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1日10分の免疫学(47)自然免疫と適応免疫の共進化⑤

§ NKT細胞の活性化

本「NKT細胞活性化には、T細胞受容体(T cell receptor:TCR)からのシグナルと、サイトカイン受容体からのシグナル両方が必要。NKT細胞受容体は、樹状細胞(Dendritic cell:DC)、マクロファージ、好中球、B細胞の表面にあるCD1d分子が提示する脂質を認識して、相互に活性化する」
大林「えぇと、樹状細胞とマクロファージと好中球とB細胞にあるCD1d分子にくっついている脂質抗原NKT細胞が認識するのか。」
本「NKT細胞は、NK細胞のようにIL-12の受容体を高レベルに発現している」

◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
>①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。

>②インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)

>③インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。

>④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

大林「インターロイキン12ってどんな効果だっけ?」
本「NK細胞NKT細胞活性化する主要なサイトカイン」
大林「ウオオオ!重要じゃん!覚えておこ!IL-12ね!」
本「ちなみに、NKT細胞は、IL-18,IL-23,IL-25でも活性化する」
大林「オゥ……我が最推しはインターロイキンの12,18,23,25で活性化するのか。覚えられるかな」

本「活性化を引き起こす抗原提示細胞とサイトカイン種類により、NKT細胞はTh1,Th2,Th17のサイトカイン分泌や、,細胞傷害性の獲得等の異なるエフェクター応答を起こす」
大林「さすがに1つのNKTが同時にすべて……ってのはないのかな。とりあえずNKT細胞はその状況に応じて各種T細胞の能力を獲得し得るわけだ。すっげぇや!」

◆復習メモ
T細胞の主な種類
・CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞と制御性T細胞に分かれる)
※CD分類:細胞の表面にある分子の分類基準。
>ヘルパーT細胞(Th1,Th2,T17,Tfhがある)
>>Th1:細胞性免疫にかかわる。
>>Th2:液性免疫にかかわる。
>>Th17:炎症性の免疫応答を促す。
>>Tfh(濾胞性ヘルパーT細胞):B細胞の形質細胞への分化を促す。

>制御性T細胞:エフェクターT細胞を抑制する

・CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞=キラーT細胞)

本「NKT細胞は、感染部位に入って樹状細胞と相互に活性化し、NKT細胞がIFN-γ分泌とCD40リガンドの発現を誘導し、これにより樹状細胞のIL-12の発現増強を誘導する」
大林「NKT細胞が樹状細胞にIL-12を出すように促進して、そしてそのIL-12でNKT細胞が活性化される……すごい仕組み、相互作用だな」

本「NKT細胞の活性化で炎症反応が開始して、好中球、NK細胞、単球などが感染部位に動員される」
大林「うわぉ……ほんとに指揮官だな、NKT細胞は」
本「樹状細胞がとりこんだ病原体脂質抗原は、CD1dに結合して細胞表面に運ばれ、NKT細胞のαβ型T細胞受容体認識される。これによりNKT細胞の活性化に必要なシグナルが送られる。病原体を認識した樹状細胞のTLR(トル様受容体 Toll like receptor)は内部にIL-12分泌シグナルを送り、樹状細胞はこれによりIL-12を分泌して、このIL-12がNKTのIL-12受容体に結合し、NKT細胞は二つめの活性化シグナルを受けとることとなる」
大林「ハァ~なるほど。覚えること多いなぁ」

◆整理
活性化シグナル1
↓ 樹状細胞の表面にあるTLR(トル様受容体)が病原体を認識する
↓ 樹状細胞の内部にIL-12を分泌するシグナルが送られる
↓ 樹状細胞がIL-12を分泌する
NKT細胞がIL-12受容体でIL-12を受け取って活性化する

活性化シグナル2
↓ 樹状細胞病原体をとりこむ
↓ 樹状細胞内部で分解され、その脂質がCD1dに結合して細胞表面で提示
NKT細胞のαβ型T細胞受容体がこれを認識してNKT細胞が活性化する

