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1日15分の免疫学(107)アレルギー疾患12

セリアック病について

本「セリアック病は、小麦粉・オーツ麦・大麦にあるタンパク質複合体であるグルテン免疫応答が起こる小腸上部慢性疾患。グルテンを除去すれば正常な状態に戻る」
大林「少しずつ摂取して治せないの?」
本「今のところグルテンに対する減感作法は開発されていない」
大林「減感作法も万能じゃないのか。発症したら一生グルテンを避けなければならない……」

本「セリアック病は小腸上皮によって形成される細長い指状の絨毛損失が特徴」
大林「あの小腸のビロビロしたのがなくなるのか」
本「このことで絨毛を覆い、食物を消化吸収する成熟上皮細胞消失し、粘膜固有層のT細胞、マクロファージ、形質細胞増加上皮リンパ球増加を含む小腸壁重度の炎症を併発する」
※腸管上皮細胞間リンパ球(IELs:intraepithelial lymphocytes)

大林「どうしてそんなことに」
本「セリアック病の有病率は60年間で4倍に増加した」
大林「なんで?!」
本「発酵時間短縮と食感の向上のために多量のグルテンパン生地に添加するようになったことが関係している」
大林「なんてこった……人類がよかれとした改善が新たな病を生んだのか」

大林「そういえば、セリアック病って遺伝するよね」
本「遺伝的素因きわめて強く、患者の95%以上が HLA-DQ 2を発現している」
大林「ほう、ではその発現の有無が目安に…」
本「いや、発現していてもほとんどは発症しない」
大林「なんでや」
本「他にも要因があると考えられる」
大林「ほーん」

本「セリアック病では、グルテンの主要蛋白質の一つα-グリアジン由来の抗原ペプチドに反応してIFN-γを産生する特異的CD4T細胞異常なプライミングが必須と考えられている」
大林「プライミングとは?」
WEB「priming(プライミング). 生体,特に免疫系を賦活するための予備刺激のことであり,準備刺激や初回刺激と訳される.」

本の図「グルテン特異的CD4T細胞が活性化して、活性化T細胞はFasと結合して粘膜上皮細胞を死滅させることができる」
大林「出た!Fas!細胞の自殺スイッチ~!」


本「グルテンペプチドは、粘膜上皮細胞を活性化し、MIC分子を発現させ、上皮内リンパ球(IEL)NKG2Dを発現してMIC分子と結合し、IELは活性化して上皮細胞を死滅させる」
◆復習メモ
MⅠC糖タンパク質(MHC class chain-related glycoprotein):感染腫瘍化高温などのストレスにさらされたときに細胞内で作られるストレスタンパク質の一種

NKG:Natural Killer cell receptor Groupの略。
重要なNK細胞受容体としてCD94:NKG2A(抑制性NK細胞受容体)とNKG2D(活性化NK細胞受容体)がある。

大林「グルテンに特異的なT細胞はFasやMICに結合して細胞傷害してるってこと?」
本「食物蛋白質に対する慢性T 細胞応答は、通常、経口免疫関与の発達によって阻止される」
大林「だよね、必要な食べ物なのになんで炎症起きるの?」
本「セリアック病で免疫寛容が破綻する理由は解明されていない」
大林「オゥ…」
本「グルテン蛋白質は比較的消化に抵抗性をもつ。グリアジン由来の抗原ペプチドの一部が、小腸上皮細胞によるIL-15放出を誘発して自然免疫系を刺激しているらしい。粘膜固有層の樹状細胞の活性化も引き起こす」
大林「えぇと……つまり、グルテンは自然免疫と適応免疫の両方を刺激するということか」

第14章 まとめ

・感受性を持つ個体は、無害な抗原免疫応答した後に再曝露した際にアレルギー反応を起こす。
・アレルギー反応の多くは、身近な環境アレルゲンに対するIgEが関与している。
・多くのアレルゲンに内在的にIgEを産生しやすい人はアトピーと呼ばれる。
・IgEは抗原特異的Th2細胞により誘導される。
・抗原侵入部位の粘膜下組織にいるILC2のシグナルなどにより、Th2細胞優位となる。※自然リンパ球(innate lymphoid cell: ILC)は、リンパ球類似の形態をもち、Tリンパ球と同様のサイトカインを産生する、抗原受容体をもたない細胞。
・応答の制御の失敗はTreg細胞の障害を含むさまざまな要因により起こる。
・アレルギー反応の抑制や、耐性能再構築などの有効な治療法が開発されつつある。

大林「はぁ…なんかわかりにくい章だった。知識が増えた感じがしなかったぞ」
本「次の第15章は、自己免疫と移植」
大林「おっ!我が推しT細胞がメインかな?!たのしみ!」

きりがいいので今回はここまで!
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