1日10分の免疫学(30)B細胞と抗体➀
第9章 B細胞と抗体による免疫
本「B細胞の唯一の機能は抗体の産生。抗体の最も重要な機能は病原体と結合すること」
大林「抗体が病原体と結合することで他の免疫細胞が応答しやすくなったりするよね……オプソニン化とか、あと中和抗体neutralizing antibody?」
本「インフルエンザウイルスは赤血球凝集素といった糖タンパク質を介してヒト細胞に結合し感染するため、インフルエンザウイルスに対する抗体はその結合を阻害して感染を防ぐ……このような作用を病原体の中和neutralizationと呼ぶ」
大林「感染した組織から樹状細胞が所属リンパ節(≒最寄りのリンパ節)に抗原を運搬して、その病原体特異的なナイーブT細胞が活性化し、各種エフェクターT細胞に分化する……そのうちの濾胞性ヘルパーT細胞がナイーブB細胞を形質細胞の分化へ促すんだよね」
◆復習メモ
ナイーブT細胞は、様々なエフェクターT細胞へと分化する。代表は6種(Tc,Th1,Th2,TH17,Tfh,Treg)。特異的に応答する獲得免疫に属する(1つのT細胞は1種類の抗原のみに反応する。ゆえにT細胞は遺伝子再編成により膨大なバラエティを持つ)。
細胞傷害性T細胞:CD8陽性T細胞、CTL、Tc、キラーT細胞とも表記される。感染細胞や異常細胞をアポトーシス誘導する。
Th1:CD4陽性T細胞、ヘルパーT細胞の一種。主にマクロファージの活性化を補助helpする。
Th2:CD4陽性T細胞、ヘルパーT細胞の一種。主に好塩基球、マスト細胞、好酸球の活性化を補助helpする。
Th17:CD4陽性T細胞、ヘルパーT細胞の一種。IL-17を産生することでこの名がついた。主に好中球の活性化を補助helpする。
Tfh:濾胞性ヘルパーT細胞T follicular helper。CD4陽性T細胞、ヘルパーT細胞の一種。他のヘルパーT細胞は、活性化するとリンパ節を出て感染組織へと向かうが、この細胞は二次リンパ節の濾胞に向かい、ナイーブB細胞の活性化を補助helpする。
Treg:制御性T細胞regulatory T cell。このT細胞だけは他のT細胞とは真逆……エフェクターT細胞を抑制する機能を担う。
本「ちなみに。B-1細胞はT細胞の補助を必要としない。あと、濾胞樹状細胞も大事、B細胞を成熟させるから」
大林「おっ、忘れた頃にB-1細胞!おそらく古代種的なB細胞で、免疫学で登場するB細胞はB-2細胞のことなんだよね。そして濾胞樹状細胞は、二次リンパ組織の濾胞にいる、樹が枝を伸ばしたような形状の細胞であって、免疫学の基礎で出てくる樹状細胞とはまた別モノ、ややこしい」
本「濾胞樹状細胞による広範囲の樹状突起は、消化分解していない生の抗原の巨大な保留域としてB細胞に抗原認識と相互作用の場を提供する」
大林「T細胞相手だとペプチドまで分解した抗原提示だよね、B細胞相手だと生なのか~……あ、そうか、そもそもB細胞はプロフェッショナル抗原提示細胞だったわ」
◆プロフェッショナル抗原提示細胞
:抗原(≒病原体)をペプチドまで分解してMHCクラスⅡ分子との複合体として提示する細胞。MHCクラスⅡ分子を発現する細胞は限られている。主に樹状細胞、マクロファージ、B細胞。ヘルパーT細胞に抗原提示するにはMHCクラスⅡ分子が必須。
本「濾胞樹状細胞には食作用がないため、また、その樹状の広範な細胞表面領域により細胞表面に抗原を未消化の本来の形で数カ月あるいは数年も保持できる」
大林「えっ?!数年??!それがもしかして免疫記憶保持に役立ってるとか?」
本はその辺のことは答えてくれなかった!
