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1日10分の免疫学(40)免疫記憶③

§ 二次免疫応答の発動条件

本「二次免疫応答は、病原体が再び侵入して、自然免疫と定常レベルの特異抗体による防御を打ち破ったときのみ誘導される」
大林「えっ、二度目の侵入はすぐに記憶細胞が出撃してると思ってた……」

本「記憶T細胞の一部は二次リンパ組織を介さずに末梢組織を再循環する」
大林「へぇ~。む、待てよ、抹消組織ってふんわりイメージ分かる気がするけど、定義を読んだことないぞ」

大林「基本的に知恵袋は信じないけどこれはいいかしら……」

本「話を戻すよ。なので、記憶T細胞CD8T,CD4T(Th1,Th2,Th17)は感染部位で樹状細胞やマクロファージから抗原提示を受ける必要がある」

◆復習メモ
T細胞……獲得免疫を担うリンパ球。名前の由来は、胸腺Thymusで分化成熟するから。

T細胞の主な種類
・CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞と制御性T細胞に分かれる)
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
>ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhがある)
>>Th1:細胞性免疫にかかわる。
>>Th2:液性免疫にかかわる。
>>Th17:炎症性の免疫応答を促す。
>>Tfh(濾胞性ヘルパーT細胞):B細胞の形質細胞への分化を促す。

>制御性T細胞:エフェクターT細胞を抑制する

・CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)

大林「あ~、本来の抗原提示は最寄りのリンパ節だもんね。現場にいる準備がほぼ整ったT細胞に提示するだけってこと?」
本「そう。記憶T細胞の活性化にはCD28の補助刺激が必要ないので」
大林「活性化の条件が少ないのか、それはスピーディでいいね」

本「記憶B細胞は、ナイーブB細胞と同じように血液やリンパ内を再循環して、二次リンパ組織のB細胞領域とT細胞領域の間で二次免疫応答が誘導される」
大林「へ~、記憶T細胞はリンパにはいかないけど、記憶B細胞はいくんだ。B細胞ってTfh(濾胞性ヘルパーT細胞)と出会って相互作用するんだよね」
本「さまざまなB細胞クローンの間で抗原との結合をめぐって競合が起き、最も親和性の高いB細胞が選択的に活性化される」
大林「より効率のいい抗体が選ばれていく過程が、わかってきた気がする」

本「一次免疫応答のときと同様に、Tfhとの相互作用で活性化したB細胞の一部は形質細胞(抗体産生に特化した細胞)となり、その他は濾胞へ……」
大林「そして胚中心反応を起こすんですよね、その辺はまだいまいちわかんない」
本「胚中心で、体細胞高頻度変異、クラススイッチ、親和性成熟を経て、2度目の増殖が始まる」
大林「さらに親和性が成熟するのか……すごいな。まさに研ぎ澄まされていくわけだ」
本「これにより病原体集団が小さくともB細胞応答が起きる」
大林「あー、結合する能力が高いから病原体が少ない段階でもしっかりキャッチできるわけね。早めに抑え込める」
本「あと、記憶B細胞は、活性化ナイーブB細胞よりも早く形質細胞へと分化できる」
大林「どれ位早い?」
本「一次免疫応答では8日かかるところを、二次では4日後に血中で検出される」
大林「おぉ、2倍速か」
本「健常な成人には10の12乗の末梢αβ型T細胞が存在し、半数はナイーブT細胞で残りは記憶T細胞」

αβ型T細胞についてはこちら↓


大林「10の12乗……1,000,000,000,000……1兆か」
本「ナイーブT細胞全体で2.5×10の7乗の数の種類の抗原特異性があるが、記憶T細胞全体では1.5×10の5乗しかないと推測されている」
大林「えぇと……ナイーブT細胞全体では2千5百万種類で、記憶T細胞全体では15万種類か」

本「再感染時は初感染時と比べて平均100倍以上の数のT細胞クローンが応答することとなる」
大林「なるほど、つよい」

本「ウイルス除去後、CD8Tの約95%アポトーシス(細胞の自殺)する。IL-7受容体をもつもの(約5%)は記憶CD8Tを形成する」
大林「IL-7記憶T細胞の再生と生存に必須だから、その受容体があるのが条件ってことか」

◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
>①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。

>②インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)

>③インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。

>④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。


本「数だけでいえば、記憶CD8Tは一次免疫応答に対応するナイーブCD8Tの100~1000倍以上で、ウイルスの再感染が起こっても圧倒的な武力で対処できる
大林「圧倒的な武力!!!ヒュウウウ!」

§ 抗原原罪~変異するウイルス、抗体のデメリット~

本「二次免疫応答の間ナイーブB細胞の活性化は抑制される」
大林「なんで?」
本「低親和性の抗体やIgMが産生されないようにするため」
大林「されたらダメなの?質の低い抗体が同時にあると何故ダメなの?」

もしかしたら、無駄な抗体を作らせないことで、万が一の事故を防いでる?それとも省エネ的な理由?でも本は答えない!

本「最初の感染の際に一次免疫応答で活性化されたB細胞が産生した抗体病原体結合した免疫複合体は、特異的ナイーブB細胞の表面にある抑制性FcγRⅡB1に結合すると、抑制性シグナルが伝えられアポトーシスに誘導される」
大林「えぇっ、殺しちゃうの?そのナイーブにも活性化してもらって抗体作る仲間にすればいいんじゃないの?なんでそこまで新入りに厳しいの?」

やっぱり本は答えない!なんでや、気になる。。。


本「二次免疫応答の間にナイーブB細胞が抑制されることで、変異が起こりやすい病原体(例えばインフルエンザウイルス)への応答は衰えていく」
大林「詳しく教えて」
本「ある抗体が、抗原の4つのエピトープに合致するとして、それがウイルスの変異によって減っていくと……」
大林「エピトープ???」
Wiki「エピトープ (epitope) は、抗体が認識する抗原の一部分のこと」


大林「OK、把握。抗体が抗原を認識してくっつくポイントが4つあるとして、ウイルスの変異によってそのポイントがなくなっていく……そうすると、抗体の抗原への親和性が下がっていくわけだ、効率が下がり、効力も薄れていく……」
本「だけど、完全に共通エピトープがなくなるまでナイーブB細胞は抑制される」
大林「エエエ……まるで効率重視して新人育てずベテラン倒れて破綻する会社じゃん」
本「このように、最初に感染したウイルス株が他の株に対する将来的の応答を抑制する現象を抗原原罪original antigenic sinという」
大林「あっ、聞いたことある!そういうことだったのか!うわ、一つ分かって嬉しい」

今回はここまで!


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