ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー

山田詠美の『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』を久しぶりに読んだ。この本を初めて読んだのは高校生の時だった。読書というものを意識してするようになり、夏の100冊とかのフェアに入っていたのをきっかけに『ぼくは勉強ができない』を読んだのが確か山田詠美作品との出会い。その中でも『ぼくは勉強ができない』とか『蝶々の纏足・風葬の教室』みたいな10代の子が描写されている話が無性に好きで、山田詠美の作品を読み漁った時に読んだうちの1冊。初期の作品に向かうにつれて恋愛の描写が生々しくて、性描写も過激(に思えた)だし黒人との恋愛小説だったりと私の知らない世界にドキドキした。親にこういうの読んでるって知られたら怒られそうだなとか思っていた。


今改めて読んでみると誰かに恋をして、愛し合ってそしてその関係が続いたり終わりになったりという恋愛の過程における感情って日本人だから黒人だからって違うわけではないのだなと当たり前の事なんだけど感じた。昔はこんなに激しいと思えるくらいの感情をさらけ出したりするのって外国の人だからなのではと思っていたけどそうでもない気がする。それこそ国とかではなく人によるんだなと。異国の知らない世界に思えた恋愛の描写は誰だって経験するかもしれないのだと気付いた。誰かを好きになって、でも積極的に行けないから見かけてもただただ見つめるだけだったり、好きだからこそ他の異性の存在を感じると嫉妬やら色んな渦巻く感情で手が出てしまったり、好きだけど、だからこそ相手の事を思って別れを告げたり、この小説で描かれる男女の恋愛やそれにまつわる気持ちの動きは自分たちにもあり得る、もしくは経験した事のある感情たちだった。


読書の楽しみって再読した時に、最初に読んだ時には分からなかった感情に気付く事なのかもしれない。自分の中の変化にも気付ける。成長していたり変わっていないなあって部分も色々ある。一生で読める本の数には限りがあるからあんまり再読しないで常に新しい読んだ事のない作品を読みたいと思っているんだけど、こういう感想の変化に気付く楽しさもあるんだなと思った。そして自分が幾つになっても山田詠美の作品に出てくる恋愛描写に自分にはない世界をのぞくような、憧れるような気持ちを感じる。

 #電本フェス2021秋読書

 #ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー

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