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1日15分の免疫学(121)自己免疫と移植14

移植とTreg細胞

本「Treg細胞は移植片拒絶のアロ反応性免疫応答でも重要な免疫調節的役割を担っていると考えられている」
大林「流石は免疫界の守護神!そこにしびれるあこがれるぅ!」

◆復習メモ
T細胞自己非自己を認識できる免疫細胞。胸腺Thymusで成熟するためT細胞と呼ばれる。MHC分子抗原ペプチド複合体を認識する。
細胞表面分子CD4を発現するT細胞は、CD4T細胞とも呼ばれ(ヘルパーT細胞や制御性T細胞に分化する)、MHCクラスⅡ分子を認識する。
CD8を発現するT細胞はCD8T細胞とも呼ばれ(細胞傷害性T細胞に分化する)、MHCクラスⅠ分子を認識する。
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。

MHC分子主要組織適合遺伝子複合体major histocompatibility complex。ほとんどの脊椎動物の細胞にあり、細胞表面に存在する細胞膜貫通型の糖タンパク分子。ヒトのMHCはHLAと呼ばれる(ヒト主要組織適合遺伝子複合体Human Leukocyte Antigen)。
MHC分子は2種類あり、クラスⅠ分子はほとんどすべての細胞に発現しているが、分子はプロフェッショナル抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ、B細胞)といった限られた細胞にしか発現していない。

本「マウスの実験で、レシピエントやドナーからCD25陽性Treg細胞を移植前に除去するとGVHDとその後の個体死加速した」
大林「ヒィ!Treg細胞の存在感でかい!」
※GVHD:移植片対宿主病graft-versus-host disease…移植片に含まれているドナーの成熟T細胞が、レシピエントの臓器等を異物と認識して攻撃する。

本「ドナーから採取したTreg細胞体外で増やして移入するとGVHDによる個体死を遅らせたり阻止できたりする」
大林「守護神すごい!」

本「ヒトでもTreg細胞を増やすIL−2低用量投与によってGVHD阻止効果を得られた」
◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている

②インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)

インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。

④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

本「マウスでは、自然発生型もしくは誘導型Treg細胞を移入するとアロ移植片の拒絶が有意に遅れた」
大林「ほぉ〜!では移植の際にTreg細胞を増やしておけばよいかも……?」

◆復習メモ
nTreg:naturally occurring regulatory T cell 内在性制御性T細胞
tTreg:thymus-derived Treg 胸腺由来の制御性T細胞(胸腺中で発生するCD4T細胞であり、CD25や大量のL-セレクチンレセプターCD62LCTLA-4を発現している)

iTreg:inducible regulatory T cell 誘導性制御性T細胞
pTreg:peripherally derived Treg 末梢誘導性の制御性T細胞※腸管に多い


本「もう一つのクラスのTreg細胞であるCD8陽性CD28陰性T細胞アネルギー状態であり、抗原提示細胞のCD4T細胞活性化能力を抑制していると考えられている」
※アネルギー(機能的無反応性)…刺激を受けても活性化しない状態。
大林「自身はアネルギー状態で抗原提示細胞を抑制してるの……?よくわからん説明だな、えっ、待って、CD8????」
WEB「CD4陽性制御性T細胞注1)が自己免疫反応(自己免疫疾患)を回避するために自己に反応するCD8陽性T細胞に安定的な免疫不応答状態(アネルギー)を誘導する…(略)…健康人の体内に自己に反応するCD8陽性T細胞がアネルギー状態(T細胞が抗原からの刺激に対して活性化せず反応できない状態)で存在し、自己免疫応答を抑制している」
大林「待って???私は今までCD4陽性T細胞がTreg細胞(制御性T細胞)とヘルパーT細胞に分化する、CD8陽性T細胞は専ら細胞傷害性T細胞(CTL)に分化するって理解してたけど、え、もしや、CD8陽性のTregもいるのか…たしかに教科書にはCD8陽性T細胞のほとんどはCTLに分化するって書いてるから……ほとんどってことは、そうじゃないのもいる……それがTregに分化してるってこと?!アネルギー状態の?!えっなにそれ萌える!!!!」


本「このアネルギー状態のTreg細胞は、ドナー細胞に対する傷害活性を示さず、抑制性キラーレセプターCD94を高レベルに発現する」
大林「抑制性キラーレセプターCD95???細胞傷害するのを抑制する受容体をたくさんもつってこと?細胞傷害するブレーキまみれだから細胞傷害しないってこと???えぇぇ、うわああ、もっと詳しく知りたい!」

胎児と免疫抑制

本「外来性組織で寛容されるものとして哺乳類の胎児がある」
大林「たしかに胎児は父親由来のMHCも混ざってるから外来性の組織だな。移植片のように拒絶されかねない……けど守る仕組みがあるんでしょ」
本「胎児への寛容はあまりにも普通の状態であることから機序の研究が難しい」
大林「どういうこと?」
本「胎児を拒絶する機序が滅多に活性化されないからそれを普段制御している機序を掴むことが難しい」
大林「まぁたしかに破綻してこそわかるものがあるもんな」

本「胎児由来の組織である胎盤は、母親のT細胞から胎児を隔離しているらしい」
大林「胎盤って胎児由来なんだ?!どうやって隔離してるの?」
看護roo「胎盤は母体の組織に由来する基底脱落膜と、胎児の組織である絨毛が一緒になって構成されており、円盤状の基底脱落膜のなかに絨毛(じゅうもう)が納まっているような形をしています。」

本「胎盤の外側はMHCクラスⅡ分子発現しない栄養芽細胞で、クラスⅠも一部の限られたサブセットを低レベルにしか発現しない」
大林「なるほど。T細胞MHC分子とペプチドをセット標的かどうか認識するからMHCがほとんど発現してないならT細胞は免れるね…、でもMHCが発現しないとNK細胞が攻撃するのでは?」
本「栄養芽細胞はHLA−Gを発現することで攻撃を免れているのかもしれないね」
大林「HLA−G?」
Jstage「古典的 HLA 遺伝子と比較して多型性に乏しく局所的な細胞に発現を示すことから非古典的 HLA クラス I 遺伝子の一つに分類されている」

本「多型性がほとんどない非古典的HLAクラスⅠ分子。NK細胞細胞傷害を抑制する」
大林「へぇ~」

今回はここまで!
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