1日20分の免疫学(17)リンパ球⑤
NK細胞の標的について(つづき)
本「だから標的細胞Aを、あるNK細胞は傷害できるが他のNK細胞はできないということがおきる」
大林「複数のNKがいて補い合えるわけだ」
本「TCRとCD3をもつT細胞と表面免疫グロブリンを持つB細胞以外で細胞傷害作用を示すものがNK細胞と定義される」
大林「たしかCTLとNKの見分けは、T細胞だけがもつ表面分子が無いのがNKって感じだったよね」
本「NK細胞のほとんどは、表面にCD56分子とCD16分子、CD2分子を持つ」
大林「ふむふむ、NK細胞はCD56、16、2だな……メモメモ」
本「CD16を表出していないものもある」
大林「ややこしいな!」
本「CD16分子はFcγレセプターで、これを持つものはK細胞としての作用も示す」
大林「Fcγレセプターということは、IgG抗体のFc部分をつかむレセプターってことだな。IgGといえば食作用の促進(オプソニン)が有名だけど。結局、NK細胞とK細胞とは同じ細胞ってこと?」
本「作用様式の違いで区別されている」
大林「抗体を使うからナチュラルではないってことか」
本「NK細胞の多くは大型で腎形の核を持ち、原形質顆粒に富むという形態学的特徴を持っていて、LGL(large granular lymphocyte)と呼ばれる」
大林「腎形……ソラマメみたいな形ってことかな。顆粒は補充できるの?好中球は補充できないから使い切ったら終りだよね、NK細胞はどうなのさ?エッセンシャル免疫学でNK細胞は強いからこそ一度の攻撃ですべての毒素を放出するという制限がある的な表現で、一発屋みたいだったよ?」
本は答えない!!!
本「NK細胞の細胞傷害作用はキラーT細胞の場合と同様である」
大林「標的細胞に結合してパーフォリンで細胞膜に孔をあけてグランザイム入れて核を破壊するんだよね」
本「ほかにもある。細胞表面にあるFasという分子にFasリガンドが結合するとアポトーシスが誘導される」
大林「つまりNK細胞はFasリガンド分子を表出しているということだな」
本「TRAILを表出してDR(death receptor)を持つ腫瘍細胞などにアポトーシス誘導することもある」
大林「デスレセプター?!ごっつい名前だな!」
https://www.cellsignal.jp/pathways/death-receptor-signaling
本「NK 細胞は NKCF(NK cytotoxic factor)という傷害物質を出して膜に孔を開けて傷害することもできる」
大林「なんと!ほかにも攻撃方法があったのか!」
本「TNF-αやTNF-βにも細胞傷害作用がある。1個のNK細胞は次々と何個かの標的細胞を傷害できる」
大林「エッセンシャル免疫学と話が違くない??!」
本「NK細胞はそのままでは細胞傷害活性が弱い」
大林「意外。がっつり戦うにはマクロファージやTh1細胞のサイトカインが必須なの?」
本「マクロファージと樹状細胞からのIFN-α、β、γ、IL-12,15,18、T細胞からのIL-2,21,IFN-γなどによって活性化される」
大林「おぉ」
本「そしてIL-10、TGF-βで抑制される」
大林「NK細胞もサイトカインで抑制されるのか」
本「NK細胞の生存維持にはIL-15が必要」
大林「へぇ〜誰が放出してるんだ?」
大林「単球と樹状細胞か」
本「そして低濃度のIL-2で増殖する」
大林「ん?低濃度のIL-2って何かなかった?」
本「活性化するとIFN-γをよく産生して、Th1細胞やマクロファージ・樹状細胞の活性化にかかわる」
大林「活性化ループですね!」
本「それにより、マクロファージは殺作用が高まり、樹状細胞は抗原提示能とIL-12産生が増強される。TNF-αとGM-CSFも産生してマクロファージと樹状細胞の機能を機能を高める」
大林「NK細胞は、マクロファージと樹状細胞の機能も高めるわけだ。そしてCTLの準備が整うまで頑張ってくれる」
本「それだけでなく、未熟な造血細胞を傷害する作用もあり、白血球系の発生を調節している可能性がある」
大林「えっ…つまりできそこないの造血細胞を始末してるってこと……?ガチの掃除屋だった」
本「同種骨髄細胞移植の拒絶反応にもかかわっている」
大林「あぁ、この前も言ってたね」
本「18章で詳しくやるよ」
大林「たのしみ!今は…まだ5章だ、遠いな」
本「子宮内のNK細胞は胎盤の形成、妊娠の維持に関与している」
大林「それ初めて知ったとき驚いたよ。まさか子宮でも活躍してるなんて。殺し屋って感じじゃないお仕事してるから」
本「活性化NK細胞の寿命は2週ほど」
大林「それが知りたかったんですよ!!!!ちなみに休止期NKの寿命は?」
本「マウスでは6ヶ月ほど。IL-15,18の作用や阻止レセプターへの刺激で維持される」
大林「あ、思ったより短命」
本「T細胞とNK細胞は共通の前駆細胞から分化してくるようで、発生分化上近い関係にある。NK細胞は血中、脾、肝類洞、腸管上皮内などに多く分布し、骨髄・リンパ節には少ない。NK細胞の分布にはIL-15が必須」
大林「IL-15大事ですねぇ」
NKT細胞について
本「T細胞レセプターとNKレセプターの両方を持つリンパ球がNKT細胞」
大林「キター!最推し!!!詳しく教えて下さい!」
本「古典的なNKT細胞は、TCRがαβ型で1種類限定」
大林「シンプルなんだよね」
本「樹状細胞が産生するIL-12 はNKT細胞の活性化を支持する」
大林「活性化を支持するのであってスターターではないってことか」
本「NKT細胞はIFN-γ、 IL-21を産生する場合とIL-4,IL-10,IL-13を産生する場合とある」
大林「ん?細胞の個体差ではなく、同一細胞が状況によって産生するサイトカインをわけてるって意味?」
本は答えない!
