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自社株買いとボラティリティの関係性

皆さま、こんにちは。
アクロポリス・アドバイザーズです。

今回は根津アジア・キャピタル・リミテッドの創業者であるデービッド・スノーディ氏の著書『投資家をファンに変える「株主ケア」』の中で指摘している自社株買いとボラティリティの関係について、当社でも定量的に検証をしましたのでその内容についてご紹介します。


本書について

本書は長年日本株投資をしてきたデービッド・スノーディ氏が執筆しており、ROEやボラティリティ、人的資本等について定量分析を交えて議論しています。また、ボラティリティ低減のための施策をいくつか提示しています。

自社株買いとボラティリティ

本書の第3章では日本株市場における自社株買いとボラティリティの関係を分析しています。結果としては、自社株買いはボラティリティやバリエーションに小さい影響しか与えていないと指摘しています。たしかに自社株買いを行うと、EPS(1株当たり純利益)が上昇するため、理論的には一株当たり株主価値は増加し、株価は上昇します。また、ROEの上昇といった恩恵があります。しかし、現行の自社株買いではこれらのメリットが享受できていません。著者は、企業はもっとROICの改善を意識して自社株買いを行う必要があると主張しています。

分析方法

2022年に自社株買いを発表した企業206社を対象に、発表前150営業日のボラティリティと発表後150営業日のボラティリティを計算して、比較します。ボラティリティはclose-to-closeの日次リターンを使って計算します。

分析結果

以下の表は、各銘柄ごとに発表日前後でボラティリティを計算し、それらの平均値を計算した結果です。本書と同様に当社の分析でも、発表前後でボラティリティの平均に差異は見られませんでした。

最後に

著者は日本の自社株買いは株価に対して無頓着であると指摘しており、より株価を意識した自社株買いの方法についても提言しています。自社株買いの方法を予めアナウンスすることによってボラティリティを低下させることが可能かもしれません。本書は日本株について深い洞察がなされた一冊であり、有益な示唆が多数含まれるように思います。

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