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1日20分の免疫学(9)抗体⑤

IgEについて

本「IgEは即時型アレルギーの原因となる。組織のマスト細胞や血中の好塩基球に Fc部で結合する」
大林「マスト細胞と好塩基球がIgEのFc部に対するレセプターをもってるからだね」
本「IgG抗体だと、抗原に Fab部で結合してから初めて好中球などのFcレセブターに強く結合できるようになるが、IgEは抗原と結合していなくともFcレセプターと強固に結合する」
大林「ははぁ、だからマスト細胞上にはがっつりIgEがスタンバイしてるのか」
本「そう、未反応のIgEが結合している。そこに抗原が反応すると…」
大林「言わずもがな!刺激が細胞内に伝達されて、ロイコトリエンとかが放出されるんだよね」
本「正確にはロイコトリエン、血小板活性化因子といった化学物質が産生され、既存のヒスタミン等と共に放出される。このような反応は、抗原が体に入ってきてから数分ないし数十分で発生するので即時型アレルギーと呼ばれている」
大林「ヒスタミンは元からストックしてるけどロイコトリエンとかは活性化してから作るってことか」
本「成人の血清中IgEの量は、IgGの量が1,100mg/dlで、IgAが250mg/dl、IgM100mg/(値)に対して、数百mg/d/」
大林「花粉症とかですごい効果発揮してるのに実は少ないんだよね」
本「そう。ごく微量にしか存在しないからこそ、IgE値の測定でアレルギー等の疾患の存在を予測するのに応用されている」
大林「なるほど」

IgDについて

本「血清中に1mgd/程度しか存在せず,その機能はいまだ不明である」
大林「この本でも不詳扱いか…」
本「B細胞表面に存在するIgDは、B細胞が抗原と反応して抗体産生細胞に分化する際に重要な役割を果たしているらしい。7章で詳しく話すよ」
大林「ほぉ」
本「IgDは好塩基球に結合し、抗原と反応すると抗菌ペプチドの産生やB細胞の抗体産生を導くサイトカインをつくらせるよ」
大林「IgDもなんらかのお仕事をしてるわけだな」

本「IgDのヒンジ部は長く、Fab部が動きやすい.ので、エピトープ密度が低い抗原にも反応しやすい」
大林「……もしかして2か所ともエピトープに結合しないとダメだったりする?架橋すると云々ってエッセンシャル免疫学やJanewaysに書いてあったけど、その辺がいまいちわかってないんだよね…」
本は答えない!まだこちらの知識が足りなくて読み取れない文字があるようだ!

血清免疫グロブリン値と疾患について

本「免疫グロブリン値は疾患によって変動する」
大林「感染症だとまずIgMが増えて、次にIgGが増えるんだよね」
本「感染症や膠原病などの免疫系が活発に働く疾患だと、IgG中心に増えるね。IgM・IgAも増加するよ」
大林「膠原病かぁ……自己免疫疾患だね」

本「γグロブリンの増加膠原病の診断基準のひとつ。肝炎・肝硬変でも増えるけど」
大林「ほぉ」
本「IgE増加はアトピー性疾患に特徴的。IgG4が増加する疾患もある」
大林「IgG4って昔よく聞いた!当時はIgGのサブクラスとは気づかなくてなんの略だろうと思ってたよ」
本「IgG4関連疾患では血中のIgG4が増加して(135mg/d/以上)、病変部に形質細胞CTLの浸潤がある。閉塞性静脈炎、唾液腺・涙腺の腫脹、自己免疫性膵炎、その他多くの臓器(胆管・肝・消化管・腎・動脈・肺など)に病変を認める」
大林「IgG4が増えるとそんなことに……?!病変部に形質細胞(抗体をつくるB細胞)がいるのはわかるけど、なんで推し(細胞傷害性T細胞)が…誰かに呼ばれたのかな…」

本「治療には、副腎皮質ステロイドとB細胞を傷害する抗CD20抗体が用いられる」
大林「へぇ、抗CD20抗体ってB細胞を傷害するんだ」
WEB「抗CD20抗体血小板を攻撃する抗体を減らす治療薬です」
大林「お、おぉ」

本「CD4T細胞がTGF-βをつくり、組織が線維化する。また、CD4T細胞による細胞傷害やIL-4産生TFH細胞によるB細胞のIgG4へのクラススイッチ誘導もあると考えられている」
※TGF-β:細胞増殖・分化を制御し、細胞死を促すことが知られているサイトカイン(細胞の働きを調節する分泌性蛋白の一種)

大林「また出たよ、CD4T細胞による細胞傷害。細胞傷害と言えばCD8T細胞がメインだけどCD4T細胞も傷害するってときどき書いてるよね……詳細気になるわ~。で、IgG4関連疾患の原因は何なの?」
本「不明」
大林「オゥ…」

本「先天的な抗体産生系の欠陥などで抗体値が低下する疾患もある」
大林「免疫不全症とか?」
本「そうだね。多いのは低γグロブリン血症すべての免疫グロブリンが減少する重症複合免疫不全症もある。IgM増加を伴う免疫不全症(高IgM症候群)やIgA単独欠損症、IgMのみが低下するWiskott-Aldrich症候群もある」
大林「ほぉ、免疫グロブリンの種類の数だけ不具合の種類もあるねぇ」

