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【声劇台本】ガチ恋それって美味しいの?

ボイコネに掲載していたものに加筆修正をしました。
やって頂けたら嬉しいです。
動画や音声作品として残す場合は
URLを教えていただければ聞きに行きます。

■登場人物   
佳菜子(かなこ)洋貴にガチ恋中の声フェチ女子。23歳。
洋貴(ひろき)人気配信者。20歳と公表しているが実際は36歳。
詩織(しおり)洋貴の彼女らしい?匂わせしがち。26歳。

+++++++++   

本編
<部屋でスマホを両手で大切そうに持ち配信を聞いている佳菜子>

洋貴:今日も来てくれてありがとう。
わっ、めっちゃすごいギフトアイテム!このお城に…一緒に住もっか、お姫様?

佳菜子:あああ~尊い、推しが今日も尊い!私も高額ギフト投げてみたいなあ…でも、今月洋服買っちゃったし、キツイなあ。

洋貴:あ、もうすぐ終了時間だから点呼取るね。挨拶よろしく!

佳菜子:はあ…今日も配信終わっちゃう。
…かわいい顔文字つきで、はーい…っと。
(暇つぶしに入れた配信アプリで、大好きな声に出会ってしまった。一目惚れならぬ、ひとぎき惚れ、っていうのかな。私はすぐにその人を推そうって決めて、毎日配信には欠かさず通ってるし、アイテムを投げた実績でファンランキングの上位を常にキープしてるん・・・だけど。)彼女がいるって噂だもんな~洋貴くん!はあ・・・羨ましいな。洋貴くん~すき~。

<少しの間>

<洋貴の部屋>
詩織:よくもまあ、あんなくっさいセリフ言えるね洋貴

洋貴:そりゃ俺は配信者だから。特別なのはお前だけだよ、詩織。

詩織:配信者って信じらんない。誰にでもそういう事言えるんだよね。

洋貴:わあ、ひでえ。一応誠実そう、とか優しそうな洋貴くんで通ってるんだけど俺。

詩織:はぁ、上辺だけに騙されてあんたのリスナーもばっかみたい。

洋貴:俺はこの配信しか居場所がないんだからいいだろ。

詩織:寂しい発言ですことー。

洋貴:ほっとけよ。俺はあそこで上り詰めてやるんだ。


<佳菜子が帰宅中の住宅街>
佳菜子:結構遅くなっちゃったなあ・・・残業きつい。洋貴くんのために稼がなきゃだし、配信前に帰れる時間なのはよかったけど。(…ん?あれ…なんだろ、ずっとあの人
後ろついてきてる?やだ…怖い、助けて)

洋貴:あ、洋子じゃん。今帰り?

佳菜子:えっ?あの、私…ようこじゃ…

洋貴:(被せるように耳元で)変なやつ着いてきてるでしょ、このままあわせて。

佳菜子:あっ…えっと、ひさしぶり!

洋貴:この後帰るだけ?それなら送ってくよ。

佳菜子:ありがとう、ございます。

<焦ったように去っていく不審者>

佳菜子:こわ…かった…

洋貴:大丈夫?最近この辺、危ないやつが徘徊してるらしいから、気をつけなね。

佳菜子:本当にありがとうございます!

洋貴:あいつも居なくなったっぽいし、俺はもう家につくからさ。帰り着くまで遠いなら、なるべく明るいところ通りな。じゃあね。

佳菜子:は、はい!(びっくりしたぁ。漫画みたいなことあるんだなあ…それにあの人、すごくいい声だった。普通のサラリーマンっぽかったけど背も高くて…役者さんとかだったりするのかな?)あ、いけない!配信はじまっちゃう!イヤホン…っと。はあ、よかった。間に合った~。「こんばんは、声ききたかった!」…ってチャットでしか話せないのもどかしいな。

洋貴:あ~!かなこちゃん、おかえり!今日もきてくれてありがとう!

佳菜子:この、おかえり!っていうのが最高に嬉しいんだよね~!

