もし自分がALL_YOURSのCMOなら

もし自分がALL YOURSのCMOなら2021年3月売上高目標を達成するためにどのような施策が考えられるか #マーケティングトレース

こんにちは!

僕は、先月1月に大手町のランダムウォーカーさんと黒澤さんのお二人による学生向け企業分析集中講座に参加させていただいたヌマザワと申します。普段は冴えない大学1年生をやっていますが、ファイナンスやマーケティングに興味があり、実際に自分で企業分析をしてアウトプットすることで座学とは違った学びが得られると思い、noteを始めてみました。

今回の企業分析集中講座では、株式投資型クラウドファンディングサービスを提供しているFUNDINNOさんで実際に資金調達に成功した企業3社について企業分析を行うというワークを行いました。そこでD2Cモデルで衣服の販売を行っている株式会社オールユアーズさん(以下ALL YOURSと表記させていただきます)に興味を持ち、自分なりに分析しました。分析内容にあたって至らない箇所もあるかと思いますが、ぜひご一読いただけると幸いです。

1. ALL YOURSの企業概要

ALL YOURSは衣服を販売する、いわゆるアパレル業を営んでいますが主に以下のような特徴が挙げられます。

特徴① どのような商品を扱っているか

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ALL YOURSは服をファッション性やトレンドではなく、身につける道具として機能性を重視し、服を着用する際のストレスを解決しています。

特徴② D2Cモデル

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従来のアパレル企業は工場から何らかの中間業者を通じて顧客に販売することが多いですが、ALL YOURSはD2Cモデルを採用することで中間マージンを抑えています。よって、原価により費用をかけることができ、より適正な価格でより良い製品を作ることも可能になります。

特徴③ ファンビジネス

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ALL YOURSでは ①CAMPFIREなどで購入型クラウドファンディングを行い、ファンコミュニティビジネスを展開し自社ECサイトへユーザーを流入させ、②ファンユーザーを実店舗においてユーザーとALL YOURSもしくはユーザー同士のコミュニュケーション強化③結果として、クラウドファンディングに参加したファンユーザーの実店舗来店によるコミュニケーションの強化とそのファンユーザーのさらなるクラウドファンディング等のプロジェクト支援の循環 によってオリジナル市場を形成しています。

特徴④ 今後目指すSaaS型販売モデルの取り組み

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ALL YOURSは現在SECONDLIFEという有料で機能の低下した製品の機能を回復したり、長期間の着用ダメージに対して補修を行うなどのサービスを行っています。そこで、今後の経営の中で衣服をただ製品として売り切る従来の販売モデルから衣服にメンテナンス料を含む月額払いのサービスとして販売することを目指しています。

2.ALL YOURSをマーケティング分析

 1. 市場分析〜5Force分析

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ではまず、ALL YOURSの属する市場や競合を整理する目的で5Force分析を行おうと思います。

・ 直接競合

直接競合としてはアパレル業界に属する諸企業と考えることができますが、この場合顧客が商品のファッション性よりも機能性を重視していることからこの時点では具体的にはUNIQLO(ファーストリテイリング)やワークマンが挙げられると思います。

・ 新規参入

アパレル市場のおいて、D2CやSaaS型の販売モデルを採用し、購入型クラウドファンディングによるファンビジネスとしてのあり方を取り入れているALL YOURSは新規参入に属すると言えると考えます。また、ALL YOURSに続く企業の参入障壁の高さについて考えると、D2Cに関しては企業の規模によらず参入は可能かと思われます。実際、直接競合としてして挙げたワークマンについては2020年2月末をもって大手ネット通販サイト楽天からの撤退を表明し、D2C化を進めていると考えられることから今後そのようなアパレル企業も増えることでしょう。

・ 代替品

ALL YOURSの創り出している価値が新しいもので、アパレル市場の新規参入であることから代替性は低いと考えられます。

・ 売り手

D2Cの場合、売り手は製品を作る工場になります。ALL YOURSはSPAのような形で開発・流通まで行っているため、中間業者を介する業態に比べ生産工程が最適化されやすいです。

・ 買い手

この場合の買い手は、機能性や着やすさを求める消費者となります。それらの消費者が考慮することとして価格がありますが、これについては後のSTP分析で顧客のセグメントについては考察しようと思います。


5Force分析から

・機能性や着やすさを重視した商品を提供している点で直接競合はUNIQLOやワークマンが挙げられる

・機能性や着やすさを重視した商品を長期間でメンテナンスしながら顧客にサービスとして使ってもらうという価値観を代替する商品やサービスは現在あまり見られず、同業他社との差別化がはっきりしている