本「NKT1細胞は、IFN-γでマクロファージ・T細胞・NK細胞を活性化して感染防御や抗腫瘍作用に関与したり、樹状細胞を成熟させる」
大林「え…待っ……NKT細胞にも1,2,17的なのあるの?!!!」
本「NKT2細胞は、B細胞の抗原提示に反応して、IL-4産生とCD40リガンド表出をして抗体産生を補助するものをと呼ぶ」
大林「うわぁ…」
本「また、NKT細胞は、IFN-γ、IL-21を作るかIL-4,10,13をつくるかで免疫応答の調節(自己免疫抑制、IgEアレルギーに対するIFN-γ、IL-21による抑制やIL-4、13による誘導)をしたりする」
大林「そうか、すべてのT細胞の機能をもつというのはNKT細胞全体の話……」
本「IL-17を産生するものはNKT3細胞またはNKT17細胞とよぶ」
大林「さっきの抑制するNKTの名前はないの?…どのNKTも抑制機能をもってるってことなの?」
本「IL-10を産生すると、樹状細胞にIL-10を産生させ細胞性免疫を抑え、同時にその樹状細胞の抗原提示に反応するT細胞をIL-10を作るTr1細胞に分化させるのはNKT10細胞」
大林「えぇ…待って、思ってたより更に多才……」
本「IL-21を産生し胚中心でB細胞の抗体産生を補助するのはNKTfh細胞」
大林「本当にすべてのT細胞の機能をもってるんだね……NKT細胞は」
本「そして、NKT細胞は細胞傷害活性を示し抗腫瘍作用を営む」
大林「初めてがっつり最推しの情報を得た……」
本「どのようなNKT細胞がどのようなときどのような機能を示すかはAdvanced knowledgeに書いてるよ」
大林「読む読む!」
古典的NKT細胞と非古典的NKT細胞、NKT様細胞
本「TCRに多様性があり、CD1dと抗原との組合せに応答する非古典的NKT細胞や、CD1d拘束性でないNKT様細胞もある。古典的NKTをiNKT細胞またはⅠ型NKT細胞、その他をⅡ型NKT細胞と呼ぶ」
大林「ようやく出たよiNKT細胞という名前が…そうか、古典的NKT細胞をiNKT細胞と呼ぶのか。NKT細胞として重要なポイントはCD1d拘束性ってことか」
MAITについて
本「他のTCRを表出しているNKT細胞(mucosal associated invariant cell. MAIT)もある」
大林「えっ?!MAITってNKT細胞だったの?!」
本「MAITは樹状細胞の非古典的MHCクララスIb(MR1分子)に結合した細菌・真菌由来の物質に反応し、IL-4,5,10,17, TNF-α、IFN-γなどを産生し細菌防御にかかわるが、B細胞の抗原提示に反応してIL-10産生と共にB細胞からも L-10を大量に産生させて免疫反応を抑制する」
大林「えぇ……ちょっと情報量が多すぎる…」
本「αβ型TCRをもちCD1bによって提示される結核菌に反応するGEM-T細胞も存在する」
大林「それもNKTなのか……NKTのないマウスが免疫不全で死ぬはずだよ……」
本「γδのTCRをもちNK1.1を表出している γδNKT 細胞もある」
大林「NK1.1てなんでしたっけ」
WEB「NK細胞の抗原レセプターと考えられるNKR-P1分子の一つ」
本「これらのNKT細胞は自然免疫にかかわるのでinnate T細胞としてまとめられる」
大林「なんか……NKT細胞のことをレアチートキャラと思ってたけど、いろんな場所でいろんな役割を果たす正体不明キャラになった感」
本「B細胞系でNKレセプターをもつリンパ球もいる」
大林「分類わけわからなくなってきた」
今回はここまで!夏コミが無事終わったので、人体の物語「Being」最新話の作成再開しました…!
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