<鍵を開ける音、もしくはドアを開ける音>

佳菜子:ちょうど家にもただいま~っと。

洋貴:今日はね、ちょっとすごい事あったんだよ。なんと、王子様みたいに女の子を不審者から助けたんだ。

佳菜子:・・・えっ。すごいタイムリー。でも・・・違うよね。

洋貴:夜道でさ、すごい可愛い子が変な男につけられてたから知り合いっぽく声かけたんだよね。かっこいい?ありがとうw え、そのままナンパ?するわけないじゃん。俺、紳士だからさ。ずるい~私も助けられたい~って?助けるよもちろん、俺の事好きな子助けないなんて男がすたるだろ?

佳菜子:うそ・・・え、でも。あの人はすごく大人の人っぽかったし洋貴くんは二十歳だから、ないない。ありえない。でも、同じようなタイミングでそんな体験してたんだって思ったら…やばい、ドキドキしてきた。もう、給料日前のなけなしのお金で課金しちゃお。バレンタインが近いからイベント中なんだよね。本命チョコアイテム、贈る。…っと。

洋貴:わ、ありがとう~!今イベント上位狙ってるからすごい嬉しい。くれたチョコ、一緒に食べてくれる?ありがとね!

佳菜子:洋貴くんのギフコメ最高に好き…あ~もう、大好き。

洋貴:え、ちょ…まじで?うわあありがとう~!イベント頑張ってねって、最高額のアイテムじゃん…しおりちゃん、この宇宙船に乗って二人きりの星に行こうね、愛してる。

佳菜子:はあああああ?このタイミングで投げる事なくない?このしおりって人毎月ファンランキング1位でモデレーターもしてるし、最近彼女だって、噂されてる人。もうやだ・・・億万長者になりたい。愛してる・・・かあ。洋貴くんの愛してるって、どれだけ沢山あるのかな。

<配信後、洋貴の部屋>
洋貴:詩織お前性格悪いな。

詩織:え?なに、貢がれて嬉しくないわけ?

洋貴:いや、ありがたいけど。それにしたって…。

詩織:ああやっとけば、私に対抗してもっと投げてくる子だっているんじゃないの。

洋貴:マジで言ってる?はー、悪女だわ。

詩織:何よ、協力者にそういう口きくわけ?

洋貴:あ、はい。ごめんなさい。

詩織:ちゅーしてくれたら許してあげる。

洋貴:(適当に)はいはい。ちゅっちゅ。

詩織:ぶっとばすぞ?

<次の日、帰宅中の路上>

佳菜子:今日も残業…なんか増えてるなあ。昨日の事もあるし、ちょっと配信行きたくないな…でも、毎日行かないと洋貴くんの枠いつもアクティブすごい数だし、私の存在忘れられちゃうかも。(あれ…?あの人昨日助けてくれた…)あの、すみません!

洋貴:あ、昨日の。大丈夫だった?あのあと。

佳菜子:はい、家もそう離れてないので大丈夫でした。お仕事からいつもこれくらいに帰ってくるんですか?

洋貴:うん、そうだよ。

佳菜子:お疲れさまです。頑張ってますね!

洋貴:はは、ありがとう。でも今まであんまりすれ違ったりもなかったよね?割と近所っぽいし。ここらへん住宅街なのに。

佳菜子:あ、私は最近残業が増えて…。今まではそこまでじゃなかったから、かな。

洋貴:なるほど。お疲れさまです、頑張ってますね!

佳菜子:あははっ、マネッコですか?

洋貴:真似してみた。あ、俺は瀬川洋貴。何かの縁だしよろしくね、ってナンパみたいだね。

佳菜子:ひろき…?え、あ…はい。よろしくおねがいします!私は、桜井佳菜子です。

洋貴:へえ、佳菜子ちゃん。うちのリスナーにもいるな、かなこって名前の子。

佳菜子:え…?

洋貴:内緒だけどね、配信アプリでラジオみたいなことしてるんだ。

佳菜子:えええええええええええ?!

