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1日5分の免疫学(26)先天性免疫不全

本「先天性免疫不全についてやるで」
大林「先天性……生まれつき、免疫不全……免疫機能不完全ってことか」
本「先天性免疫不全にはB細胞の異常で起きるもの、T細胞の異常で起きるもの、その両方の異常で起きるものがある。他にもあるけど。まずはこれらからいくで」
大林「獲得免疫のB細胞とT細胞がダメだったら、自然免疫ががんばり続けるしかない……」
別の本「獲得免疫(特異的な攻撃)が不全の場合、自然免疫(非特異的な攻撃)だけだと長期戦になったり、敵を全滅させられなかったりする」
大林「じゃ、自然免疫が不全の場合は?獲得免疫だけ元気」
別の本「ヤバい
大林「ヤバい

エッセンシャル免疫学第3版 12ページより

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<復習>
敵が体内に侵入すると、おおよその敵を感知できるセンサー(TLR)を持つマクロファージ、樹状細胞、好中球などが敵を捕捉して防衛しつつ、抗原提示能を持つマクロファージ、樹状細胞が、T細胞やB細胞に情報提供して彼らを活性化させる(自然免疫から獲得免疫へ)。
敵の情報を受け取ったT細胞やB細胞は、準備が整い次第、その敵を集中攻撃して殲滅する。


本「まずはB細胞の異常による先天性免疫不全について!Bruton型無γグロブリン血症!別名、X連鎖無γグロブリン血症!ブルトン病!」
大林「ブルトンがたむガンマグロブリンけっしょう…?」
本「Brutonはこの病気を発見した人の名前や。X染色体上の異常でな、プロB細胞が未熟B細胞に分化する途中でB細胞の成長が止まってしまう……」
大林「ということは、抗体を作るプラズマ細胞に成長できない…」
本「せや。γグロブリンとは、血清蛋白の一区分のことでここに免疫グロブリンが含まれる」
大林「んん?γグロブリンと免疫グロブリンとの関係は?」

WEB「ガンマグロブリンという用語は免疫グロブリンあるいは抗体を含む血液の化学的分画を意味します」


本「抗体が作られないと化膿性感染に弱い。Bruton型無γグロブリン血症の赤ちゃんはどうなる?胎盤通過して母から子へ与えられる抗体は?」
大林「えぇと、IgGだけ!」
本「母親からもらったIgGが切れる頃……生後数か月からその赤ちゃんは化膿性感染を繰り返す」
WEB「ブルトン病は、遺伝性で、男児だけ発症する」
大林「ほぅ……」

WEB「ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)をコードするX染色体の遺伝子の変異に起因する。BTKはB細胞の発生および成熟に必須である;BTKがないと,B細胞期に至る前に成熟が止まって成熟B細胞が欠如し,それゆえ抗体も欠如する。」
大林「より詳細な説明で、具体的なイメージわいた!」

本「じゃ、次はT細胞の異常による先天性免疫不全やるで」
大林「推しがぁぁぁ!」
本「DiGeorge症候群!別名、胸腺低形成症第3、4鰓弓症候群!
大林「名前が更にややこしく……鰓弓って何さ?」

日本形成外科学会HP「鰓弓(さいきゅう)とは、妊娠4週初め頃の胎児にできてくる隆起性の構造体で、顔面や頚部のさまざまな器官(特に骨と筋肉)を作るもとになるものです」


本「胎児の第3、4鰓弓は、胸腺や心臓、副甲状腺などのもとになる部分」
大林「胸腺ですって?!推しのT細胞が選別受けて育つ教育機関じゃん!」
本「せや、T細胞が分化できない。つまりTh1とTcによる細胞性免疫が働かない
大林「つまりウイルスや細胞内寄生菌、真菌に弱い……」
大林「ん?待って、胸腺だめならTh2もだめで、液性免疫もだめになるのでは?」
本「B細胞が正常なら、その辺はB細胞ががんばってカバーできるんや」
大林「ほーん」
本「この疾患は心臓奇形や副甲状腺機能異常も多い。遺伝性はない」
本「じゃ、お次は両方だめになるやつな。重症複合型免疫不全症(severe combined immunodeficiency:SCID)」
大林「BとT両方ダメなら獲得免疫0じゃん!」

本「SCIDが常染色体劣性遺伝で重症複合型免疫不全症が生じた場合を『Swiss(スイス)型無γグロブリン血症』、X染色体(伴性)劣性遺伝で生じた場合を『Gitlin(ギトリン)型無γグロブリン血症』と呼ぶ」
大林「常染色体ならスイス型X染色体(伴性)染色体ならギトリン型

大林「ところで、染色体と伴性染色体って?」
Wiki「常染色体(じょうせんしょくたい)は性染色体以外の染色体のことであり、ヒトの体細胞は22対、44本の常染色体を持つ」


Wik「伴性遺伝(はんせいいでん、ばんせいいでん)とは、性染色体に依存する遺伝形式である。」


大林「えぇと、男性の性染色体はX染色体とY染色体。女性の性染色体はX染色体が2つ。だから、X染色体に異常が生じた場合女性はもう一つのX染色体で補えるけど、男性にはできない…つまり、男性だけに発症する疾患や、女性より男性が重篤になる疾患があると」

ニュース「ちなみに、劣性遺伝、優性遺伝という名称は今後変えていく予定」

本「SCIDはB細胞やT細胞分化・成熟に必要なサイトカイン(特にIL2)の受容体に異常が起こる。Swiss型無γグロブリン血症ではアデノシンデアミナーゼ(ADA)という酵素の遺伝子欠損(ADA欠損)が原因であることが多い」
大林「うーんわからん」
本「両方だめになるやつは他にも毛細血管拡張性失調症(Ataxia-Telangiectasia)やWiskott-Aldrich症候群などがある」
大林「上↑で引用したページの疾患だ!」

本「次回は、好中球の異常による先天性免疫不全についてやるで」
大林「自然免疫の先天性免疫不全かぁ、やばそう」

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