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東洋建設株式会社の2023年6月定時株主総会における国内機関投資家の議決権行使結果

皆さまこんにちは、
アクロポリス・アドバイザーズです。

今回は、2023年6月株主総会シーズンで注目された、東洋建設株式会社の株主総会で提出された各種議案に対する、主要な国内機関投資家による議決権行使の結果とその行使理由についてまとめていきたいと思います。

当該株主総会の決議結果について、記述する上で必要な部分は記載いたしますが、更に詳しい内容を知りたい方は、以下のnote東洋建設の株主総会関連資料をご確認ください。


■2023年6月定時株主総会決議結果まとめ

以下の表は、今回の総会の議案内容と決議結果をまとめたものです。

臨時報告書日本経済新聞記事より作成

■機関投資家の議決権行使結果

そして以下の表は各議案に対する国内機関投資家の議決権行使結果をまとめたものです。
こちらを比較参照いただきながら、以降の内容を読んで頂けると非常にわかりやすいかと思います。

円谷昭一研究室機関投資家の議決権行使結果 等より作成

この結果を踏まえ、本Noteでは、特に会社提案の取締役選任議案(以降3号議案と表記)と株主提案の取締役選任議案(以降7号議案と表記)に関して、国内機関投資家による議決権行使の結果とその行使理由について言及していきます。

行使理由については、会社提案に関しては主に反対行使の理由株主提案に関しては主に賛成行使の理由をまとめていきたいと思います。
これより先に添付されている画像は、文字が小さく多少見づらい部分もあるかと思いますので、その場合拡大していただくか、もしくはリンク先をご覧いただければ幸いです。

○今回の議案に対する機関投資家全体の議決権行使の特徴

機関投資家が議決権行使をする際、基本会社提案に対しては「各機関投資家がそれぞれの議決権行使基準に則った議決権行使」を行いますが、株主提案に対しては「会社と株主双方の意見を考慮し、個別判断」するケースが多いです。

今回会社側と株主側双方が各々異なる取締役選任議案を提出しております。

その為今回の行使内容については概ね個別判断にて行使されたケースが殆どとなっております。
この点を踏まえまして、以降の各機関投資家による議決権行使結果とその行使理由についてご覧いただければと思います。

○野村アセットマネジメント

3号議案に関しては11名中4名に対して反対行使をしています。
反対理由としては、議決権行使基準を満たしていたとしても、買収提案への対応を適時的に行わなかった取締役会メンバーの責任の重さを鑑みて、再任となる取締役(新任ではない、これまでの取締役会内いたメンバー)に対し反対行使をしています。

一方、7号議案に関しては9名中7名に対して賛成行使をしています。
賛成理由としては買収提案を含む企業価値向上策の検討が急務であるとし、賛成行使をしています。

議決権行使理由
【出典】23年4-6月野村AM議決権行使結果

以下参考までに、野村アセットマネジメントの議決権行使の判断の特徴を掲載しておきます。

議決権行使基準
【出典】23年4-6月野村AM議決権行使結果

[野村AM]2023年4月〜6月の株主総会における議決権行使結果について

○大和アセットマネジメント

3号議案に関しては、11名中3名に対して反対行使をしています。
一方7号議案に関しては、9名中3名に対して賛成行使をしています。

賛否判断の基本的な考え方は、「中長期的な企業価値の向上または少数株主利益の保護の観点から、適当と判断する場合に賛成行使をする」というものであり、今回の株主総会では、双方の提案内容を総合的に考慮し、どのような取締役会メンバーなら、東洋建設の中長期的な企業価値の向上に資するのかを検討し、議決権行使の判断を下したと思われます。

【出典】議決権行使結果の個別内容

[大和AM]2023年6月株主総会の議決権行使結果について
[大和AM]議決権の行使に関する方針(国内株式)
[大和AM]議決権行使結果の個別内容

○日興アセットマネジメント

3号議案に関しては、11名中5名に対して反対行使をしています。
一方7号議案に関しては、9名中9名に対して賛成行使をしています。

日興AMは、株主提案候補者の選任を通じて取締役会の活性化、透明性・公正性の強化が期待できると判断しており、会社提案の社内取締役候補者と株主提案の候補者に賛成行使をしています。

【出典】2023年6月日本株議決権行使結果の個別開示

[日興AM]国内株式議決権行使基準
・[日興AM]2023年6月日本株議決権行使結果の個別開示↓

○三菱UFJアセットマネジメント(旧:三菱UFJ国際投信)

3号議案に関しては、11名中6名に対して反対しています。
一方7号議案に関しては、9名中9名に対して賛成しています。

三菱UFJアセットマネジメントは双方の提案の内容を踏まえて、どのような取締役会なら以下の内容を実現出来るのかを検討し、行使判断を下したと思われます。

・当該取締役が選任されることでガバナンスが改善される
・候補者のスキルが洋上風力発電を成長分野と位置付ける東洋建設の今後の戦略検討に資する
・今後の東洋建設の企業価値向上に資する