洋貴:えっ、ど、どうしたの?

佳菜子:まさか、えっとあの…見てください
(スマホを取り出して配信アプリのプロフィール画面を見せる)

洋貴:マジかあ…、ええと。これはある意味リア凸になるのかな。

佳菜子:…(どうしようどうしよう、推しが、目の前に?!)

洋貴:佳菜子ちゃん?

佳菜子:…(え、無理。もしかしてって思ってはいたけど、でも、だって無理でしょう、推しに至近距離で囁かれたんだよ?昨日!)

洋貴:俺いなくなったほうが良い感じ?

佳菜子:やっ、やだ。いてください!

洋貴:…っ、はは!可愛い!

佳菜子:ずっとずっと応援してて、えっと。でもあの、すごく大人っぽくてわからなくて

洋貴:…あーー、そうだった。ほら、配信ってさ。若い子しか居ないイメージあってさ。俺みたいなオッサンがやってていいのかなあとか思ってその年齢で登録したんだ。声も若いってよく言われてたしね。いざやってみたら、あんまり来ないだろうって思ってた配信に、あれよあれよと言う間に人が来てさ。言い出せなくなってね。幻滅した?

佳菜子:いえ!むしろ、実物もかっこよくて…!あっ。

洋貴:ありがとう。本当にいい子だね、佳菜子。

佳菜子:ううう、配信モードで言うの、ずるいです。推し、なんですから私の。

洋貴:リスナーと会うなんて想像もしてなかったけど、こんなリアクションされるんだなあ

佳菜子:え、でも。リスナーさんの中に彼女がいるって、すごく噂になってて。

洋貴:あー…

詩織:(二階の窓から顔を出して)外でずっと喋ってる声聞こえると思ったら…洋貴、何その子。

洋貴:うわ、詩織。めんどくせえタイミングで…

詩織:早く家入りなさいよ。
言い訳はあとで聞くから。

洋貴:佳菜子ちゃん?誤解してるよなあ、してるよね。

佳菜子:あ、え…

洋貴:でもちょっと、説明難しいから…
あのさ連絡先だけ交換しよ。これ、QRコード…ん、ありがと。
バタバタしてごめん、また後で。

佳菜子:(家に入っていく姿を見送り)情報量…多すぎです。彼女は実在した…?って…待って、しおり、って言ってた?ファンランキング1位のしおりさんってまさかそうなの?勝てっこないじゃん、そんなの…あれ、でも…あれ…?私さっき推しとLINE交換しちゃった?!神対応の供給過多でしんじゃいそう。

<佳菜子の部屋。SE(LINE着信音)>
佳菜子:!!本当に、来た…来ちゃったよメッセージ

洋貴:「今日はごめんね。配信も遅くなっちゃったし」

佳菜子:「大丈夫です、それより彼女さんに誤解させて申し訳ありません!」

洋貴:「え…違う。そっちの誤解じゃなくて、あれは、実の妹。極度のブラコンなんだ」

佳菜子:…これは信じていいやつなのかな。でも、でも…洋貴くんがそういうなら、そうなのかな。だけど言い訳とかいってたし。しおりさんツイッターでもすごい匂わせツイートみたいなの沢山してたし。ブラコン極めるとそうなるの?兄弟居ないからわからないけど…
でも、あんなに素敵なお兄さんならそうなるのかなあ。あ、返事しなきゃ。
「彼女じゃないんですか?本当に」

洋貴:「そうだよ。っていうか、通話する?」

佳菜子:ひえっ…推しと、個人通話?!無理無理無理、しんじゃう。「無理です、ごめんなさい」…と。

洋貴:「そうだよね、強引に連絡先も聞いちゃったし怖いよね」

佳菜子:「ちがいます!電話で洋貴くん独占しちゃったら、心臓が持たない」
…え、まって。なんで着信音。やだやだ、無理っていってるのに。でも…でも。こんな機会、洋貴くんが気まぐれ起こしたとかじゃなかったらきっとない。

<SE(電話をとる音)>

佳菜子:あっ…はい。

洋貴:あんまり可愛いこと言わないで

佳菜子:え…あ、ごめん、なさい…!