という考察をしました。

 2. 戦略整理〜STP分析

次に、競合と顧客をより明確化する目的でSTP分析を行います。

ここで、標的セグメントとしては機能性や着やすさに特化した商品を扱うアパレル企業を考えました。そして以下の通りにポジショニングマップを作成しました。

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ここから得られる示唆として、ALL YOURSの価格帯とUNIQLO、ワークマンの価格帯は全く異なります。具体的には、UNIQLO、ワークマンの商品の価格帯としてはおよそ1万円以下ですが、ALL YOURSは1〜3万円であることがそれぞれの商品カタログからわかりました。

STP分析から

・5Force分析で競合として捉えたUNIQLOやワークマンに対して比較的高価格な製品を提供するALL YOURSでは提供している価値が異なり、ユーザーが価格は正当であると実感する仕組みがある

と考えました。

現状として、ALL YOURSの提供する、ユーザーが価格は正当であると実感する仕組みは先述のSECONDLIFEや今後目指しているSaaS型販売モデル、ファンビジネスとしてのあり方などが該当するのかなと思いました。

 3. 戦略整理〜4P分析

上記のSTP分析の考察から、価格の正当性をユーザーに実感させる仕組みを明らかにする上で、ALL YOURSの強みを更に明確化することを目的に4P分析を行いました。

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・ Product

ファッション性やトレンドではなく、機能性や着やすさを重視した衣服を提供しています。

・ Price

価格帯は1〜3万円です。企業概要にあるように、現行の今後製品を売り切る販売モデルとSECONDLIFEという有料で販売した製品のメンテナンスを行うサービスのノウハウを組み合わせることでSaaS型販売モデルを目指しています。

・ Place

生産工程において、中間業者を介さず、工場からALL YOURSを通じて直接顧客に販売するD2Cモデルを採用しています。また、購入型クラウドファンディング、ECサイト、実店舗の三つの方法で販売しています。

・ Promotion

ALL YOURSでは、クラウドファンディングに参加したファンユーザーの実店舗来店によるコミュニケーションの強化とそのファンユーザーのさらなるクラウドファンディング等のプロジェクト支援の循環という面でファンコミュニティが特徴として挙げられます。購入型クラウドファンディングで約3700人のユーザーを獲得した実績、またECサイトを設立して売り上げが第一四半期で250%成長している実績があります。

4P分析から、価格帯が顧客にとって障壁ではなくなるための要素として

・製品だけでなくメンテナンスを含むサービスとしての価値を提供できる余地があること

・厚いファンコミュニティが存在し、共にビジネスを作り上げているという従来のアパレル業とは異なる価値を提供できること

が考えられます。

3. 課題設定

施策を考える上での数値目標

ALL YOURSが実際に掲げている売上高目標を用いて、「2020年2月現在から施策を実行し、2021年3月までに売上高510,294,749円を達成する」ということを施策を考える上での数値目標として設定します。そして、以下の通りに1年間の売上高目標を分析しました。

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なお、現在の販売価格については価格帯が1〜3万円であることから、現在の販売数量については、ALL YOURSが獲得したファンユーザーが約3,700人で一人当たり1.5着購入していると仮定してそれぞれ設定しました。

ここまででわかることは、売上高目標を達成するためには販売単価・販売数量のいずれかを4.25倍程度に増加させる必要があるということです。ここでは施策がどの数値にインパクトを与えるかを明確にするために、変える要素は販売単価もしくは販売数量のいずれか一方にします。

売上高目標を達成する上で販売数量を増やす案②について考えます。ALL YOURSはここまでの4年以上の期間で約3700人のファンユーザーを獲得しました。それを1年でさらに4倍以上に増加させることはこれまでのファンユーザーの増加ペースからすると非現実的な目標設定である上に、これまでALL YOURSは培ってきた密なコミュニケーションを通じてプロジェクトの共犯者になってもらうという企業理念に対してユーザーの質が変わってしまう懸念もあります。また、ユーザー1人当たりの購入枚数を増やすという考え方もあります。つまり、新規ユーザーを大幅に増やすのではなく、現在のユーザー増加率のまま1ユーザーに6〜7製品を購入してもらうということです。これはユーザーがまとめ買いができるような販売プランが実行出来れば実現可能かもしれません。一方、案①は販売単価を高めるということで、マーケティング分析の結果からALL YOURSはメンテナンスなどのサービスやファンビジネスとしての側面などの付加価値が価格に反映されているということがわかるため、こちらは比較的可能であると言えます。

ここでは案①を考え、「2020年2月現在から施策を実行し、2021年3月までに売上高510,294,749円を達成するために購入単価を4.25倍にする施策を考える」という課題設定になりました。

4. 課題解決のために考えられる施策

 1.どのような施策が考えられるか?

