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1日5分の免疫学⑩続・ウイルスとの攻防

本「ウイルスに感染した細胞もIFN-βをつくって応戦する……が、感染してるから……」
大林「自身の死は近い
別の本「感染細胞は、最後の抵抗として自分の中で増殖し続けるウイルスの一部をペプチドまで分解して、MHCクラスⅠ分子に挟んで細胞膜の外に出す」
大林「映画だったら全米が泣く抗原提示……!」
本「Tc細胞に対して、敵はこいつです!そして自分を殺して下さいって言うわけや」
大林「擬人化表現で言われると重い!!!

別の本「MHCクラスⅠ分子は、ほとんど全ての有核細胞がもっている身分証であり、敵に襲われたときの抗原提示のツールでもある」
大林「なるほど、どの細胞にも感染リスクはあるもんな」
別の本「MHCクラス分子は、プロフェッショナル抗原提示細胞だけがもっていて※、これも身分証であり、抗原提示のツールでもある。抗原提示の相手はCD4陽性T細胞」※例外あり
大林「CD4陽性T細胞には、MHCクラス分子がないと抗原提示できない…MHCクラスⅡ分子を持つのは、マクロファージ・樹状細胞・B細胞!彼らはプロフェッショナル抗原提示細胞と呼ばれるってわけか、かっこいい!」

本「尚、感染した細胞が命懸けで抗原提示しても、それだけではTc細胞はあまり活躍できない」
大林「おぉ、我が推し活躍するには一体何が必要なのです?」
本「まず、マクロファージや樹状細胞が、そのウイルス(抗原)を取り込んでからリンパ節に行き、CD4陽性ナイーブT細胞に抗原提示して…」
大林「CD4陽性ナイーブT細胞は、Th1、Th2、Th17…あとTregに分化できる進路の選択肢多い細胞。そのときのサイトカイン環境によってどれになるか決まる」
本「ウイルス感染の場合、感染細胞やマクロファージ、NK細胞達が出すサイトカイン(IFN-γIL-12)環境的に、Th1に分化しやすい

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大林「そしてTh1は我が推しTc細胞活性化する、と。なるほど!」

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大林「全然覚えられないけど、なんかすごい…。敵感知したら、みんなで声かけ合って戦争に突き進んでいく感じ……こりゃ、ブレーキ(免疫抑制)をいくつも用意しておかないと一歩間違えたら大変なことになるわけだ。そして我が推しTc細胞はやっぱり素敵!!!」
本「水差すようで悪いけど、Tc細胞がなんぼ頑張っても、感染細胞を殺すだけでウイルスは倒せない
大林「感染細胞を殺すから、感染細胞の内部機能を利用してウイルスが増えるのは抑止してるもん!」
本「でもウイルス倒せてないやんけ」
大林「ぐぬぬ」
本「そこで登場するのが活性化マクロファージ!」

《復習メモ》
マクロファージ:異物や廃棄物を無差別に食べる貪食細胞。掃除屋(スカベンジャー)の異名を持ち、MHCクラス分子でCD4陽性Tに抗原提示するプロフェッショナル抗原提示細胞でもある。

MHC:主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex)
ヒトのMHCHLAと呼ぶ。MHCクラスⅠ分子は、ほとんどの有核細胞が持ち、クラスは限られた細胞にしか発現しない。

本「マクロファージは、NK細胞やTh1がつくるIFN-γとてつもなくパワーアップする」
大林「とてつもなくパワーアップ?!」
本「そして活性化マクロファージとなる!活性化マクロファージは、複数が合体してラングハンス型巨細胞にもなる!」
※2020/12/2誤記訂正「ランゲルハンス型巨細胞→「ラングハンス型巨細胞」
大林「キングスライムかよ」
本「活性化マクロファージはすごいぞ!貪食力強力な上に、食ったウイルスを不活化する」
大林「私の推しが霞むくらいのマクロファージ推しだな」
本「まぁ、その活性化マクロファージが活躍しすぎると肉芽腫になるんやけどな」
大林「必ずある残念ポイント」

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本「ちなみに。ウイルス戦のときは、CD4陽性ナイーブTの多くがTh1に分化するけど、ある程度はTh2に分化する」
大林「細胞の中で悪さをするウイルスに対抗するため、細胞ごと殺せる『細胞傷害』の能力を持つTc細胞を強化するTh1が多数派になるけど、Th2も少しは登場するのか」
本「ウイルス戦では少数派のTh2は、B細胞に抗体産生を促すサイトカインをつくる」
大林「このときB細胞がつくる抗体は『中和抗体』!ウイルスが細胞内で増殖して、細胞に飛び出たときにウイルスにくっついて、他の細胞の中に入り込むのを妨害する!あぁ~よくできてる仕組み!」


《今回のポイント》
ウイルスが体内に侵入すると、マクロファージやNK細胞たちはIFN-γ、IL-12を多くつくり出す。
この環境下でナイーブCD4T細胞は、Th1に分化しやすく、Th1は感染細胞を殺すTc細胞を活性化する。
少数派のTh2はB細胞を活性化して、ウイルス中和抗体を作らせる。
Th1やNK細胞がつくるIFN-γでマクロファージが活性化し、Tc細胞が殺した感染細胞から飛び出したウイルスも仕留める。

次回は、「補体」について勉強します。

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