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1日15分の免疫学(11)自然免疫④

第3章 自然免疫の誘導性応答

本「第3章では、貪食細胞の病原体認識破壊炎症反応の誘導制御の紹介と、自然リンパ球の紹介をする」
大林「自然リンパ球たのしみ!ナチュラルキラー細胞と、旧称ナチュラルヘルパー細胞たちだね!」
※発見当初、自然リンパ球は「ナチュラルヘルパー細胞」と呼ばれていた。今は「自然リンパ球」という名称が使用されている。

本「自然免疫の異物認識は、当初、病原体関連分子パターン(PAMP)に限られていると考えられていた」
◆復習メモ
PAMP(病原体関連分子パターンpathogen-associatedmolecular pattern):多くの微生物にある分子構造の規則的なパターンである。ヒト細胞にはない。
PRR(パターン認識レセプターpattern recognition receptor):多型性のない(≒多様性の低い)自然認識レセプター。単純な分子やPAMPを認識する。

大林「パターン認識レセプター(PRR)がPAMPを認識するんだよね」
本「PAMPの他に、細胞の感染・傷害・ストレス・がん化等の変化を示唆する分子(傷害関連分子パターンdamage-associated molecular pattern:DAMP)があり、これらはTLRなどによって認識される」
大林「おわぁ、また覚えにくい略記が追加されたな?」

◆復習メモ
TLR(トル様レセプターToll like receptor)
色々種類があって、ある種の細菌の細胞壁成分を認識するTLRや、ウイルスや真菌の成分を認識するTLRもある。
※免疫学で『様』と書いてるのは基本的に『よう』読み
※Tollはドイツ語で「すごい」。ハエで研究してて見つけた遺伝子に「すごい!」と叫んで喜び、Toll遺伝子と名付けられ、それに「似た(like)」遺伝子によって作られるタンパク質がTLRとのこと。

貪食細胞は4分類される

本「多くの微生物は組織内に侵入後、貪食細胞によって認識され、貪食される。自然免疫の主要な貪食細胞は、マクロファージ、単球、顆粒球、樹状細胞
大林「貪食細胞と言えば、大食細胞(マクロファージ)、小食細胞(ミクロファージ;好中球)……と思ってたけど、広く捉えたらその4種類になるね」

マクロファージと単球について

本「マクロファージは、胎児発生の際に組織に動員された前駆細胞から分化しそこで増殖し続ける」
大林「胎児の段階で組織定住マクロファージは配備されてるわけかぁ。肝臓のマクロファージは代々肝臓にいるってわけだ。たしか、どの組織にいるかで名前変わるんだよね」
本「神経系組織ではミクログリア、肝臓ではクッパー細胞

大林「血管を循環する単球も分化して組織定住マクロファージになるよね」
本「感染炎症時は、全身循環の単球も組織に侵入してマクロファージに分化する。ちなみにこの循環単球は二つに分類される。90%は先ほど言ったように感染時に組織に侵入してマクロファージに分化する"古典的"単球"classical" monocyteで、PRRの補助レセプターCD14をもつ」

大林「残りの10%は?」
本「血流で自由に循環するのではなく血管内皮を転がる"巡回"単球"patroling"monocyteと呼ばれる。CD14とCD16(Fcレセプター)をもち、組織マクロファージに分化することはなく、血管内皮の損傷を巡視している」
大林「パトロールか、かわいいな。そういう単球もいるのか。損傷見つけたらどうするんだろ、血小板みたいに周囲の細胞に修復を促進させる物質を分泌するのかな」

顆粒球について

本「マクロファージの次に多いのは顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)。この中で好中球最も貪食能が高い
大林「顆粒球三種類を貪食細胞として紹介するのか……後二者はそんなに貪食せず、分泌がメインの戦い方だって習ったけど」


本「好中球は核が分葉していて多核系白血球polymorphonuclear:PMNとも呼ばれる。健常組織には存在せず血液中に存在する短命の細胞
大林「おっ、なんかかっこいい説明きた!好中球は、感染時にマクロファージが分泌するケモカインに誘導されて、血管から感染組織に侵入するんだよね。ある程度は酸素のない場所でも耐えられる強い子。でも短命、ある程度貪食して、顆粒を使い切ってしまったら死んでしまう。自分の中身をぶちまける自爆攻撃もする……すごい歩兵」

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本「貪食細胞は無脊椎動物にもある」
大林「へー、適応免疫は脊椎動物だけだよね、今のところ。でも最近何か新しい研究報告があったような……」

