後で詳述するけど、エフェクターCD4T細胞は、抗原を提示する細胞にエフェクターサイトカインを放出したり、B細胞を抗体産生に誘導したりすることで、更に下位に位置する自然エフェクター細胞に対しても殺傷能力を高めて敵排除の『資格』を与えるわけです」
大林「説明文がかっこいい」

今回はここまで!

細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています!↓


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