1日15分の免疫学(67)自然免疫と適応免疫⑧
Th17細胞の役割について
本「細胞外寄生細菌や真菌の感染にはTh17細胞のサブセットが応答する」
大林「出た~!エッセンシャルではあまり詳しく書いてなかったやつ!細胞外の寄生細菌と真菌ね、了解」
本「Th17細胞は定常状態ではもっぱら腸管粘膜に配置され、腸内細菌叢と宿主との共生関係に寄与している」
大林「おや、意外。ひたすら炎症系かと。平時は平和維持してるんだ~」
本「もちろん、粘膜バリアから侵入する病原性の細胞外寄生細菌や真菌に対する防御でも重要な働きをしているよ」
大林「そのときは、好中球を活性化して炎症ばりばりの3型応答を誘導するんですよね」
本「Th17細胞は、TGF-βと炎症性サイトカインIL-6,IL-1,IL-23の組み合わせで分化が誘導される」
◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する
インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。
トランスフォーミング増殖因子(Transforming Growth Factor-β:TGF-β):
細胞増殖・分化を制御し、細胞死を促す。
大林「そのサイトカインは誰がつくってるの?」
本「CD103陽性CD11b陽性古典的樹状細胞」
大林「お、おう」
本「Th17細胞は、主にCCR6の発現誘導により、二次リンパ組織を離れ、感染部位で抗原に遭遇するとIL-17A,IL-17Fを分泌し、これによって好中球の産生促進と動員が誘導される」
大林「二次リンパ組織で特異的な抗原の提示を樹状細胞から受けて活性化して、CCR6が生えたことでケモカインとかの濃度勾配で移動して、感染部位に到達するわけね。そして感染部位で宿敵と出会うとインターロイキン17AとFをつくって、これにより好中球が呼ばれると!」
大林「なんとなくこれまでの説明からすると、同じ細胞性免疫でも、Th1細胞はマクロファージメインで、Th17細胞は好中球メインってことか……」
本「Th17細胞はIL-22もつくる」
大林「IL-22の機能は?」
本「上皮細胞の抗菌ペプチドの発現を誘導する。IL-17とIL-22は上皮細胞の静菌的、静真菌的に働く蛋白質…リポカリン-2(細菌の鉄利用を制限)やカルプロテクチン(微生物叢から亜鉛とマンガンを奪う)…の産生も誘導する。これら抗生物質は好中球も産生する」
大林「静菌って何ぞ?」
Web「静菌とは微生物の増殖を阻害あるいは阻止することにより、ある期間の菌の活動を抑制することで、菌の数が一定以下になった状態」
本「カルプロテクチンは好中球の細胞質蛋白質の3分の1」
大林「思ったよりたっぷり詰まってるゥ!」
本「IL-22は上皮細胞の増殖と脱落も促す」
大林「なるほど、細菌や真菌の足場を奪うわけだ」
本「IL-22はバリア組織にいるILC3もつくるが、病原体特異的なTh17細胞が感染局所で持続的にIL-22をつくる」
※ILC…自然リンパ球(innate lymphoid cell)
大林「3型応答でも、ILCが始めて、エフェクターT細胞が引き継ぐわけだ」
本「CD4T細胞の分化は抹消リンパ組織で行われるが、エフェクター細胞の活性はリンパ組織で受けたシグナルだけで決まるのではない」
大林「え……どういうこと?リンパを離れて感染局所についてからのシグナルも重要ってこと?」
本「ナイーブT細胞は、IFN-γによりTh1細胞、TGF-βとIL-6によりTh17細胞への分化が促進されるが、これらのみではエフェクター機能は完全に有効とはならない」
大林「他のサイトカインも必要ってことね」
本「そう。Th1細胞にはIL-12、Th17細胞にはIL-23も必要」
大林「へぇ」
本「ナイーブリンパ球がエフェクター分化するには特異抗原の認識が必要だが、エフェクターT細胞の活性化は一組のサイトカインのペアによってすることができる」
大林「それはつまり、一度エフェクターになると、抗原活性がなくともサイトカインでの活性もできると?」
本「IL-12(STAT4)とIL-18は、ILC1とTh1細胞にIFN-γをつくらせる」
大林「そこも1同士、お揃いなんだ」
※STAT(signal transduction and activator of transcription).STATはインターフェロンやインターロイキンなどのサイトカインにより活性化される転写因子であり,現在までにSTAT1~6までのメンバーが知られている
本「TSLP(STAT5)とIL-33は、ILC2とTh2細胞にIL-5,IL-13産生を誘導する。IL-23(STAT3)とIL-1は、ILC3とTh17にIL-17,IL-22産生を誘導する」
大林「ホッホォ……覚えられんな」
本「IL-18,IL-1が骨髄系の細胞におけるインフラマソームの活性化で産生される一方、2型応答を活性化するIL-33はインフラマソームにより不活性化される」
web「インフラマソームは主に自然免疫細胞を中心に発現し、感染や傷害に伴う危険シグナルに応答 して炎症の惹起を制御する細胞内の分子複合体である」
大林「んん?ということは…」
本「2型応答と、1型と3型が逆向きに制御されるということ」
大林「んんん」
本「抗原非依存的に、サイトカインでエフェクターT細胞が活性化される意義は、組織定在性のメモリーT細胞を速やかに動員するためかも」
大林「ほぉ」
エフェクターT細胞は変化しうる
本「病原体が攻撃から逃れるために戦術を変えることができるように、エフェクターT細胞も状況に応じて変化できる」
大林「ま、まさか……この話は……」
本「エフェクターT細胞は、局所の炎症環境に応じて異なるサイトカインを産生するように変化する(T細胞の可塑性T-cellplasticity)」
大林「おぉおお!詳しく教えて!」
本「3型応答でよく見られるのはTh17細胞がTh1細胞に変化する、またはリプログラミングされる」
本「Th1細胞やTh2細胞は比較的安定しているが、iTreg細胞やTh17細胞はそれほど安定しておらず、周囲のサイトカインの状況によっては他のサブセットに変わることがある」
大林「きたぁああ!それそれ!」
本「iTreg細胞はIL-6,1によりTh17細胞に変わることがあり、IL-12によりTh1細胞になることがある」
大林「きたきた!それ!それな!ようやく教科書で読めたよ!10年ほど前にweb拍手で教えてもらったTregのヘルパー化!」
本「Th17細胞はIL-12によりTh1細胞になることがある。これらの変化は一方向性で不可逆」
大林「ほほぉ!」
本「Th2細胞はIL-12レセプターの発現が低下するので、IL-12への応答生を保っているのはiTreg細胞とTh17細胞とTh1細胞」
大林「ふむふむよしよし、ヘルパーT細胞のキラー化の話はこれから読む教科書に出てくるのかなぁ……たのしみ」
今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
※現在サイト改装作業中なのでリンクが一時的に切れることがあります
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?