本「他の疾患に付随して免疫グロブリンが低下するものもあるよ。尿中や内に喪失したり、免疫抑制脂質の出現による産生不全が起きたり。免疫抑制薬の長期使用でも低下する」
大林「尿に流れちゃうの?!あ、でも元からIgAは尿中にいるけど、それ以上に流れ出てしまうってことかな」

抗原と抗体との特異的結合について

本「抗体と結合する抗原分子の部分をエピトープといい、エピトープと結合する抗体分子の部分をパラトープ paratopeという」
大林「おぉ!エピトープの対義語というか抗体側にも名称あったんだ!」
本「エピトープとパラトープとの結合は極めて厳密な特異的結合
大林「鍵と鍵穴に例えられるよね」
本「実際は凸と凹というよりは面と面との結合に近いけどね」
大林「そうなんだ!」

本「エピトープとの結合の際、抗体分子の立体構造に多少の変化が起きて、よりよい結合ができることもある(誘導適合)」
大林「おぉ、いい感じにカスタマイズされることもあるのか」

本「アミノ酸には互いに近づこうとするものと遠ざかろうとするものがある」
大林「へぇ、磁石のNとS、水と脂みたいなのがあるのか」
本「アミノ酸配列が定まると、その性質で立体構造がおのずと定まる」
大林「折り畳みってそういう仕組みだったのか!うまくできてるねぇ」

本「同一のアミノ酸配列のペプチドであっても、パラトープを形成する立体構造は異った形をとりうる。すなわち異ったエピトープ結合できる可能性がある。抗原結合部の別の部位それぞれ異ったエピトープが結合することも起きうるし、類似の異ったエピトープが結合することもある。免疫原とは異った別の抗原に抗体が反応することを交差反応という」
大林「交差反応の説明、今まで読んできた中で一番詳細……!ちょっと納得いった!」

FcRnについて

大林「詳しく知りたかったやつだ。IgGの根本つかむレセプターだよね!好中球やマクロファージがもってるやつ!食作用促進!」
本「胎盤の合胞体栄養膜細胞、血管内皮細胞、樹状細胞、単球、B細胞、小腸・気道・腎の上皮細胞もIgGのFc部を捕えるFcレセプター(FcRn)をもつ」
大林「食細胞以外にももってたのか……FcRnって何の略?」
本「Fc receptor neonatalの略。FcRp(Fc protection receptor)ともいう」
※neonatal:新生児
大林「新生児?保護?なんでそんな名前?」
本「IgG を酸性のpHで結合して、アルカリ性のpHで遊離する。FcRn に結合したIgGはエンドサイトーシスで細胞内に取り込まれ、酸性のエンドソーム内では強く結合する。胎盤はこの仕組みで栄養膜細胞を介してIgGを母体血から胎児側へ移行させる」
大林「あぁ~それで新生児か」

本「血管内皮細胞はFcRnで血液中のIgGを捕えて取り込み、再び血中に遊離する」
大林「IgGを一旦取り込んでまた出すの?なんで?」
本「IgGを細胞内に蓄えて異化されるのを防ぎ、血中半減期延すことに役立っている。だからFc protection receptorという」
異化:外界から取り込んだ物質(食物)を分解し,より簡単な化合物に変えるとともにエネルギーを取り出す過程

大林「protectionってそういうことか!」

本「ちなみに、FcRnの各IgGサブクラスとの親和性はIgG1>IgG2>IgG3>IgG 4」
大林「ちょうどナンバリング順だね、もしかして親和性で命名したとか?」
本は答えない!

本「次のページに、抗体についてのポイントをまとめたから読んでね」
大林「おぉ……いい感じにまとめてる。大体学習済の内容だからここ(公開型自主勉)には載せないけど」
本「君が知りたがっていたインフルエンザウイルス赤血球の凝集についても書いてるよ」
大林「おぉ!」
本「インフルエンザなどのウイルスは赤血球に吸着して赤血球同士を凝集させる物質(赤血球凝集素)をもっている。これらのウイルスに対する抗体を作用させると、そのウイルスは赤血球を凝集する能力を失う
大林「そうなんだ、インフルエンザウイルスは赤血球を凝集させて何か生存上のメリットがあるのだろうか……どちらにせよ赤血球を凝集されると人体的には不都合だから、抗体でそれを防ぐのは重要だね」
WEB「赤血球凝集素は細胞を標的として攻撃する致死的な分子機械である」
大林「なんと!」
https://numon.pdbj.org/mom/76?l=ja
WEB「(略)ウイルスが細胞に固定され(略)ウイルスのRNAは細胞内に入り込んで、感染の過程が開始される」
大林「つまり細胞内に入り込むのに有利ってことか、納得」

サイトでは細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています↓
なんだか最近、帰宅するとすっごい疲れて動けないんだけどなんでや…



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