樹状細胞について

本「最後に紹介するのは、リンパ組織や末梢組織にいる未熟樹状細胞
大林「未熟がつくのか」
本「樹状細胞は、古典的樹状細胞conventional(or classical) dendritic cell:cDC形質細胞様樹状細胞plasmacytoid dendritic cell:pDCがある」
大林「ヒェ……樹状細胞にも種類があるのか、深いな。生まれ育ちが違うの?」
本「それは同じ。骨髄で、骨髄球系の前駆細胞から生まれ、血液経由で全身の組織やリンパ組織に移動する。異なるのは機能」

大林「えぇと、今までの本で学習した樹状細胞のメインの役割は、ナイーブT細胞への抗原提示と、ナイーブT細胞の活性化だよね。抗原提示細胞(マクロファージ、樹状細胞、B細胞)三種類の中で抗原提示能が飛びぬけて高い……なぜなら、放射線状に突起を伸ばした形状で、抗原提示に有利だから」
本「cDCの主要な機能はそれです。適応免疫系の誘導であり、自然免疫と適応免疫の橋渡し」
大林「へぇ、じゃあ今まで学習してきたのはcDCのことだったのか。ではpDCの機能は?」
本「Ⅰ型インターフェロン(抗ウイルス性インターフェロン)をつくる主要な細胞で、自然免疫系の一翼を担う」
大林「な、なんだってーーー?!樹状細胞といえば抗原提示と活性化だと認識してきたのに、自然免疫の一翼を担う??!それもっと詳しく!」
本「あとでね」

◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
>①ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。

>②インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)

>③インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。

>④腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

I型インターフェロン(type I interferon):インターフェロンファミリーのうち、インターフェロンα(IFN-α)とインターフェロンβ(IFN-β)などを含めた総称
ウイルス感染で誘導される抗ウイルス系のサイトカイン
免疫系の細胞(Th1細胞、NK細胞など)によって分泌されマクロファージを活性化するII型インターフェロン(IFN-γ)などと区別するための呼称。

貪食について

本「ほとんどの微生物は皮膚や粘膜組織から侵入する。さぁ、免疫細胞はどう動く?」
大林「まず組織にいるマクロファージが対応して、好中球を呼ぶ。マクロファージと好中球は、微生物を貪食!」
本「マクロファージと好中球は微生物とヒトの細胞表面の分子を識別するレセプターをもち、貪食するが、マクロファージと好中球は異なる機能をもつ」
大林「好中球はもっぱら貪食でしょ、そして早く死ぬ。マクロファージは他の細胞を呼んだり活性化したり抗原提示したりと色々だよね、自然免疫の指揮官!」

本「ファゴサイトーシスの過程をきちんと言えるかな?」
大林「自信ない!」
本「ファゴサイトーシスは、貪食レセプター微生物表面結合し、微生物が貪食細胞の細胞膜に覆われファゴソームphagosomeという小胞の膜内にとりこまれる」
大林「あ!それは知ってる!ファゴソームは細胞内でライソソームlysosomeと合体するんだよね!」
本「そうしてファゴライソソームphagolysosoneが形成される」
大林「その名前は知らなかった…」
本「次に、ライソソームの中身が放出されてファゴライソソーム内は酸性となる。抗菌ペプチドも獲得し、酸素反応も進んで微生物が殺菌される」
大林「細胞内でバイバイキン…」

本「好中球は細胞内での殺菌に特化した細胞です」
大林「擬人化漫画だと周りを血みどろにして戦う描写あるよね……本当は細胞内部で始末してる……けど、好中球は中身をぶちまけて自爆する(ネトーシス)するし、周囲にも被害が生じるし、実際血みどろ」

本「微生物などの外来因子を細胞内に取り込んで分解するもう1つの経路がある」
大林「ファゴサイトーシスではないということ?」
本「レセプター依存性エンドサイトーシスreceptor-mediated endocytosis。すべての細胞がこの機能をもつ」
大林「きた!エンドサイトーシス!えぇと、もしかしてウイルスが侵入するのもそのレセプター依存性エンドサイトーシス?例の新型ウイルスも、表面にあるスパイクタンパク質で、一部のヒト細胞の表面にあるACE2レセプターに結合して、細胞内に入り込むんだよね……」

本は答えない!

本「樹状細胞などには、マクロピノサイトーシスmacropinocytosisという非特異的な微生物取り込み機能もある。これは大量の細胞外液や物質を取り込む」
大林「はぁ……『エッセンシャル免疫学』より濃いなぁ」

今回はここまで!

細胞や法律の擬人化漫画等を描いています!↓


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