洋貴:誤解、とけた?

佳菜子:誤解っていうかあの、その。彼女の噂を沈静化させたくて、とかそういうのじゃなくてですか?

洋貴:んー、やっぱり信用ないんだなあ、配信者って。詩織の言う通りだ。

佳菜子:妹さん…なんて?

洋貴:配信者なんて信じられない。誰にでもそういうこと言ってるだろうって。俺はさ、参考に見て回った人気配信者の雰囲気を色々かいつまんでオリジナルっぽくやったら人気がでるかな、ってそれだけなんだよ。俺としても上位目指したり野望はあるわけで、それだけなんだけど。やっぱりなあ…身内じゃないリスナーの生の反応聞くと。ああ、そういうイメージなんだなって身にしみたよ。推しって言いたくなくなった?

佳菜子:そんなことないです。推し続けます!

洋貴:ありがとう。佳菜子は、配信では声が
素敵ってよく言ってくれてたと思うんだけど、声だけが好き?

佳菜子:話の内容も・・・洋貴くんって、すごく優しくて繊細で。リスナーさんが他の配信者さんの悪口言ったりするとそういう話題よくないよ、ってちゃんといさめたりするのとか、優しいだけじゃなくて、きっと真面目な人なんだろうなって思って。あと、料理が好きで。よくTwitterに上げてる写真とか美味しそうで。…だから、同じメニューっぽいのとか
同じお皿とか、同じ日にファンランキング
1位のしおりさんがあげてるのみて、みんな、きっと彼女だって噂してて。でも、そっか・・・妹さん。

洋貴:そうだよ。あいついわく、対抗心を煽ってリスナーのみんなにもっと貢がせたいんだと。ブラコン極めすぎてて、人気者にしたいのか、独り占めしたいのかわからなくなってんじゃないかと思ってしまうよ。

佳菜子:あはは…!

洋貴:やーっと笑ってくれた。

佳菜子:…そんなに、しょんぼりしてましたか?

洋貴:してた。でもさ、それって俺のせいなわけじゃん。大事なリスナーに、そういう気持ちになってほしくないんだ。

佳菜子:大事なリスナー…そうです、よね。
(洋貴くんにとっては、何百人っているリスナーの1人なんだもんなあ。せめて、毎月ファンランキング1位をとれたら…変わるのかな)
洋貴:また落ち込んでる?困ったな、なんか言ってほしいこととか…

佳菜子:(前のセリフにかぶせて)
あの、こういうの害悪って言われちゃうのわかるんですけど。本気で、洋貴くんが好きなので。だから、ファンランキング1位になります!これ以上は心臓が壊れるのでごめんなさい!バレンタインイベント頑張ってください!

<SE(通話を切る音)>

佳菜子:ああああ、言っちゃった。言っちゃった。距離おかれたらどうしよう。って、何言ってるの。元から人気配信者とファンなんだから!今回は、たまたま事故で連絡先ゲットしちゃったけど、それだけなんだから。きっとファンサの一環で、もう二度と通話も…メッセージだって来ないんだから。

<SE(メッセージの着信音)>

洋貴:「急に切るからびっくりした。おやすみくらい言わせてほしかったぞ?また連絡するね。いつも配信来てくれてありがとう、おやすみ。」

佳菜子:また…また、次があるの?
好きって、言っちゃったのに。やっぱ神対応だわ。最高、私の推し!

洋貴:はあ、あの子のリアクション可愛すぎないか?まさかリスナーとリア凸なんて本当に考えたことなかったけど、運命の出会いってやつなのかも?

<SE(ノックの音、ドアを開く音)>

詩織:入るわよ

洋貴:入ってから言うなって。

詩織:ねえ、ドアの外から聞いてたんだけど私の正体ばらしたわね。どれだけ、あんたの人気取りに協力してると思ってるわけ?

