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1日15分の免疫学(104)アレルギー疾患⑨

アレルギー疾患の治療について

本「アレルギー疾患の治療薬のほとんどは、症状を改善させる薬(抗ヒスタミン薬やβ刺激薬など)、または非特異的な抗炎症・免疫抑制薬(副腎皮質ステロイドなど)で、根治的ではなく対症的な治療」
大林「ずっと使い続けないといけないってことか」

本「新たに普及し始めているアレルギー抑制治療は、抗IgE単クローン抗体を用いたIgE機能の遮断
※抗IgE単クローン抗体:IgEに対する単クローン抗体。
※単クローン抗体(モノクローナル抗体):体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物(抗原)から体を守るために「抗体」がつくられる。抗原にあるたくさんの目印(抗原決定基)の中から1種類(モノ)の目印とだけ結合する抗体を、人工的にクローン(クローナル)増殖させたものをモノクローナル抗体という


大林「つまり、アレルギーの主役抗体であるIgEを封じるわけね」
本「例えばオマリズマブは、IgEが好塩基球やマスト細胞のFcεRⅠに結合する領域に結合する」

大林「なるほど、IgEが好塩基球やマスト細胞の表面にあるFcεRⅠに結合するのを阻害するのか」
※FcεRⅠ:エフシーイプシロンレセプターワン
◆復習メモ
レセプター:receptor:受容体。特定の対象と結合し、細胞内にシグナルを伝達する。
免疫グロブリン(イムノグロブリンImmunoglobulin、略称Ig)は、「Y」の形をしていて、上の「V」部分はFab領域、の「I」部分はFc領域と言われる。
免疫細胞表面にあるFcレセプターが「I」部分と結合し、「V」部分が抗原と結合すると、免疫細胞にシグナルが伝達される。

本「他の白血球に発現する低親和性IgEレセプターFcεRⅡの結合遮断するよ。他にもオマリズマブは好塩基球のIgEレセプター発現低下させ、アレルゲンに対する活性化を抑制し、樹状細胞によるIgE依存性の抗原捕捉と提示を減らす」
大林「樹状細胞による抗原提示が減れば、特異的Th2細胞が分化するのも減るね。なるほど」
本「オマリズマブは2週から4週毎に皮下投与される。4年間投与受けた中等症から重症のアレルギー性喘息患児のほとんどが、喘息治療終了後も無症状のままである」
大林「おぉ~!すごいじゃん!」

本「原則的なアレルギー反応の阻止のために一般的に用いられているのはアレルゲン減感作療法allergen desensitization」
大林「どんなの?」
本「極微量からのアレルゲン投与をして漸増(ぜんぞう)することで減感作をする」
大林「K2のやつだ!メカニズムが気になるやつ!」
本「減感作が起こるメカニズムは完全には解明されていない」
大林「オゥ…」
本「わかっていることは、減感作した患者ではIgE主体の抗体反応からIgGに変化したということ。IgE産生を抑制するTGF-βとIL-10を産生するTreg細胞の誘導に依存すると考えられる」
大林「おっ、守護神出た!」
◆復習メモ
T細胞:胸腺(hymus)で分化・成熟する免疫細胞。ヒト細胞表面にあるMHC分子を認識し、自己と非自己を区別することができる。

T細胞の主な種類
CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhなどがある)と制御性T細胞Treg:Regulatory T cellに分かれる)
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
・CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)

一時的な急速減感作について

本「疾患の治療に必要不可欠の薬剤、例えば抗生物質、インスリン、化学療法薬などについて、一時的な急速減感作acute desensitizationの状態にすることはしばしば可能」
大林「しばしばなんだ。治療でどうしても使わなければならないときの最終手段?どうやるの?」
本「アレルギー症状を起こさないような極めて少ない量から投与を開始して治療用量に至るまで30分ごと量を増やすことで達成される」
大林「それって途中でアレルギー反応起きないの?」
本「その場合は直前の耐性用量まで薬剤投与量を減らしその後再度増加させる」
大林「また反応起きない?」
本「この方法は薬剤に対するIgEで感作されたマスト細胞と好塩基球に重度のアレルギー症状を起こさない程度に少しずつ細胞内メディエーターを放出させて無症候性の活性化を誘発すると考えられている」
大林「あぁ~!なるほど!じわじわ使いきらせるわけか!すごい!何かの兵法みたいだな!」

本「減感作された状態を維持するために患者は治療用量の薬剤を毎日服薬する必要がある」
大林「途絶えたらまたIgEが増えてたまって、アレルギー反応起こすに足りる状態になるからか!」

IgE非介在性アレルギー疾患について

大林「IgEを介在しないアレルギー疾患か……Th2細胞主導ではないということか。どなたがメインキャラなの?」
本「IgGと、抗原特異的Th1細胞Th17細胞CD8T細胞が関与する1型3型応答」
大林「IgE介在性は2型だったよね。非介在は1型と3型応答か~」

本「抗体依存性の赤血球破壊(溶血性貧血)や血小板破壊(血小板減少症)は一部の薬物が原因となって起きる」
大林「溶血性貧血は赤血球がマクロファージの標的になるんだよね、でもなんで薬剤でそんなことが起きるのさ?」
本「薬剤細胞表面に共有結合によって結合して抗薬物IgG抗体の標的となる」
大林「抗薬物抗体か…まぁどんなものでも抗原となり得るから、どんな抗原にも抗体がつくられ得るってことかな」
本「抗薬物抗体ごく一部の人で作られるけど、何故かは不明」
大林「ごく一部の人なんだ、なんでなんだろ、なにかの個体差かな」

抗血清等の治療後の過敏反応について

本「動物の抗血清などの可溶性抗原を用いた治療後に、過敏反応が起こることがある」
大林「なんで?」
本「これは免疫複合体の沈着によって起こる」
大林「免疫複合体といえば、抗体と抗原が複数結合したもの…」
函館市「3型アレルギーは,可溶性抗原(体液中に溶けている抗原)IgGとの反応で起こるアレルギーです。この2つが結合した免疫複合体によって,組織の傷害が起こります」

本「免疫複合体は全ての抗体反応で作られ、その病原性は大きさや抗体の量、親和性、アイソタイプである程度決まっている」
大林「へぇ」
本「比較的大きな複合体は補体を結合して単核貪食細胞によって速やかに貪食される」
大林「その単核貪食細胞ってマクロファージのこと?あ、樹状細胞も一応含まれるのか。抗原提示モードになると貪食能がなくなるけど。それで、小さい複合体はどうなる?」
本「抗原過剰の時に作られる小さな免疫複合体血管壁に沈着して白血球上のFcレセプターと結合し、白血球の活性化組織傷害を誘発する」
大林「どの白血球?!もっと詳細に言っておくれよ」

今回はここまで!(夏コミの新刊作成がいまだに終わらな……今回の新刊は「はじめての法律入門」です)
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