§ MAIT細胞について

本「粘膜関連インバリアントT細胞(mucosal associated invariant T cell : MAIT細胞)は、粘膜組織に分布する成熟αβ型エフェクターCD8T細胞である」
大林「CD8ですって?!細胞傷害性をもつってこと?!じゃあ、推しの粘膜組織バージョンじゃん!うひょ~!」
本「MAIT細胞のT細胞受容体(T cell receptor : TCR)はMR1が提示する抗原を認識する」
大林「MR1?」

Web「MAIT細胞は、自然免疫型T細胞に分類される細胞で、ヒトにおいては最大級のT細胞亜集団とされています。当初、腸管粘膜固有層に多く局在することから命名されましたが、肝臓末梢血単核球にも高頻度に検出されることが報告されています。」
大林「自然免疫型T細胞??!ヒェエ、獲得免疫の代表格なT細胞の自然免疫バージョンもあるのか……それで、MR1は?」
Web「MR1(MHC class I-related Protein)はβ2-microglobulin(β2m)と非共有結合した膜タンパク質で、非古典的クラスⅠ分子の1つです。生体内のほぼすべての細胞に発現しています。定常状態では細胞表面上に存在せず、細胞内小胞体に局在します。感染などの刺激によって、感染源由来のビタミンB誘導体などを提示したMR1分子は細胞表面上に移行し、MAIT細胞を活性化します」
大林「えぇと、MR1は、つまり、MHCクラスⅠに似た関連分子……MHCクラスI様関連分子ってことか。ほぼすべての細胞にあるっていうのはMHCクラスⅠ分子と同じだね。感染などの異常事態で細胞表面に出てそれを知らせてくれるわけだ」


本「MR1の抗原ペプチドを収納する溝は、MHCクラスⅠ分子のものより遥かに小さい」
大林「へ~」
本「MAIT細胞はリボフラビンを産生する細菌や真菌を検知して応答する」
大林「ウイルス感染には?」
本「応答しない」
大林「ふむ」

本「MAIT細胞もNKT細胞と同じく胸腺で発生する」
大林「なんですって?!連載中の物語『Being』に新キャラ登場できるじゃん」
本「胸腺から出たナイーブMAIT細胞は血中に入って粘膜組織や肝臓に移行してそこに局在する」
大林「組織定住タイプなのか」
本「そこで、マイクロビオータに曝露され活性化して増殖、分化する。血中T細胞の1~10%、肝臓のリンパ球の20~40%」
大林「マイクロビオータって細菌叢(さいきんそう)のことだっけ?微生物の集まりみたいな」

Web「微生物たち(Microbial Multitudes)とは、別名、マイクロビオータ(microbiota)あるいは専門用語 では細菌の集まり、叢(訓読みで「くさむら」音読みでソウ)つまり「細菌叢」と もいい、いわば極小の世界のコミュニティのことをさします。」

本「MR1分子は、多様性に富んだMHCクラスⅠ分子やMHCクラスⅠ様分子とは異なり、胎盤をもつ哺乳類に共通の部分が多く保存されている」
大林「つまり、種ごとにあまり変わりないってことかな?」
本「ヒトマウスのMR1のアミノ配列は90%同じ
大林「おぉ」
本「他方、ウイルスは絶えず変化していて、ウイルスの抗原ペプチドを載せて提示するMHCクラスⅠ分子には選択圧がかかっている」
大林「MHCクラスⅠ分子変化を求められているわけですな。MR1はその逆の存在ってことかな」

§ 再び話はNKT細胞へ戻る

本「NKT細胞の表面にあるCD1分子と、MHCクラスⅠ分子は、対照的であり補完的でもある」
大林「えぇと、ちょっと復習かねて。例えば細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)はMHCクラスⅠ分子を認識する、他方、NKT細胞CD1分子を認識する。そして、MHCクラスⅠ分子αβ型T細胞受容体に提示して特化して多様性をもつ方向に進んでいる」
本「他方、CD1分子はペプチドよりは多様性に乏しいが、大きさなどが不均一な脂質抗原の提示特化した」
大林「なるほどねぇ……補いあってる。共進化だ」
本「NKT細胞に抗原提示するCD1d分子は多くの組織にある。NKT細胞はNK細胞のように自然免疫受容体をもち、感染の初期応答で活躍する」
大林「活躍……うふふ♪」

今回はここまで!次回は、この章のまとめ!

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