洋貴:詩織、お前ね。昨日もいったけどやり方改めろよ。

詩織:なによ、こういうのが一番効果的なのよ。もう、こういう写真ツイートしちゃおっかな(頬にキスして写真を撮る。リップ音入れるのも可)

洋貴:こら、さすがにそれは駄目だろ。

詩織:炎上でもしなさいよ、バカ洋貴。

洋貴:マジで投稿してんじゃねえか、消せ!

詩織:いやよ~。フォロワーの九割が見たのが確認できたら消してあげる。

洋貴:この悪魔!!

<佳菜子の部屋>
佳菜子:え…なにこれ…キス写真…?やっぱりそういうことなんだ…ん、まあでも…うん。
配信者さんへの恋なんて実るわけないんだから
応援、がんばろ…でもやっぱりしんどいから…二度と個人的な連絡はしない。…さよなら、私の恋心。

<数日後>

洋貴:(あれから、当然のように起きた炎上騒ぎで配信も不調リスナーは冷やかしや荒らしをするような連中しか残っておらず運命だと思ったあの子も……)「今日も来てくれてありがとう!明日もこの時間に!」

佳菜子:「無理せず頑張ってね!配信お疲れ様!」…っとなんか元気ない…あれだけ騒ぎになっちゃったもんね…コメントもうまく出来ないし…応援は、したいのに…

洋貴:(佳菜子ちゃんはあれからLINEに既読をつけてくれる事もなくなって、あの事件についての弁明も出来ないまま…はあ、俺、なにやってるんだろう。)

佳菜子:…配信終わっちゃった…あ、いけない、帰りにコンタクトの洗浄液買うの忘れてた…ドラッグストア行こうかな。

<準備をして玄関から出ていく佳菜子>

佳菜子:(夜道…やっぱ怖いなあ…明日にすればよかったかなあ…大通り出たら、ここよりは明るいし…がんばろ)

<足音が後ろから聞こえる>

佳菜子:(こんな時間に人…まあ、私みたいに出る人もいるかもだし。だけど、前のこともあるしなあ…早足で行こう)

<足音も早足でついてくる>

佳菜子:やだ…追いかけてきてる?!

洋貴:待って、ごめん、変質者じゃない…!(佳菜子の手を掴む)

佳菜子:え…?その声、洋貴…くん?

洋貴:ごめん、ストーカーみたいなことしてるのはわかってる。

佳菜子:…手、離して、ください

洋貴:あっ…ごめん、本当にごめん

佳菜子:いえ…でも、どうして。

洋貴:誤解を解きたいって、ずっと思ってた。
あの写真の事とか。だから、ちょっと家来て。

佳菜子:え、でも彼女さんが…

洋貴:ああ、もう。いいからおいで!

<そのまま連れて行かれる佳菜子>
<洋貴の家>

詩織:ちょっと、本当に連れてきたの?!

洋貴:まだお前ちゃんとネットでも謝罪してないだろ

詩織:なんでそんな事…!

洋貴:やりすぎだって言ってんだ。ブラコンの度合いを超えてるんだよお前のは。

佳菜子:あの、あの…!

洋貴:ごめん、いきなり。ブスっとしてないで本当の事をこの子に話せよ。

詩織:そんな中途半端な子の何がいいの?

洋貴:中途半端なんかじゃない。あんな騒ぎがあったあともこの子は変わらず来てくれた、言葉を選ぶのに必死そうにしてたけど、それでも前向きな言葉をくれた。あんな冷やかしと荒らしが増えた枠でだ。

佳菜子:洋貴くん…

洋貴:この子にだけでも良い、事実を明確にしろ。

詩織:………うっざ…そうだ!良いこと考えた!私のことを公式彼女として発表するなら、この子にあんたと私が本当のきょうだいって
事実がわかる証拠を見せてあげる。

<佳菜子耐えられずに詩織の頬を平手打ち>

佳菜子:いい加減にして!!!あなたのそのワガママでどれだけ洋貴くんが迷惑してるかわかってるの??私の事なんていい、でもね。洋貴くんが配信の世界で大きくなりたいっていうのの邪魔しないで!!!

