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1日20分の免疫学(13)リンパ球①

第5章 リンパ球のはたらき


本「この章の要点を先に紹介する」
大林「オッケ~」

リンパ球の発生と分化

本「リンパ球は造血器に発生し、一部は抗体産生を目的とする
リンパ球に分化する(B細胞)。一部は胸腺に入りそこで一定の機能を持つリンパ球に分化する(T細胞)。一部、胸腺外(肝,腸管内)で分化するT細胞もある」
大林「胸腺に入って成熟してから胸腺外で分化するってことかな」

B細胞とT細胞の抗原レセプター

本「B細胞もT細胞も抗原と反応したことで機能を開始する。細胞表面には抗原と1対1の対応性をもつ抗原レセプターがある(特異性)」
大林「1個のリンパ球1種類の抗原レセプターしか持たないんだよね。運命……宿命の抗原との出会いを待つ!」
本「B細胞の抗原レセプターはB細胞レセプター(BCR:B cell receptor)ともいうが、産生する抗体と同一の免疫グロブリンである」
大林「分泌されずにレセプターとしてB細胞表面に生えてるんだよね」
本「T細胞の抗原レセプターはT細胞レセプター(TCR:T cell receptor)ともいい、T細胞はT細胞レセプターを持つリンパ球として定義される」
大林「つまり細胞表面にTCRがあればT細胞って分類なのか。TCRにはαβのペプチド鎖のタイプが多くて、一部のT細胞はγδペプチド鎖だよね」

主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)

本「他人の組織の細胞には、自分の細胞にはない抗原が存在する。同じ
種属でも個体ごとに異っている細胞表面の抗原を組織適合抗原という」
大林「主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)ですね!ヒトのMHCはHLAと呼ぶ」
本「MHCで構成される抗原二種類あって、ほとんどの組織の細胞に存在するクラスIと、B細胞・マクロファージ・樹状細胞など一部の細胞にしか存在しないクラスⅡとがある」
大林「CD8T細胞はクラスⅠに反応して、CD4T細胞はクラスⅡに反応する!」
本「外来性の抗原物質は、抗原提示細胞が取り込むと酵素作用によって分解され、小胞体から移動してきたMHCクラスⅡ分子の溝に収まる。抗原ペプチドを保持したMHC分子は細胞表面に移動して抗原提示する」
大林「外来性っていうのはつまり、細胞が自ら取り込んで分解した対象ってことか。そしてそれはMHCクラスⅡ分子で提示されるわけか」

本「ウイルスの成分などの細胞内で合成された内因性の抗原分子はその細胞中で巨大酵素プロテアソームで分解され、TAP分子によって小胞体に運ばれてMHCクラスⅠ分子の溝に収まり、MHC分子は細胞表面に移動して抗原提示をする」
大林「あ、外因性と内因性ってそういうことか。細胞に感染したウイルスが細胞内で自分を複製させた抗原分子は細胞内で作られているから内因性の抗原分子……OK、理解した」

T細胞の機能

本「T細胞には、他の個体の細胞やウイルス感染細胞、腫瘍細胞を破壊する機能と、活性物質(サイトカイン)を放出して貪食細胞の食作用を助ける機能がある」
大林「前者の機能は細胞傷害性T細胞、後者の機能はヘルパーT細胞だな」
本「第3の機能は、免疫反応の強さを調節すること。抗体産生細胞やキラーT細胞に分化するのを助けたりするT細胞をヘルパーT細胞という。逆に抗体産生・キラーT細胞の出現・サイトカイン産生を抑えて免疫反応を調節しているT細胞をサプレッサーT細胞あるいはレギュラトリーT細胞という」
大林「あ、そういう分類か。T細胞の機能として、細胞傷害、食作用の補助、抗体産生と細胞傷害の補助と抑制…。サプレッサーって呼び名はもうなくなったと思ってたけど、大学によっては普通に使ってるな?」
本「CD4+CD25 +レギュラトリーT細胞は他のT細胞を制御する代表的なもの。他のリンパ球の働きを抑えるサイトカインを放出するTr細胞Th3細胞一種のレギュラトリー細胞である」
大林「なんですって?!詳しく!」
本「あとでね。CD4T細胞は、産生するサイトカインの違いで分類される。インターフェロンγ、インターロイキン2を作るのはTh1細胞でマクロファージの活性化やキラーT細胞の発現を助けて細胞性免疫にかかわり、インターロイキン4、5、13などを作るのはTh2細胞で抗体産生を助け体液性免疫に主としてかかわる」
大林「そして、 IL-17を産生するのはTh17細胞だね」

本「 IL-10を主に作るのはTr1細胞TGF-βを主に作るのはTh3細胞といい、これらは免疫反応の制御を行う」
大林「新キャラ出てきたな。あとで詳細を読むのが楽しみだ」

自然リンパ球

本「K細胞は、抗体分子のFc部に対するレセプターを持っていて抗体を介して細胞を傷害するリンパ球。抗体を仲介とした細胞傷害作用ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)という」
大林「ADCCは新型コロナ関連で学習したけど、K細胞ってちらほら見かけるけど実際なんなの?詳しく知りたい」
本「K細胞はNK細胞同一の細胞。働きの上からこの名がある」
大林「機能が違うから呼び名からNを外してるってこと?」

