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1日10分の免疫学(73)がんと免疫⑤

γδ型T細胞とがん治療

本「γδ型T細胞には、がんに対する免疫応答を高める特徴が2つある」
大林「おっ、γδ型T細胞の活躍エピソード?!」
本「1つめ。γδ型T細胞が多様な組み合わせの受容体を発現し、悪性細胞と正常細胞を識別して反応できる(p344を見よ)」
大林「復習必須か、よしきた!」

◆復習
αβ型T細胞γδ型T細胞は、発生学的な起源は同じだが重要な差異がある。

αβ型T細胞は、厳格な正の選択と負の選択を受けることで、多型に富むMHCクラスⅠとⅡとそれに結合する非自己ペプチドを認識する受容体をもつことを保証する。
(言い換えると、αβ型T細胞は、多型に富むMHCクラスⅠとⅡに対応できるほどの多様性に富んだTCRを持つ。
そして、この多様性は「自己に反応するT細胞も存在する」ということを意味する。
この危険を排除するために、胸腺では自己ペプチドを提示して、強く反応したT細胞はアポトーシス誘導される(負の選択)。)

γδ型T細胞は、MHC類似のタンパク質に結合する。
αβ型T細胞は、TCR(T細胞受容体:T cell receptor)で抗原を認識するが、反応するか否かはCD4,8などの補助受容体補助刺激分子に左右される。
一方、γδ型CD4,8をもたず、αβ型の活性化に不可欠なCD28補助刺激分子ももたない

γδ型の役割は、非健常細胞を見つけ対応することで、TCR以外に細胞のストレス徴候を認識する受容体をもつ。(つまり何らかのストレスをもつ細胞を非健常と認識して排除し得る)

γδ型T細胞にあるTCR以外の受容体は、NK細胞にもある。

大林「復習してきました!で、もう1つの特徴は?」
本「リン酸化抗原を投与するだけで活性化することができる」
大林「つまり人為的に活性化するのが簡単?!」
本「でもまだ臨床的有用性は得られてない。γδ型の情報が不足しているので」
大林「まだまだ未知な免疫細胞なんだな…」

ADCCについて

本「治療用単クローン抗体で腫瘍細胞を殺すメカニズムは、NK細胞抗体依存性細胞性細胞障害antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity:ADCCである」
大林「説明がほぼ呪文だし、名前が長ェ!えぇと、治療用のシンプルな抗体を投与することで、NK細胞がそれに反応して腫瘍細胞を殺傷するっていう理解でいいかな」

◆復習メモ
単クローン抗体(モノクローナル抗体)
単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体、あるいは抗体分子。通常の抗体(ポリクローナル抗体)は抗原で免疫した動物の血清から調製するため、いろいろな抗体分子種の混合物となるが、モノクローナル抗体は抗体分子種が均一。モノクローナル抗体では抗原特異性も単一。

本「抗体がFab領域で腫瘍細胞抗原と、Fc領域でNK細胞のFcγRⅢと結合して両者を強力接着させる」
大林「Yの字みたいな形の抗体の、V部分が腫瘍細胞抗原にくっついて、I部分がNK細胞の表面にある受容体FcγRⅢとくっつくわけね。そしてそのくっつきが強力!ってわけだ、ADCC!」

本「だが、短所として、ADCCではメタロプロテアーゼADAM33の作用でNKのFcγRⅢの発現減少する」
大林「えぇ…くっつくポイントが減るの困るじゃん(メタロプロテアーゼADAM33ってなんのことかわからんけど今はそっとしておこ…)」
本「その対策としてメタロプロテアーゼインヒビターも処方する」
大林「解決法あるのか、よかった」

