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1日15分の免疫学(81)防御機構の破綻①

第5部 健康と疾患における免疫系

第13章 宿主防御機構の破綻

大林「推しのピンチ回ですね……!」
本「感染防御機構に破綻が見られる状況を3つ紹介します」
大林「3つ…どんなの?」
本「宿主の異常による免疫の障害(例 免疫不全症)、病原体が免疫の回避や破壊をして起きる免疫の障害、特定の病原体感染によって免疫機能が損なわれて易感染性を引き起こすような特殊な場合(例 後天性免疫不全症候群)」
大林「宿主自体に元から問題あり、病原体がなんかやらかす問題全般、特定の病原体が易感染性を引き起こす、の3つね」
※易感染性 (いかんせんせい)…感染しやすい状態。

原発性免疫不全症について

本「まずは原発性免疫不全症primary immunodeficiencyまたは遺伝性免疫不全症inherited immnodeficiencyを紹介する」
immuno:免疫
deficiency:欠損。
※ラテン語 deficientia(不足)⇒ ラテン語 deficiens(欠けている)+-ia(抽象名詞)⇒ ラテン語 deficio(欠ける)+-ens(現在分詞)⇒ ラテン語 de-(~から下に)+facio(作る)⇒ 印欧語根 dheh-(置く)


大林「原発性……?」
本「原発性は遺伝性、二次性は後天性」
大林「おけ、覚える」

本「免疫細胞分化機能のいずれかもしくは両方が障害されて起きる原発性免疫不全症が150以上報告されている」
大林「種類多いな」
本「臨床症状は乳幼児期の反復感染で、しばしば重篤となるのが共通の特徴」
大林「ちなみに二次性免疫不全症は?」
本「他の疾患や環境要因や治療の副作用が原因」
大林「へ~」

本「原発性免疫不全症は、関与する免疫構成成分によって分類できるが、免疫様々な様相が絡み合ってるので1つの欠損様々な影響を生む」
大林「だろうねぇ」

本「免疫不全症の多くは、同一又は類似の病原体による反復感染の既往歴により見つかる」
大林「なるほど、免疫機能が正常なら、免疫記憶ができて二度目は感染しないはずだからか」

本「例えば化膿性細菌の反復感染は抗体補体貪食細胞の機能の欠損が考えられる。ウイルスの反復感染なら…」
大林「T細胞に欠損?」
本「そう。原発性免疫不全症の原因となる遺伝子欠損のほとんどは劣性遺伝で、その多くがX染色体上の遺伝子変異が原因」
※劣性遺伝…

大林「X染色体上…ということは、X染色体を2つもつ女性なら片方で変異しても、もう片方でカバーできるわけか。男性は1つしかないから発症するね」
本「次のページに免疫不全症の例を載せておくよ、ほとんどは稀な疾患で、IgA欠損症が最も多い」
大林「へぇ~…なになに、MHCクラスⅠ欠損、ウィスコット・アルドリッチ症候群、、名前を見てどういうものか想像がつくものとつかないものがあるな」

T細胞の異常と易感染性

本「T細胞の分化異常があると、あらゆる病原体に対して易感染性を示す」
大林「ヒュー!推しの大事さがわかる!」

本「T細胞の分化に異常があると、T細胞依存的抗体応答細胞性免疫応答も起こらず免疫記憶も成立できない。これらを重症複合免疫不全症severe combined immunodeficiency:SCIDと呼ぶ。最も頻度の高いSCIDはX連鎖重症複合免疫不全症XSCID」
ルー大林「シビアにコンバインドな免疫不全症か……」

本「XSCIDは、IL-2Rの共通γ鎖(γc鎖)をコードするX染色体上のIL2RG遺伝子の変異が原因」
大林「IL-2R……ということは、インターロイキン2のレセプターか!」

◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する
サイトカインの種類
①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている
②インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)
インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。
④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

本「IL-2,IL-4,IL-7,IL-9,IL-15,IL-21のIL-2サイトカインファミリーは、レセプターとしてγc鎖を共有している」
大林「えっ、じゃあそれら全部が……」
本「そう、これらすべてのサイトカインレセプター欠損することになる」
大林「ぐわー!大変だ!重要な免疫作用が誘導できなくなる!!!」
本「特にIL-7,IL-15のレセプターは、T細胞NK細胞の正常な分化に必須」
大林「T細胞がダメとなると、B細胞も…」

本「XSCIDの患者は必ず男性
大林「あぁ……男性はX染色体が1つしかないから?」
本「女性だと、NK細胞の前駆細胞の段階で、X染色体不活性化により野生型IL2RG対立遺伝子が機能する細胞が正常に分化し、免疫が正常に構築される」
大林「へぇ〜なんだ?野生型対立遺伝子って」

野生型(やせいがた):生物の標準的な表現型。正常型とも。一つの遺伝子座には複数の対立遺伝子があり,それに応じて異なった表現型が生じるが,そのうち,野生の集団に最も普遍的にみられるものを野生型という。

https://kotobank.jp/word/%E9%87%8E%E7%94%9F%E5%9E%8B-648412

対立遺伝子(たいりついでんし allele):対立形質を規定する個々の遺伝子を指す。アレル, アリルと呼ばれることもある。
相同染色体上で相対応する部分(相同遺伝子座)を占める遺伝子

http://lib.ruralnet.or.jp/nrpd/#koumoku=13162

大林「とりあえずもう1つがちゃんと機能するから大丈夫ってことかな?遺伝子については何度読んでもどうも忘れる……」

本「XSCID患者はほとんどの抗原に対し効果的な抗体を産生できない」
大林「T細胞のヘルプがないもんな」

今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
※現在サイト改装作業中なのでリンクが一時的に切れることがあります


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