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1日20分の免疫学(10)抗体⑥

抗体を利用した各種検査方法 について

本「ドナーの赤血球に対する抗体がないか、ドナーの血清中にレシピエントの赤血球に対する抗体がないかを組み合わせて凝集反応を確認される(交差適合試験 crossmatch)」
大林「あ、それ、毎度仕組みを読んで理解はするけど右から左へ忘れるやつや」

本「A型の人がなぜB型抗原に対する抗体を持っていると思う?」
大林「わからん、むしろB型抗原をもってる人をA型とする、位の勢いで把握してる」
本「細菌の中にはA型やB型と共通する抗原を持つものがあり、A型の人がそれに感染した際にB型抗原に対する抗体が作られると考えられている」
大林「あっ、A型の人にとってA型抗原は自己抗原だからB型抗原に対する抗体しか作らないってことかぁ、わかりやすい説明だ」

本「血清中に赤血球に対する抗体があるかを調べたいときは、赤血球に血清を加えて凝集するかを見る」
大林「赤血球にくっつく抗体があったら凝集するから判断できるね」
本「抗体があっても凝集しないこともあるけどね」
大林「あるんかい!なんで?!」
本「赤血球表面陰性荷電していてNaイオンを周辺に集めている。そのことによって赤血球同士互いに反発し、集合しにくい状態にある」
大林「そうなんだ!赤血球同士はくっつきたがらないのか、なるほど。まぁ大量にいるから血管内ではぎゅうぎゅうしてるけど」
本「抗体はその反発に打ち勝って赤血球を凝集するわけだが、生理食塩水中凝集できる抗体を完全抗体できない抗体を完全抗体という。IgMは完全抗体、IgGには不完全抗体がある」
大林「生理食塩水という場所での話にしたのは何故?できるできないはどう違うのさ?」
本「生理食塩水中の反応では凝集をおこせない不完全抗体であっても、アルブミンなどを加えて赤血球表面の荷電を弱めると凝集反応がみられるようになる」
大林「なるほど、環境によっては抗体として機能を発揮できるわけね」

本「マイコプラスマ感染症などでは、低温でのみヒト赤血球に結合する IgMに属する抗体が作られる(寒冷凝集素 coldhemagglutinn)」
大林「へぇ、なんでだろ。感染で熱発してたら役に立たないってことか」
本「患者血清を0〜4℃でO型赤血球に加えると凝集反応が生じる」
大林「エェ……思ったより低温!もうそれ生存してる人体では凝集できない、つまり機能を果たせないってことじゃん。そういう抗体しか作れないようにするマイコプラズマの戦略なの?」
本は答えない!

本「異種動物の赤血球に反応する抗体は異好抗体heterophilantibody という」
大林「あ、それって命名されてたのか」

補体結合反応を利用する検査

本「補体活性化されると細胞膜に孔をあけ細胞を破壊するなどの作用を持つ蛋白である」
大林「何気にすごいよね、補体」
本「抗原抗体結合すると、抗体のFc部補体第1成分が結合して連鎖反応式に補体各成分が第9成分まで活性化される」
大林「単体では攻撃力のない抗体が、普段はおとなしくしてる補体と出会うと攻撃力になるのか…」
本「抗原抗体反応がおきると、補体は結合し消費される。言い換えると、補体の消費の有無がわかれば抗原抗体反応の有無も調べることができる」
大林「なるほど~」

免疫溶菌反応を利用する検査

本「特定の菌に対する抗体が存在するかどうかを調べる方法として、菌に血清などを作用させ、補体を加えて菌が融解するかをみるものがある(免疫溶菌反応)」
大林「抗体があれば補体が活性化して菌膜に孔をあけて融解するね!」

本「同じ方法を細胞に応用できる」
大林「細胞に?」
本「血清中に腫瘍細胞に対する抗体が存在するかを証明したい時」
大林「なるほど、腫瘍細胞か!腫瘍細胞が破壊されたら抗体があるって確認がとれるわけか」
本「細胞が破壊されたかどうかは、トリパンブルーやエオジンという色素で染色されるかで知ることができる」
大林「エオジン!聞いたことある、少女漫画で読んだような…病理医が主人公の彼氏……だったような…」
本「生きている細胞の細胞膜は色素を通さず、細胞は染色されない(dye exclusion)」
大林「そうなんだ!染まったら死んでるってことか…」
本「これを細胞傷害試験(cytotoxic test)という。この検査は臓器移植時の組織適合抗原のタイピングにも利用される」
大林「なるほど、ドナーの細胞を抗原として攻撃するかどうか調べるわけだ」

今回はここまで!

サイトでは細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
転職活動ってごっそり気力もっていかれる気がする…

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