詩織:…うるさいわね!あんたに洋貴の何がわかるのよ!

佳菜子:配信の洋貴くんしか…しらないけど、しらないけどでも私にとっては、全てから救ってくれるヒーローで王子様なの。きっと他のリスナーさんにとってもそうだったそれなのに…!

詩織:ばっかみたい!!あんたたちお似合いなんじゃない?夢ばっか見て。
<投げつけられる洋貴と詩織の母の所有物である母子手帳>

佳菜子:これ……母子手帳…お母さんが一緒。

詩織:二度と顔見せないで。もう、洋貴もいなくなっちゃえバカ。

洋貴:用意、してたのか。ちゃんと…。佳菜子ちゃん、行こう。

<近所の公園のベンチで佇む2人>

洋貴:どっと…疲れた

佳菜子:お疲れ様です。あの…

洋貴:俺、特別に思っちゃったんだよ。

佳菜子:え…?

洋貴:佳菜子ちゃんの事。夜道で助けた女の子が、まさかの自分のリスナーさんで。しかも自分にガチ恋してくれてるって浮かれてたら妹の詩織にあんな事されて。メッセージも見てくれなくなって詰んだなって思った。

佳菜子:ごめんなさい…さすがにつらくて

洋貴:でも、毎回配信には来てくれてたね特別な感情がなくなったから?

佳菜子:そんなわけないです……今も、声聞くだけで、つらくなるくらい好き。

洋貴:誤解とけてない?実のきょうだいなのに怪しいって思う?

佳菜子:違います!あんなの見せられたら、さすがに。でも、妹さんのあの感じみたら、本当に好きなんだなって兄としてってだけじゃない感情があるんだなって

洋貴:いなくなっちゃえって言われたけどな。

佳菜子:強がりですよ、絶対………って…待ってください。待って、さっきすごく大事な事言ってませんでした?

洋貴:スルースキル高いなと思ったら、本当に上の空だった?佳菜子ちゃんがね、特別な子だって思ってるんだ。ただのリスナーじゃなくて、一人の女性として。まだ知り合ったばっかりだけど、これからもっと知りたいって思える人なんだ。さっきの詩織への叱咤を見て、改めてそれは間違いじゃないって思った。俺の事を一番好きって思ってくれてそれを投げないでくれるのはこの子なんだって。

佳菜子:それは、あの……はい!好きです。

洋貴:顔真っ赤。ねえ、リスナー以上の関係になってくれませんか。

佳菜子:……私なんかで、いいんですか…?

洋貴:君が、いい。

<翌日>
佳菜子:(詩織さんはその後Twitterのアカウントや、配信アプリのアカウントを消してしまったらしい。そのせいか、洋貴くんが振ったとか、色々憶測が流れたけれど…それより衝撃な発言がその日の配信で出るなんて私は思いもしなくて)

洋貴:「うちのモデレーターがやらかしてしまったことで、リスナーのみんなを騒がせてしまったけれど、決着がつきました。あいつは自分の実の妹です。彼女は別の子です。最近できました配信界隈ってさ、プライベートとか恋愛ごとを伏せる傾向にあるじゃん、そういうのが逆に良くないのかなとか俺はこの件で思ってしまったから、オープンにしていくよついて来たい子だけ、おいで」

佳菜子:………彼女、って私、であってるよね。こんな爆弾発言ありですか…あとでちゃんと話さなきゃ。(無事にLINEのやりとりも再開したし、配信が終わったらこのことについて、嬉しいけどなにしてるの!ってメッセージ送らなきゃ。)

洋貴:「俺は俺、難しいとは思うけど、ありのままでトップを改めて目指すから応援よろしく!」

佳菜子:本当に前向きで、力をくれる声。きっとこの先も色々あると思うけど、洋貴くんなら…絶対に夢を叶えられる。だって
「応援しつづけます!!私の推しは誰より素敵な人ですから!」

<<終演>>



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