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1日10分の免疫学(50)生体防御機構の破綻②

本「細菌由来のスーパー抗原CD4T細胞非特異的に活性化させ、免疫系に悪影響をもたらす」
大林「スーパー抗原とは?非特異的にってどういうこと?」

◆復習メモ
免疫応答は、自然免疫獲得免疫に分類される。
※2つにはっきり分類されるのではなく、両者は密接な関係。

自然免疫:一定の特徴をもつもの(=抗原)に反応する。[非特異的
獲得免疫:T細胞とB細胞が担当。T細胞とB細胞はそれぞれ異なる受容体を持ち、合致する抗原にのみ強力に反応する。[特異的

T細胞:胸腺(hymus)で成熟することからその名がついた免疫細胞。ヒト細胞上のMHC分子を認識し、「非自己(異常をきたした自己も含む)」を排除する。
※MHC分子:主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex; MHC)。ヒトのMHCはヒト白血球型抗原 (HLA)と呼ばれる。とりあえず、「自己であることを証明する分子」と思っておけばよい。MHC分子が「正常に表示」されていればNK細胞も細胞傷害性T細胞も通常は攻撃しない。

T細胞の種類:細胞表面にある分子や機能で分類される。
CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞):様々なサイトカインを分泌することで他の細胞を免疫応答に誘導する。いわば「免疫の司令塔」。
※細かい話になるけど、制御性T細胞もCD4陽性。

>CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞):異常細胞を特異的に傷害する。獲得免疫のキラー担当。

大林「CD4T細胞は獲得免疫担当じゃん、何故に非特異的に活性化するの?」
本「例えば、黄色ブドウ球菌化膿レンサ球菌の強力な毒素は、多くの異なるT細胞のクローンを活性化する。それでスーパー抗原と呼ばれる」
大林「たくさんのT細胞を活性化させちゃうからスーパー抗原なのか」

◆復習メモ
1種類の病原体に反応して活性化するT細胞は、全体の0.001~0.0001%
スーパー抗原の場合、20%に及ぶことがある。
(参考文献:齋藤光正 著「イラストでわかる微生物学超入門: 病原微生物の感染のしくみ 」P40※Wikipediaによると上記の数字は論文からの引用らしい)

本「身体全体の2~20%のCD4T細胞が活性化され、IL-2、IFN-γ、TNF-α過剰に作られる

◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
>ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。

インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)

インターロイキン(Interleukin;IL:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。)※見つかった順でナンバリング

腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

大林「えぇと、インターロイキン2と、インターフェロンガンマと、腫瘍壊死因子アルファがたくさん作られる……それってサイトカインストーム的なやつ?何が起きるの?」
本「激しい嘔吐と下痢の繰り返し」
大林「うひぃ……でも、嘔吐や下痢を繰り返されたら細菌も追い出されちゃうよね、細菌にとって逆効果じゃん、なんでCD4T細胞を刺激するのさ?」
本「感染初期に広範な適応免疫応答を起こすことで自然免疫応答を混乱させて、荒れた粘膜を通過し、そして組織内に侵入した際に貪食細胞がうまく機能できないというのが狙いだと考えられる」
大林「なるほど。彼らはヒトに入り込んで栄養もらいつつ増殖するのが狙いだもんね。サイトカインがたくさん分泌されたら粘膜も荒れて突破しやすい、侵入した組織で貪食細胞が混乱してたら、貪食されない、と」

本「このように、病原体免疫系を弱める方法進化させてきた。変異潜伏(免疫系が弱まる時を待つ)、免疫系に干渉して抑制したり有利に誘導したり……」
大林「免疫細胞も病原体も進化してきたわけだ……終わらない戦い」

§ 先天性免疫不全症について

本「では次は、先天性免疫不全症
大林「病原体による免疫破壊ではなく、先天的免疫系に欠陥がある場合ですな」
本「原発性免疫不全症の研究により、免疫系の仕組みが色々と明らかになった」
大林「特定の遺伝子をノックアウトしたマウスとかで、こんなことが起きるのか~と判明していったんだよね。まぁ、マウスで起きたことが全てヒトで同じように起こるってわけでもないけど」

IFN-γ受容体遺伝子の変異による免疫系への影響

本「例えば、IFNγ受容体に変異が起きると、マイコバクテリアなどの細胞内寄生細菌に対する免疫悪影響を及ぼす」
大林「インターフェロンガンマといえば、マクロファージを活性化させるサイトカイン……自然免疫応答ではNK細胞が産生するよね」
本「適応免疫応答ではCD4Th1細胞CD8細胞傷害性T細胞が産生する」
大林「えっ、細胞傷害性T細胞もIFN-γを産生してるんだ?!すごーい!さすがは我が推し!」
本「IFN-γ受容体欠損症は、マクロファージのIFN-γへの反応を相当低下させる」
大林「ということは、活性化されず、貪食殺菌能もアップしない……たしかに細胞内寄生細菌に対する免疫がピンチだ……貪食作用細胞内に病原体を取り込むから……」

抗体にかかわる遺伝子の変異による免疫系への影響

本「抗体欠損症で最も脅威となるのは化膿性細菌感染症。インフルエンザ菌、肺炎レンサ球菌、化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌などの莢膜保有細菌は、貪食受容体に認識されないので……」
Wiki要約「莢膜(きょうまく、capsule)は、一部の真正細菌が持つ、細胞壁の外側に位置する被膜状の構造物。貪食細胞の食作用を回避する役割を持つ」


大林「なるほど。莢膜を持つ細菌は、抗体によってオプソニン化されて初めて貪食できるから、抗体がないと倒せないのか」
本「サイトカインCD40リガンド遺伝子に異常が起きた場合も、抗体産生が低下する」

◆復習メモ
リガンド:受容体などに結合するモノの総称。(自作の物語でキャラクター名に採用しちゃったけど、役回り的にもちょうどいい…いや、とんでもない名前つけちゃったなと苦笑してる)

大林「CD40……なんだっけ?」
本「T細胞上のCD40リガンドB細胞上のCD40と相互作用してB細胞が活性化し、クラススイッチが起きる」

◆復習メモ
クラススイッチ:B細胞が作る抗体がIgM(初期に作られる抗体)から、IgGやIgEなどに免疫グロブリン(Ig)のクラスが変わること。より強力な効果を発揮する。ヘルパーT細胞との相互作用によって起こる

免疫グロブリン(Immunoglobulin:Ig:抗体):B細胞が産生する糖タンパク分子抗原に結合して、免疫応答を補助・促進をする。IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5つのクラスがある。

抗原:病原体のこと?と思いきや、ぶっちゃけ、抗体にくっつくもの、免疫細胞の受容体にくっつくものが「抗原」と呼ばれる。例えば、本来は攻撃してはいけない自分を攻撃する自己免疫疾患の標的は「自己抗原」と呼ばれる。だけど、本来「抗原」「抗原性」は「人体にとって排除すべき存在」を表す。

大林「つまり、ヘルパーT細胞のCD40リガンドに異常があると、B細胞のCD40と結合できず、クラススイッチできない、抗体産生細胞(形質細胞)になれないということか!そりゃ大変だ!」
本「CD40は、エフェクターCD4T細胞(ヘルパーT細胞)によるマクロファージ活性化のための相互作用にも重要で、この相互作用がないと顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の産生が低下し、骨髄の好中球分化血中への放出を促進できず、血中の好中球が枯渇する」
大林「つまり、ヘルパーT細胞によるマクロファージの活性化がないと好中球が不足する事態になるってこと?!知らなかった……ヘルパーT細胞が思ってる以上に重要!」

長くなってきたので今回はここまで!

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