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サイゼリヤをCCCで分析してみる #会計クイズ #マーケティングトレース

こんにちは! 

現在、外食チェーンのサイゼリヤのマーケティングトレースの記事を作成しており、財務分析する過程でCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を求めたのですが、競合の外食チェーンでもその内容が異なり、どのような理由で違いが出ているのか気になって分析することにしました。ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです!

1.CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)とは? 

そもそも、キャッシュ・コンバージョン・サイクルとはどのような指標なのでしょうか?ご存知の方も多いかと思います。大手町のランダムウォーカーさんのインスタグラムがとてもわかりやすいので、引用させていただきます。

https://www.instagram.com/ote_walk/?hl=ja

つまり、キャッシュ・コンバージョン・サイクルは商品等を仕入れてから現金化されるまでにどの程度の時間を要するかという運転資本の効率性を示すものです。この指標は基本的に数値が小さい方が、すなわち日数が少ない方が良いとされています。どの程度の数字が良いのかというのはもちろん業種によって異なります。それぞれの業種に相場があります。例えば、今回のテーマである外食業界はCCCがマイナスになることが多いです。それぞれの回転期間は日本政策金融公庫「業種別経営指標」で確認でき、そこからおよその業界の平均がわかります。

2.外食チェーンのCCCを分析してみる

ここからが本題です。今回はサイゼリヤをCCCの視点から経営戦略的なところを分析できればと思います。まず、サイゼリヤのCCCを分析すると以下の通りになりました。なお、今回は従来の外食チェーンの傾向と比較するための代表例として、業界競合のガスト、バーミヤンといったファミリーレストランを経営しているすかいらーく・ホールディングスと比較しています。数値は、サイゼリヤは2019年度、すかいらーくは2018年の有価証券報告書元に算出しました。

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では具体的な数値を見てみましょう。すかいらーくホールディングスの方がCCCは短く、マイナスになっています。すかいらーくホールディングスは仕入債務回転期間が長く、結果CCCがマイナスになるという点で従来の飲食業界の傾向と一致しています。仕入債務回転期間が2ヶ月以上と一般的な飲食業よりも長いのは、外食チャーン大手というだけあって、売り手への交渉力が高いことが考えられます。一方、サイゼリヤはというと棚卸資産回転期間がすかいらーくホールディングスの3倍以上の約44日あります。また、売上債権回転期間が0日になっています。

ここまででサイゼリヤのCCC及び各回転期間から、

・棚卸資産回転期間が約44日と比較的に長い

・売上債権回転期間が0日

ということが言えると思います。

3.サイゼリヤの各回転期間の特徴をマーケティング分析

では、サイゼリヤのどのような特徴・強みが各回転期間に反映されているのかを分析して行きます。

・サイゼリヤの製造直販業

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出典:https://www.saizeriya.co.jp/corporate/effort/direct/

アパレル業界では製品の開発・製造から販売までを単一の業者が一貫して行うSPAという販売形態がとられることが多くなっています。それと同様に、サイゼリヤは自ら商品開発~食材の生産~加工~配送まで一貫して行う形態を目指し、サプライチェーンの効率化を図っています。具体的には、サイゼリヤ農場での種や土壌・栽培方法の開発研究、食品を作る自社工場の運営、自社工場から店舗への配送など、素材開発から加工製造機能を自社で持ち、販売までを一括で行っています。そうして中間業者を挟まないことで低価格での提供が可能であり、自社で品質・価格を比較的自由に調整できるのです。

この製造直販は食材の生産から加工、配送まで一括で、商品を長期間保有するので通常の飲食業に比べて棚卸資産回転期間は長くなると考えました。また、仕入債務回転期間についても製造直販を考えると仕入債務回転期間は最適化されやすいのでしょう。

・サイゼリヤの現金決済

まず、前提としてサイゼリヤの収益は、外部顧客への売上高が大半を占めます。よって、顧客がどのような決済形式をとるかが売上債権回転期間には大きく影響します。

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サイゼリヤは基本的に現金決済です。これはとても有名な話ですね。サイゼリヤは国内約1100店舗の8割が現金決済です。以下の記事でサイゼリヤの堀埜一成社長自らがキャッシュレス決済についてお話しされています。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00067/111500052/

いずれはキャッシュレス決済を導入する考えではあるが、手数料や特に端末を導入する費用が高く、まだキャッシュレス決済自体が開発競争の段階にあるのでそれが落ち着いて大勢が決まるまでは待ちたいといったところでしょうか?前項の製造直販にしろ、キャッシュレス決済導入にしろ、常に費用を削減することを強く考えている姿勢が見て取れます。

つまり、現状として顧客は現金決済をするのでサイゼリヤの売上債権回転期間は0日となっています。しかし、今後のキャッシュレス決済導入の中で変化することは十分にあると思います。

4.最後に

今回はマーケティングトレースの延長で記事を書きました。CCCは短ければいいという理解でしたが、CCCを構成する各回転期間に企業の経営的特徴がよく現れているということが分かりました。また、サイゼリヤという企業のコストに対する意識がよく伝わってきて、近日中に公開するサイゼリヤのマーケティングトレースではそこも含めより深掘りしていくので、ぜひご一読いただければ幸いです。

最後になりますが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました!!  

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