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月経も、射精も、体毛も。からだの全ては汚くないという話

先日、息子と歯科クリニックへ歯の定期チェックを受けに行った時のこと。
息子が行くのを渋っていたので理由を聞くと「侮辱されるのが嫌」ということ。
「侮辱」という言葉の意味が私(アクロストンたかお)にはイマイチピンとこなかったので詳しく聞くと、「ここに汚れがある、とか言われる。自分を侮辱されてるように感じる」。
この日は歯の生え変わりについて歯科医さんに相談したいこともあり、「診察した結果をそう伝えてるだけで、君自身を批判してる訳では無いよ」と伝え、なんとか受診してくれました。

実はこの息子とのやりとり、私に刺さるものがありました。日常診療の中で「汚れている」などの言葉を使ってしまうことがあるからです。
たとえば膀胱炎の患者さんが来た時。尿検査の結果をみながら「尿が汚れているので抗生剤を出しますね」と説明したり、からだに入ってる管を交換する時に「汚れてるものを抜いて、キレイなのに変えますね」と言ってしまったり。

「汚れている」というのはネガティブな表現だし、印象を表しただけのもの。本当は「尿の中に炎症が見られるから抗生剤を出しますね」「今からだに入ってる管を抜いて、次のものに変えますね」が正確な表現となります。もともと「汚れている」という言葉は使わないように気をつけてはいましたが気を抜くと言ってしまうことがあり、もう二度と使わないと息子とのやり取りを通して誓ったのでした。

この「汚れている」という言葉、からだに関連した事柄に使われがちなので診療行為に限らず、特に性教育の分野でも使わないように気をつけています。子ども達に生理用品について話す際には、「経血で下着が汚れないようにナプキンを使うよ」ではなくて、「経血が下着に付くのを防ぐのにナプキンを使うよ」と説明しています。他にも「もし夢精して下着を汚したら、新しいのに取り替えて汚れた下着は洗濯カゴに入れよう」ではなくて、「もし夢精して下着に精液が付いたら、新しいのに取り替えて精液のついた下着は洗濯カゴに入れよう」。
月経や射精に対して「汚い」などネガティブなイメージを持ち悩む子もいるため、客観的な表現をするように気をつけてます。

逆に広告でみるのが「キレイなからだ」という言葉。特に脱毛系のもので見かけます。もちろんどの広告も「毛が生えてるのは汚い」とは書いてません(そうあって欲しい)。でも「脱毛したら、キレイになる」というのは裏返せば「手入れのされてない毛が生えている=汚い」と暗に伝えているように私は感じます。本当は、からだの毛をそのままにしても、脱毛しても、染めても、どんな状態にするのかは本人が決定することなのに、脱毛してる状態のみが正解だと価値観を押し付けてきています。

「汚れている」「キレイ」といった言葉は誰かの勝手な価値観に基づいた一方的な意見にすぎません。でも、これらの言葉には人を落ち込ませたり、従わせたりする力があり、人のからだについて使うときには気をつける必要があると、私たちは考えています。

#性教育 #アクロストン

妻・夫。二人とも医師。子どもに必要な性の知識を楽しく・ポップで・まじめなコンテンツにしてお届けします。 https://acrosstone.jimdofree.com https://www.facebook.com/acrosstone インスタグラム:@acrosstone