本「キラーT細胞(細胞傷害性T細胞)は、標的細胞上の抗原に反応した後、ヘルパーT細胞の助けをかりて傷害するようになるまで数日を要する
大林「推しは準備に時間がかかる…」
本「NK細胞はいきなり相手を傷害できるリンパ球」
大林「いきなりステーキみたいな説明すんなし」
本「しかし相手とする細胞は限られていて、1個のNK細胞は何種類かの標的細胞を相手にできるのみ。一部の腫瘍細胞(特にリンパ腫細胞)、ウイルス感染細胞など」
大林「怪しい細胞はぜんぶ標的になると思ってたけど意外と選んでるんだな」
本「NK細胞は、細胞がストレスをうけたとき表出する物質MHCクラスI様物質を認識するレセプターで標的を察知する」
大林「MHC分子(自己であることを示す)が正常に出ている細胞は攻撃しないんだよね。それがNK細胞のブレーキを踏むから」
本「NK 細胞は MHCクラスIをよく表出している細胞は殺しにくい。NK細胞の表面にあるMHCクラスⅠに対するレセプターが標的細胞のMHCクラスⅠに結合すると細胞傷害作用を抑える信号を細胞内に送る」
大林「クラスⅠなのか。クラスⅡはヘルパー(指揮官)級専用だな」
本「NK 細胞上にあるNK細胞の活性化活性化阻止にかかわるレセプターをNKレセプターという。NK細胞は大型原形質顆粒の多いLGL(large granular lymphocyte)で、活性化するとインターフェロンγや走化性サイトカイン(ケモカイン)を産生し、T細胞やマクロファージを活性化し遊走させる」
大林「免疫システムって色んな細胞が関わりあってるよね~」

本「LAK細胞(lymphokine activated killer)は、T細胞の産生するIL-2の作用をうけて数日で腫瘍を傷害できるようになるリンパ球。抗原特異性がなく、T細胞系列由来NK細胞由来とがある」
大林「なんですって?ちょっとキャラクターの整理させて……ややこしくなってきた」
本「キラーT細胞やNK細胞、LAK細胞は、標的細胞と反応するとパーホリンで細胞膜に孔をあけて核に傷害を与えて細胞を死に至らせる(アポトーシス誘導)。Fasリガンドを表出してFas分子を出している細胞をアポトーシス誘導する細胞傷害様式もある」
大林「細胞傷害様式と言うパワーワード……!」

本「NKレセプターとT細胞レセプターとの両方を持つリンパ球がある」
大林「最推しきたー!NKT細胞だ!」
本「代表的なNKT細胞は、TCRに多様性がなく1種類で、糖脂質抗原に反応する。腫瘍細胞の破壊、インターフェロンγやIL-4,13などを作って免疫調節にかかわっているらしい」
大林「らしい、か。あんまりこの本では詳しく紹介されない感じなのかな……推しの情報が足りない……」

本「自然免疫のリンパ球にはNK細胞以外にもいる。たとえばB細胞の抗体産生を補助するNH 細胞nuocyteIh2細胞や、IL-22を産生して上皮細胞を支
持するNK22細胞なども。これらをまとめてinnate lymphoid cells(ILC)ともいう。インターフェロンγを産生するものをILC1、IL-5、13を産生するものをILC2, 17ないしIL-22を産生するものをILC3と呼んでいる」
大林「うぉぉお……種類が増えて免疫の世界の解像度が上がってきた」

本「リンパ球が数多く集まっている組織リンパ組織という。中枢リンパ組織と末梢リンパ組織がある」
大林「中枢は骨髄胸腺だね。未熟リンパ球をつくって成熟させる」
本「末梢リンパ組織は扁桃·脾·腸のPeyer板など。抗原と反応したB細胞が抗体産生し、T細胞が活性化して抗原に応答する場」
大林「この辺はエッセンシャル免疫学とJaneway's免疫生物学で学習した」

本「粘膜に存在するリンパ組織はその局在に応じてその名がついている」
大林「NALT!BALT!GALT!名前がかっこいいやつ!」

鼻咽頭関連リンパ組織 nasopharynx associated lymphoid tissue(NALT)
気管支関連リンパ組織 bronchus associated lymphoid tissue(BALT)
腸管関連リンパ組織 gut associated lym-phoid tissue(GALT)
まとめて「粘膜関連リンパ組織 mucosa associated lymphoid tissue」

本「この部のリンパ球は粘膜から侵入してきた抗原に反応し、そこで機能を果すと共に他の部の粘膜や唾液腺・乳腺などの外分泌腺に移動しても機能を果す」
大林「粘膜免疫同士の連携か」
本「記憶リンパ球となったものは再びその粘膜組織に戻ってくる
大林「歴戦の戦士が他所で指導活躍して元の所属に戻ってくる感」
本「粘膜関連リンパ組織のリンパ球は一般的な免疫系と独立している(粘膜免疫 mucosal immunity)」

本「本章の要点はこんな感じ。次回から詳述します」
大林「すでに頭がパンクしかけてるんだけど頑張る!」

今回はここまで!

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