【出典】2023年4月-6月個別議案行使結果

[三菱UFJ AM]スチュワードシップ活動
[三菱UFJ AM]議決権行使の方針
・[三菱UFJ AM]2023年4月-6月個別議案行使結果↓

○アセットマネジメントOne

3号議案に関しては、11名中8名に対して反対行使をしています。
一方7号議案に関しては、9名中9名に対して賛成行使をしています。

以下の画像が、各議案の判断理由です。

【出典】2023年4月-6月総会 議決権行使指図結果

判断理由を見るに、各々の取締役が企業価値向上に資するかどうかを総合的に検討し、行使判断を下したようです。

アセットマネジメントOneの議決権行使基準(以下の画像)を見てみると、株主提案に対しては、基本的に中長期的な株主価値向上の観点から個別に判断を行うとされており、株主提案について検討し、それが株主価値向上に資するならば比較的積極的に賛成をする姿勢があるように感じます。

というのも、株主提案への行使基準に関して、多くの機関投資家は賛成する条件を列挙していますが、同社は反対する条件を列挙しており、他の機関投資家とは異なる雰囲気が見受けられます。

【出典】2023年4月-6月総会 議決権行使指図結果
株主提案に対して反対する条件
【出典】国内株式の議決権行使に関するガイドラインおよび議案判断基準

[AM One]国内株式の議決権行使に関するガイドラインおよび議案判断基準
[AM One]2023年4月-6月総会 議決権行使指図結果

○三井住友DSアセットマネジメント

こちらは、全ての会社提案に対して賛成、全ての株主提案に対して反対しています。

個別の理由については、以下の「特に説明を要する議案について」という資料のスライドで説明されていますが、会社側の成長戦略を評価し行使判断を下したようです。

【出典】2023年4-6月総会の議決権行使結果
【出典】2023年4月-6月「特に説明を要する議案について」

[三井住友DS AM]議決権行使判断基準
[三井住友DS AM]2023年4-6月総会の議決権行使結果
[三井住友DS AM]2023年4月-6月「特に説明を要する議案について」

○三井住友トラスト・アセットマネジメント

3号議案全てに賛成行使、7号議案全てに反対行使をしています。
こちらは行使判断の理由が特に記載されていませんでしたが、議決権行使基準を基に行使判断をしたと思われます。

取締役の選任と株主提案に関する議決権行使基準は、以下の通りです。

【出典】責任ある機関投資家としての議決権行使(国内株式)の考え方
【出典】責任ある機関投資家としての議決権行使(国内株式)の考え方

おそらくですが
3号議案に関しては、
「②取締役の選任」に関する行使の原則に該当しないと判断し賛成行使をしたと思われます。

7号議案に関しては以下のいずれかに該当すると判断し、反対行使をしたのだと思われます。
当該企業の経営方針ならびに施策と整合性を持たない
特定の社会的、政治的問題の解決を目的としている
提案理由に合理性が認められない
具体的な業務執行にかかわる定款変更

[三井住友トラストAM]責任ある機関投資家としての議決権行使(国内株式)の考え方
[三井住友トラストAM]2023年4月~6月株主総会における議決権行使結果状況(国内株式)

○BlackRock

こちらは、3号議案全てに賛成行使、7号議案に関しては松木和道氏に対しては賛成行使をしたもののその他は全て反対行使をしています。

株主提案については、株主提案が一般の株主価値へ貢献するか否かが大きな判断基準になっており、
取締役選任議案の候補者である松木和道氏は、上場企業の法務・コンプライアンスへの知見や、ガバナンスに関する豊富な経験が、東洋建設のガバナンスの向上に寄与し、株主価値向上に資すると判断され、賛成行使をしたのだと思われます。

【出典】議案別議決権行使状況(国内株式)

また、議決権行使基準から、取締役選任に関する議案について、会社提案は以下の条件を満たさなかったため、賛成行使をしたのだと思われます。

【出典】議決権行使に関するガイドライン (日本株式)

[BlackRock]議決権行使に関するガイドライン (日本株式)
[BlackRock]議案別議決権行使状況(国内株式)

○ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント

こちらは、3号議案のうち、取締役選任候補者の大林東壽氏のみに反対行使し、7号議案は全てに反対行使をしています。

3号議案の大林東壽氏に反対行使をした理由は、取締役会の構成に関する議決権行使基準の多様性要件を満たしていないためのようです。

また、7号議案については、株主利益の向上に資すると判断されないため全議案に対し反対行使をしています。

【出典】議決権行使結果の個別開示

ここでは、同社の詳細な議決権行使基準については割愛しますが、
取締役に関連する議決権行使の判断基準が比較的細かく開示されているので、ご興味のある方は以下のリンクよりご確認下さい。

[GS AM]議決権行使に関する方針、手続き及びガイドライン 日本株式向け基準
[GS AM]議決権行使結果の個別開示

○ニッセイアセットマネジメント

こちらは、3号議案全てに賛成行使7号議案全てに反対行使をしています。

3号議案に対しては、同社の議決権行使基準に基づき賛成行使をしているようです。
一方7号議案に対しては企業価値の維持・向上に資するとは必ずしも判断できないとのことで反対行使をしております。

【出典】個別の投資先企業・議案ごとの議決権の行使結果

[ニッセイAM]国内株式議決権行使の方針と判断基準
[ニッセイAM]個別の投資先企業・議案ごとの議決権の行使結果

■おわりに

少々長くなってしまいましたが、
ここまで読んでくださりありがとうございます。

今回は2023年6月の東洋建設の定時株主総会で提出された議案の内、3号議案と7号議案に対する各機関投資家の議決権行使結果とその行使理由についてまとめました。

もし他の議案に対する行使結果や行使理由等について気になる方は、この記事に添付した資料、URLなどからご確認いただけますと幸いです。

それではまたお会いしましょう。


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