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1日15分の免疫学(66)自然免疫と適応免疫⑦

本「後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome:AIDS)では、CD4T細胞欠損することでTh1応答が十分に機能せず、通常ならマクロファージに排除されるような微生物が拡散する」
後天性免疫不全症候群…ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus:HIV)の感染により、免疫機能が破壊され(CD4をもつ細胞が標的となる。例:CD4T細胞、マクロファージなど)、健常者では通常見られない様々な感染症(日和見感染症)を発症する。

大林「日和見感染だっけ」
※日和見感染…正常の宿主に対しては病原性を発揮しない病原体が、宿主の抵抗力が弱っている時に病原性を発揮しておこる感染症。

本「例えば、ニューモシスチス・イロヴェツィイによる日和見感染」
大林「なんて???」
Wiki「ニューモシスチス・イロベチイ (Pneumocystis jirovecii) はニューモシスチス属(プネウモキスチス属)に属する子嚢菌の一種。ヒトのニューモシスチス肺炎の起因菌で、後天性免疫不全症候群など免疫不全状態における日和見感染で広く知られるようになった。」


本「健常人の肺では、肺胞マクロファージによる排除によりニューモシスチス・イロヴェツィイは存在しないが、ニューモシスチス・イロヴェツィイによる肺炎がエイズ患者の死因となることが多い」
大林「ニューモシスチス・イロヴェツィイ……名前長!」

2型応答について

大林「待ってました!推し!Th2細胞ですね!」


◆復習メモ
T細胞:胸腺(hymus)で分化・成熟する免疫細胞。ヒト細胞表面にあるMHC分子を認識し、自己と非自己を区別することができる。

T細胞の主な種類
CD4陽性T細胞ヘルパーT細胞と制御性T細胞に分かれる)
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
>ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhがある)
>>Th1:細胞性免疫にかかわる
>>Th2:液性免疫にかかわる
>>Th17:炎症性の免疫応答を促す
>>Tfh(濾胞性ヘルパーT細胞:T follicular helper):B細胞の形質細胞への分化を促す。
>制御性T細胞:エフェクターT細胞を抑制する
・CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)

本「2型応答は、蠕虫回虫(線虫nematode)、2種類の変形動物(サナダムシ(条虫)と吸虫)を標的とする」
大林「まぁつまり……寄生虫ですね」
本「寄生虫は大型の病原体であり、全長の平均は約1mm~から1m以上
大林「細胞から見たらでかすぎて貪食は無理だ」

本「開発途上国ではほとんどすべての動物やヒトの腸管に蠕虫が寄生していると言っても過言ではない」
大林「そんなに?!」
本「多くは2型応答により除去されるが、排除できずに慢性的な疾患の原因ともなる」
大林「おぉん」

本「どこからどのような種類が侵入しようとも蠕虫に対する適応免疫Th2細胞によって制御されている」
大林「推しかっこいい!」
本「Th2応答は、寄生虫が作った物質によって上皮細胞、ILC2、マスト細胞、樹状細胞が刺激されて始まる。ナイーブCD4T細胞に蠕虫の抗原を提示する樹状細胞はILC2のつくるIL-13や上皮由来のTSLPなどの自然免疫サイトカインによって活性化される」
※ILC…自然リンパ球(innate lymphoid cell)。
大林「出たなTSLP!」
※胸腺ストローマ由来リンホポエチン (Thymic stromal lymphopoietin:TSLP):抗原提示細胞の活性化を通じて、 T細胞集団の成熟に重要な役割を果たす。

本「TSLPは、Th2細胞への分化を促進する樹状細胞選択的に活性化して、Th1,17細胞を誘導する樹状細胞の分化を抑制する」
大林「待って?樹状細胞にそんな分類があるの?Th1とTh2のどちらに誘導するかみたいな……」

本は答えない!

本「Th2細胞への分化に必要IL-4の産生源は状況により異なる。iNKT細胞、マスト細胞、好塩基球など様々の種類の細胞が産生していると考えられている。どれか1つが特に不可欠というのはない」
大林「ウヒョー!最推しが出た!iNKT!」


本「Th2細胞は、リンパ組織から出て蠕虫が侵入した部位移動して、血中を循環している2型自然エフェクター細胞動員機能発現促進する」
大林「2型……好酸球、好塩基球?」
本「マクロファージと組織マスト細胞もね」
大林「そうか、抗体を介するからマクロファージとマスト細胞も関わるんだった」

