Age of Z Alternative プロローグ

※作品内の情報は全て私自身の見解に基づいており、Age of Originsの公式見解ではないことに注意して下さい。


  2045年、シンギュラリティにより自我を持つAIが生まれ、それが各国に広がっていった。人類はそれによって更に繁栄を極めるように見えた。人類が新しいステージに入り、全てのものは自動化されていった。多くの人々は労働から開放され、AIより生み出される富が為政者により分配されるようになった。

 だが、それも長くは続かなかった。我々が『Z day』と呼んでいるあの日、世界は全ては一度破壊された。
 2068年の初頭、小惑星アポフィスが突如として軌道を変えて地球への衝突ルートを取り出したのだ。エジプト神話より名付けられた、死の神を冠したこの小惑星はまさに死をもたらした。直径300mの隕石は地球の大気圏突入直後に爆散、数多の破片を世界各地に降らせた。
 この破片こそが後に【高エネルギー鉱石】となる存在だ。だが、もっと厄介なものをこの小惑星は持ってきた。
 忌まわしい【Z ウイルス】だ。地球の文明はこのウイルスにより壊滅の危機となった。ここから後の話は多くの司令官には話が不要であろう。


 日本は隕石により、当初はさほど大きな被害を受けなかった。しかし、隕石によって怪我をした人間達が漏れなくゾンビ化していったことにより状況は急変。ゾンビ化した暴徒は戦略的防備を整えていない日本を大混乱に陥れた。当初は秋葉原は組織的に防衛されていたが、新宿の歌舞伎町より来た凶悪な『Yakuza ゾンビ』の集団により陥落。

 元々の紛争地帯であった町田市と、神奈川県の相模原市も、手を取り合ってゾンビから身を守っていたが1ヶ月持たずに陥落。これにより東京から1000万体を超えるゾンビが溢れ出し、日本はほぼ壊滅した。
 政府機能が東京に集中していたため、国家レベルの反抗はできずに各都市でそれぞれが壁を作って守ったが、いくつかの成功例を除き壊滅したことは世界中の他の国と多くは変わらない。アメリカですらそうであった。


 秋葉原より来た『血の蛾』は秋葉原の大破壊を生き残った最後の一人のアキバ系アイドルだ。彼女は大きなチェーンソーと、鎖で厳重に封じられた棺を持って我々の都市にやってきた。壊滅した日本が最後に出した避難船に乗って我々の都市にやってきた、歴戦の兵(つわもの)だ。彼女単身でゾンビの群れを引き裂いてきたのである。
 彼女は我々の都市によって受け入れられた。優秀な戦士はいくらでも欲しいのだ。しかし、彼女の持ってきた棺は何だろうか? 私は彼女に訪ねてみた。

「これは私の友達よ。あの隕石が落ちてきた時に直撃したの。でもゾンビ化もせずに死にもしなかったから……見捨てることもできなくて」

 なるほど。この棺は生化学研究所で預かるほうがいいだろう。彼女にそう伝え、ひとまずは休んでもらうことにした。すでに生化学研究所では『ルーシー』がゾンビから人類に復帰しようとし、ここ最近は『サヤ』の治療に取り掛かったところである。我々には希望が増えた。隕石繋がりであれば『私達の偉大な博士』も大喜びで調べたがるであろう。


 手術室に運ばれた彼女を見て、ブラウン博士はこう言った。
「これは興味深い、高エネルギー鉱石が彼女を生かしている。色々調べてみたいね」

 彼はこれまで2人の治療を行っている。不安は多少……いや、かなりあるがここは任せておこう。
 これまでのようによい結果を出してくれるだろう。

 手術は17時間に渡って行われた。これで彼女の意識が戻ればいいのだが。


ーーーこれはその彼女が紡ぐ物語だ。その始まりをここに記す。
 『ある都市の指揮官の手記』より

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