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「低PBR改善に関する東証の取り組み」レポート紹介①

皆さまこんにちは、アクロポリス・アドバイザーズです。
さて、今回はPBRの改善に関し説明している有益なレポートをご紹介したいと思います。           
低PBR改善に関し、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの柏原様が執筆されたレポートになります。

レポートの原文は以下をご覧ください。
低PBR企業の価値創造に向けた改善計画対応について | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング (murc.jp)

レポート要約

低PBR企業の価値創造に向けた改善計画対応

東証の「第7回市場区分見直しに関するフォローアップ会議(以下、フォローアップ会議)」において、東証は継続してPBRが1倍を下回る企業に、改善に向けた計画を示すよう求める方針を明らかにしました。 
その方針を見るとPBR1倍を下回る状況の解説、それに対して東証がどういうアクションを取ろうとしているかがまとめられています。

日本市場には「価値毀損企業」がまん延している

日本の株式市場は、PBR1倍を下回る企業が半数を占めており、欧米市場と比較すると低く評価された状態です。

一方的欧米市場はというと、S&P500(米国)のうちPBRが1倍を下回る企業は全体の5%であり、STOXX600(欧州)においても24%となっています。
残念ながら明確な差がついています。

PBR1倍を下回る企業は時価総額が会計上の純資産(簿価)を下回っているため、すべての株式を取得してすぐ解散すれば利益が発生するアービトラージともいえる状態です。

企業が生み出すリターンが資本コストを超えておらず、市場からは「価値を毀損し続ける」とみなされている可能性を意味しています。投資家の視点では期待収益率がマイナスかもしれません。

【出典】murc 低PBR企業の価値創造に向けた改善計画対応について


ただ、PBRが1倍越えであれば安泰ということではありません。
フォローアップ会議内で上場企業のPBRの一覧公表が検討されているという事実を踏まえ、誰もが危機感を持つ必要があるというのが現実です。

価値毀損企業への強い要請

東証は、長期にわたってPBRが1倍を下回る企業に対し、次のような厳しい評価をしています。
上場会社であるにもかかわらず、資本コストや株価に対する意識が低く、市場や投資家と向き合った経営をしていない
そして、これらに改善を促すための具体策を開示させる方向で検討を進めています。

第7回フォローアップ会議では、2023春以降、継続的なPBR1倍を下回る企業に開示を「強く要請」する対応が決まりました。資本コストや株価の意識改革やリテラシー向上、中長期的な企業価値向上方策がまとめられています。

「中長期的な企業価値を促すための方策」では、「求めていくべき」や「促していくべき」といった強い表現も同会議の公表文書には見られます。

【出典】東京証券取引所 市場区分見直しに関するフォローアップ会議 第7回(2023年1月15日開催)資料3 市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の論点整理(案)


【出典】東京証券取引所 市場区分見直しに関するフォローアップ会議 第7回(2023年1月15日開催)資料4 論点整理を踏まえた今後の東証の対応(案)


意識からすべてアップデートしなければならない

これまで、資本コストを意識した経営についてはCGコードや対話ガイドラインで示されていました。ただ実際は、反応なし・形式的な対応が散見され、実質的に効果的な対応をしていない可能性が危惧されていました。

具体的には、投資判断やKPIパフォーマンスレビュー、評価報酬への反映など高度な対応が含まれており、経営陣のキャピタルマーケットリテラシーと、組織・従業員への理解浸透が必要な改革には、時間のかかるものもあるかもしれません。

今回の会議では、改善計画対応の内容は未確定でしたが、少なくともCGコードや対話ガイドラインに示された形式基準を具備し、実質的な運用を行う・進捗状況の開示が必要です。

開示にとどまらず、価値創造に向けた意識・行動・取組の根本的なアップデートが求められていくでしょう。

まとめ

フォローアップ会議の公表文章の中では、現状の日本企業の開示に対する姿勢について、厳しい指摘がされています。
まだ意識の浸透が進んでいないこともあり、企業の対応が追いついていない肌感もあります。形式的な対応で済ませるのではなく、まずはCGや対話ガイドラインの基本的な部分をクリアすることから始めることは検討の余地があるかもしれません。



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