本「蠕虫に対する応答は、主に寄生虫の排除と寄生虫が侵入する際の組織損傷抑制
大林「半分はやさしさ…」
本「IL-13は、杯細胞の粘液産生を直接促進、平滑筋を活性化し粘膜組織の運動活発化させて粘膜上皮細胞の遊走とターンオーバーを促す」
大林「なるほど、上皮ごとさよならか」
◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている

②インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)

インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。

④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

本「Th2細胞とともに分化するIL-4産生Tfh細胞によってB細胞がIgEを産生する」
Tfh(濾胞性ヘルパーT細胞:T follicular helper):B細胞の形質細胞への分化を促す。

大林「そのIgEは、マスト細胞、好酸球、好塩基球のFcεレセプターに結合して、自然免疫である彼らを抗原特異的に活性化させる!」
本「そう。そしてIgG1も産生されてマクロファージも2型応答に関与する」
大林「IgG……オプソニン化ですね!」



本「Th2細胞が産生したIL-4,13は、選択的活性化マクロファージalternatively activated macrophage(M2マクロファージ)の分化を促進する」
大林「?!待っ……古典的活性化マクロファージ(M1マクロファージ)が出てきたと思ってたら次はM2……つまり、Th1細胞が分化促進するのはM1マクロファージで、Th2細胞が分化を促進するのはM2マクロファージってこと?!そしてやはり進化的にはTh1細胞が先だから古典的って呼ぶの?」

本「M2マクロファージはM1マクロファージと異なり、寄生虫殺傷と排除に関与して、組織の再構築と修復を促進する。また、アルギニンからオルニチンプロリンをつくるアルギナーゼ-1を発現する」
大林「えぇと……つまりはオルニチンやプロリンをつくるわけね。どんな効果が?」
本「オルニチンは、ある種の蠕虫の幼虫表面にIgGが結合している場合に直接的な毒性を示す」
大林「IgGと結合して毒性を発揮するということかな?さっきマクロファージが寄生虫を殺傷とか言ってて、マクロファージは貪食細胞で寄生虫は貪食できるサイズじゃないのになと思ってたけど……オルニチンをつくることでIgG経由で攻撃してるってことか!」
本「これもまた抗体依存性細胞性細胞傷害ADCC」
※抗体依存性細胞傷害活性(Antibody Dependent Cellular Cytotoxicity)

本「Th2細胞によって活性化されたマクロファージは、寄生虫が這い回ってできた損傷を修復し、寄生虫を物理的に閉じ込める重要な役割も担っていると考えられている」
大林「物理的に閉じ込める??組織修復のためにコラーゲン産生を促進してそれで閉じ込めるとか?」
本「いや、コラーゲンの形成には、マクロファージのつくるプロリンが必要。そして、M2マクロファージは肉芽腫を形成する」
大林「あぁ、修復と閉じ込めは別の話か。プロリンが修復に役立って、そして、肉芽腫で寄生虫を閉じ込める?」
本「寄生虫の幼生を閉じ込める」
大林「成体は無理かぁ」

大林「ILC2もTh2細胞と同じサイトカインつくるよね?」
本「ILC2も自然エフェクター細胞もIL-13をつくってマクロファージを活性化できる……が、維持はできない」
大林「なるほど、長期的に維持できるのは我が推しTh2細胞だけ!」
本「Th2細胞とILC2がつくるIL-5によって、好酸球が動員され、活性化され、主要塩基性蛋白質major basic protein:MBPといった細胞傷害性の分子を放出して寄生虫を直接傷害する」
大林「出たぁア!免疫界のRPG!」

本「好酸球IgEを介して脱顆粒するFcεレセプターと、ADCCを引き起こすIgGのレセプターと、IgA結合で脱顆粒するFcαレセプターをもっている」
大林「ほぉ」
本「粘膜にいるTh2細胞がつくるIL-3,9によって、粘膜マスト細胞mucosal mast cellも動員され、増殖活性化する」
大林「粘膜マスト細胞とは?」
本「他の組織のマスト細胞と違ってIgEレセプター少ししかもたず、ヒスタミンほとんど作らない
大林「おや、マスト細胞と言えばたくさんのIgEレセプターとたくさんのヒスタミンなのに」

本「粘膜マスト細胞は、サイトカインによる活性化やレセプター結合したIgEの寄生虫結合によってプロスタグランジン、ロイコトリエン、粘膜マスト細胞プロテアーゼmucosal mast cell protease:MMCP-1などの炎症性メディエーターを大量放出する」
大林「MMCP-1?」
本「MMCP-1は上皮の密着結合を分解する」
大林「なるほど、浸透性を高めて体液の流出を増やすわけだ」
本「そう。寄生虫を洗い流す」

今回はここまで!

細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
※現在サイト改装作業中のため一部リンクが切れています


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