1日10分の免疫学(39)免疫記憶②
本「では、ワクチンの話をしましょう。牛痘ウイルス(ワクシニア)の予防接種をすると、血中のワクシニア特異抗体は最大値へと急速に増加する」
大林「ワクシニア(ワクチニア)!ワクチンの始まりですね!その特異抗体はいつまで維持されるの?」
本「接種から約一年で最大値の約1%まで減少し、この状態が最大75年間維持される」
大林「おわ、思ったより長い!」
◆復習メモ
免疫学に登場する「特異的」とは?
獲得免疫(T細胞、B細胞が担う)は、特定の病原体に集中的に応答する。
(自然免疫より効率がいい)
T細胞とB細胞は、遺伝子再編成により、細胞表面にある受容体の形状を変化させる。このパターンは膨大な数となる。
個々のT細胞とB細胞は、この異なる受容体の形状に合致する抗原(病原体など)と出会うと活性化して増殖し、その抗原を排除する。
言い換えると、合致しなければT細胞とB細胞は応答しない。
例えば、1種類の病原体が侵入してきたとして、それに合致して応答するのはすべてのT細胞の0.001~0.0001%とされる。
病原体を捕捉した樹状細胞は、最寄りのリンパ節へ移動して抗原提示を行う。すべてのT細胞が体内のリンパ節をすべて通過するのに約24時間を要する。
本「ちなみに、抗体分子の血中での生存期間は約6週間」
大林「約1ヶ月半強か……使用期限が意外と長い」
本「特異的B細胞は10年ほどで最大値の約10%まで減少し、定常状態となる」
大林「T細胞は?」
本「記憶CD4T細胞と記憶CD8T細胞も約75年間維持される」
大林「すごいなぁ、他のワクチンもそれくらい維持されるの?」
本「ジフテリアのワクチンは、接種後19年ほどで抗体は半減する」
大林「牛痘と比べると早いな」
本「麻疹ウイルス抗体の半減期は200年とされる」
大林「にひゃ………?!人間が死んでるよ!」
大林「ところで、ワクチンの種類によって抗体の量を維持できる期間が違うの何でなの?」
本は答えない!!!!どこかに書いてあるに違いないが。。。
本「ところで、リンパ球の生存には抗原による刺激が必要なのは覚えてる?」
大林「うん。運命の抗原に出会わなければ生存シグナル不足でB細胞もT細胞も死んじゃうんだよね………あっ、長期生存の記憶細胞はどうしてるの?抗原が来ない間、生存シグナルもらえないじゃん!」
本「記憶細胞は静止状態にあり、ごく一部が分裂して寿命で死んだ細胞の分を補っている。記憶細胞の補充は骨髄で起こり、間質細胞やサイトカインの作用で維持されていると考えられている」
大林「あー、骨髄の間質細胞か……前に出て来たよね。いまいちわかってないんだけど」
本「記憶B細胞は細胞表面に『クラススイッチと体細胞高頻度変異を経た免疫グロブリン』と『CD27』をもつので、それで記憶細胞かエフェクターB細胞か、ナイーブB細胞かを見分けることができる。ちなみに、形質細胞は表面に免疫グロブリンをもたず、抗体を分泌する」
大林「へぇ、じゃあ、T細胞は?」
本「区別しづらい」
本「B細胞の方から詳しく説明していく。まず、一次免疫応答で低親和性の抗体IgMが産生される」
大林「えぇと、まずは感染初期に作られる抗体IgMがご登場するわけだ。低親和性……言い換えると、その病原体に特化してるわけではないので結合能が低い、だから効果は少なめ」
本「次に体細胞高頻度変異、親和性成熟、クラススイッチを経て、高親和性のIgG,IgA,IgEが産生される」
大林「体細胞高頻度変異と親和性成熟……まぁ、抗原に反応してものすごい勢いでB細胞が戦闘態勢を整えていくんですよね、戦隊もので言うなら変身かな。そして、クラススイッチで武器をカスタマイズする感じかな」
本「記憶細胞は最も親和性の高い抗体を産生するB細胞のクローンから生じる」
大林「それどうやって選ばれるの?」
本「中心細胞は、抗原特異的ヘルパーT細胞との相互作用により生存シグナルを受けとる……つまり、親和性が低いと抗原を結合できず、ヘルパーT細胞に抗原を提示できない」
大林「あ~、出たよ中心細胞。その辺まだ頭が整理追い付いてないんだけど。とりあえず、抗原に結合する能力が低い抗体しかもってないと、ヘルパーT細胞への抗原提示ができず、生存シグナルも受け取れない……だから低親和のB細胞はそれで淘汰されていくわけか」
中心細胞についてはここで学習してます↓↓
今回はここまで!
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