本「濾胞樹状細胞を機能増加させる特殊なマクロファージが存在する」
大林「新キャラ出た~!」
本「辺縁洞マクロファージsubcapsular sinus macrophage。濾胞樹状細胞と似た特徴で、食作用をほとんどもたない」
大林「マクロファージ(大食細胞)なのに?!」
本「リンパによって感染組織から抗原が運ばれ、輸入リンパ管からリンパ節の辺縁洞に流入……」
大林「あ~、そこでさっきの辺縁洞マクロファージが抗原を捕捉するのか!」
本「その後、リンパ皮質を通り抜けた抗原はB細胞領域にいる濾胞樹状細胞に捕捉され、髄洞では髄洞マクロファージが…」
大林「また別のキャラが?!同じように食作用がほとんどないの?」
本「髄洞マクロファージmedullary sinus macrophageは食作用が強く、リンパがリンパ節から出る前の濾過作用を担っている」
大林「おぉ、まさにマクロファージ、大食細胞!」
◆復習メモ
マクロ(大きな)+ファージ(食細胞)
ミクロ(小さな)+ファージ(食細胞)※好中球のこと
エンドサイトーシスendocytosis(飲食作用)
:細胞が細胞外から物質を取りこむ作用。対義語はエキソサイトーシス(開口分泌)。ファゴサイトーシスとピノサイトーシスに大別される。この二者は取り込む物質のサイズで分類される。
>ファゴサイトーシスphagocytosis(食作用)
:貪食ともいう。
>ピノサイトーシスpinocytosis(飲作用)
:ファゴサイトーシスよりも小さな物質を取り込む作用。
本「B細胞もT細胞同様にリンパ節にホーミングし、辺縁洞マクロファージの表面にある抗原のスクリーミング(ふるい分け)が行われ、特異抗原と遭遇すると濾胞のB細胞領域に侵入して、濾胞性T細胞と相互作用し、活性化が完了する」
◆復習メモ「リンパ球ホーミング」
:リンパ球(T細胞、B細胞)は、血管→二次リンパ組織→【特異抗原に出会わない場合】→リンパ液→胸管→再び血管→二次リンパ……を繰り返す。
大林「ん?濾胞樹状細胞は出てこないの?」
本「濾胞で特異抗原に出会ってないナイーブB細胞は、濾胞樹状細胞上の抗原を探索する」
大林「そこで濾胞樹状細胞が出てくるのか……まずは辺縁洞マクロファージなんだな?」
本「ナイーブB細胞が抗原を認識すると、CD69分子の発現が誘導され、CD69分子はS1P受容体の発現を妨げる」
大林「出た!スフィンゴシン1-リン酸(S1P)!S1Pが発現したら、S1P濃度勾配でリンパ節から出ていくんだよね!T細胞と同じだ!」
本「抗原を認識した場合は、BCR(B細胞受容体B cell receptor)と抗原で構成された複合体を細胞内に取り込んで処理する」
大林「そしてペプチドまで分解してMHCクラスⅡ分子に提示!」
本「活性化したB細胞は、ケモカインCCL21,CCL19の受容体CCR7の発現が誘導され、B細胞領域とT細胞領域の境界部へ移動する」
大林「濾胞性ヘルパーT細胞も移動するんだよね」
本「T細胞領域で樹状細胞の抗原提示を受けて活性化したエフェクター濾胞性T細胞はCCR7の産生が低下し、B細胞領域へと移行が促される」
大林「まわりにお膳立てされて濾胞性T細胞とB細胞は出会うのか……」
本「濾胞性T細胞が相補的なペプチド抗原に出会うと、それを提示するB細胞と共役対を形成する」
大林「そして二人(?)はがっつり結合して濾胞性T細胞は結合相手のB細胞だけに、たっぷりとサイトカインを浴びせるわけだな。なんかパターンわかってきたぞ!」
今回はここまで!