樹状細胞の養子移入

本「患者の樹状細胞腫瘍抗原と一緒に培養して、体内に再注入(養子移入)することで、腫瘍抗原に対する免疫応答増強できる可能性がある」
大林「T細胞に抗原提示する樹状細胞に手を加えるわけね。養子移入って独特な表現するなぁ…」
Web「Adoptive transferを日本語訳したものだよ」
大林「ーん、transfer移入はわかるけど、adoptive養子……なんで養子?患者の体内から取り出して増やして戻すんだから実子じゃん??」
アルク「adopt:選ぶ、採択する、養子にする、借用する、借用する、〔習慣・態度などを〕身に付ける」
大林「それ!!!その身に付けるがしっくりくる!抗原のことを学習させて体内に戻すんでしょ?!なんで養子なんだい、学習細胞移入とかでいいじゃん」


本「遺伝子組み換え融合タンパク質であるシプリューセル-Tは、2010年に米国で承認され、治療用がんワクチンcancer vaccineの最初の臨床適用例となった」
大林「へぇ……(なんだ?突然説明もなくシプリューセルTとか言われてもわからんぞ?新手のT細胞なのか???」
Web「シプリューセルTSipuleucel-Tとは、米国のデンドレオン社が開発した前立腺がん治療用ワクチンのこと」
大林「ワクチンの名前か~!」

腫瘍の表面分子に対する抗体治療の展望

本「腫瘍細胞の表面分子を認識するヒト化単クローン抗体のがん治療薬としての応用は増えている」
大林「ヒト化とは?さっきから用語の説明すっ飛ばしすぎじゃない??」
中外製薬「医薬品としてのモノクローナル抗体には、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体があります。遺伝子工学の手法を用いて、抗原に結合する先端の部分だけマウスの抗体を残して、残りはヒトの抗体に変えたのがキメラ抗体やヒト化抗体です」
大林「なんとなくわかった!」

免疫毒素immnotoxinについて

本「ヒト化単クローン抗体により、シグナル伝達の阻害、腫瘍細胞のオプソニン化により貪食NK細胞による殺傷を受けやすくする。また、単クローン抗体は、エフェクター機能ではなく、抗体が結合した細胞を殺すような毒性物質の輸送媒体として用いることもできる」
大林「おぉ!それすごいじゃん!毒くっつけた抗体か~!」
本「生物学的毒素抗体の複合体を免疫毒素immnotoxinと呼ぶ」
大林「なんだかかっこいいな!抗体って何かにくっつく存在だから、ウイルスが細胞にとりつくパーツにくっついて防御したり、貪食細胞に掴みやすくしたり、標的の目印になったりする……いわば補助役だけど、免疫毒素ならそれ自体で攻撃力になる!」

本「免疫毒素の利点は、腫瘍細胞に毒素がより特異的に作用し、増殖性の正常組織には作用しないこと」
大林「おぉ!抗がん剤の有名な副作用である脱毛とかも防げるわけだ」

第17章のまとめ

がん悪性転換した1個の細胞から生じる。
悪性転換は、細胞の生存や分裂に重要な複数の遺伝子に変異が生じることで起こる。
がんは、栄養や空間を奪い、ヒトを死に至らしめる。
がんに対する防御機構としては、細胞自体に備わっているもの(増殖のブレーキやエラーの修正、自殺など)と、免疫系による排除がある。
免疫監視を逃れたわずかながん細胞は増殖を繰り返し変異が蓄積することで、免疫系による排除は難しくなる。
ヒト化単クローン抗体はがんに対する有効な治療法として期待されている。

大林「まとめはわかった。詳細は色々頭が追いつかなかったけど」
本「私の話は以上です」
大林「おわああああ!長かった!『エッセンシャル免疫学』は、『休み時間の免疫学』より長かったああああああ!」
本「お疲れさまでした。まだ理解できてないところがたくさんありそうだからまたおいで」
大林「うぃっす!!!!」

今回はここまで!
次回からは「Janeway's免疫生物学(原書第9版)」の自主勉を始めます!


細胞の世界をファンタジー漫画で描いています↓↓


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