施策:SaaS型販売モデルのプランを開始し、2500ユーザー獲得する

施策-2

1年間の衣類消費をALL YOURSで完結することのできるSECONDLIFEのようなメンテナンスサービス付きのSaaS型のプランを提供することを考えます。

この場合、売上高 = サービス単価 × ユーザー数 であるから推定売上高は250,000円 × 2500ユーザー = 625,000,000円となります。

 2.なぜこの施策が考えられるのか?

以上で述べた通り、自分は販売単価を何らかの施策で向上させることを考えました。販売単価 = 製品本体の価格 + サービス料金 であり、マーケティング分析の結果からALL YOURSの強みはSECONDLIFEやファンコミュニティなどの競合他社にはないサービスの付加価値であることがわかったのでそこに値上げの源泉を求めました。総務省消費実態調査によれば国民は収入の3〜5%を被服及び履き物に支出しているという情報を考慮すれば、ALL YOURSがファンユーザーの衣服消費を全て代替できるSaaS型販売モデルを採用すれば製品本体の価格に対しては15〜20万円の価格で販売可能だと思います。しかし、そこでサービス料金を値上げし、価格を5〜10万円引き上げた値段設定をすることで客単価を引き上げようと考えます。さらにこのプランは、先述の案②の1ユーザーあたりの販売数量を増やすことにも結果としてなっています。

また、これは単なる値上げ施策としてだけでなくALL YOURSのファンビジネスとしての在り方をより強固にできる一つのステップになりうるとも考えられます。

プレゼンテーション1

個人的な考えで恐縮ですが、ファンビジネスの側面をもつALL YOURSのファンユーザーのステージを以上のように設定し、それに応じて客単価とALL YOURSへの関係性の深度が高まっていく仕組みにするという応用が考えられます。Phase1は製品を購入することを通じてコミュニティに参加してもらう段階です。そして、今回の施策は上図のPhase2に該当します。SaaS型販売では売り切りよりもメンテナンス等で自動的にユーザーとALL YOURSとが関わる回数が増えるので、より密な関係性になると予想されます。Phase3では例えばユーザーよりもプロジェクトを主催する側になるなど、より趣味やライフワークとしての価値をユーザーに提供するようなビジネスモデルも考えられると思います。こうすることでファンビジネスがより発展し、新規参入や代替品が生じにくい点で競合他社との差別化が可能で、長期間にわたってブランドに関わるという点で顧客のライフタイムバリューを向上させることも期待できます。

5. 施策評価

 1.施策の優位性

施策の優位性として、

① 売上高目標を達成できる

② ファンユーザーのLTVを伸ばし、ファンビジネスを活発化させることができる

が挙げられると思います。①については、この施策で挙げたプランでは月額制で好きなだけ製品とサービスを利用できるので、販売単価を何倍になるのかはユーザーにより変動して計測が難しいですが、“4.課題解決のために考えられる施策”で示した通り達成されます。②については、前章で詳しく述べた通りです。

 2.施策の実現性

施策の実現性に関わる問題として、1年間で2500ユーザーを獲得できるかという問題があると思います。施策の特性上、既にある程度ALL YOURSの良さを知る既存のユーザーが販売する上でのターゲットになると予想されます。ファンビジネスの色が強いALL YOURSならば、広告活動はファンコミュニティでターゲットとなる既存のファンユーザーに対し効率的に行えるため比較的低費用で実行することが可能です。創業以来年間平均1000人のペースでファンユーザーが増加し、またECサイトを設立して売り上げが第一四半期で250%成長していることを加味して、1年間でファンユーザーが6000人程度に増加することを考えると、そのうちの40%ほどがこのプランに加入することを目標にすれば良いことがわかります。

6. 最後に

ここまでALL YOURSをマーケティング分析し、売上高目標を達成する施策について考えました。目標時点でのファンユーザー数の40%程度をプランに加入してもらうというのが少し厳しいのかなと思いましたが、施策自体は長期的にファンビジネスやSaaS型販売といったALL YOURSの特長を活かせるものだと思いました。

最後になりますが、ここまで読んでいただいたき本当にありがとうございました!今後も気になった企業やテーマについての記事をまとめていこうと思いますので、よろしければそちらの方も読んでいただけたら嬉しいです!


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