串揚げ屋 政談
時々寄る串カツの店の大将は お喋りしていたある時 戦前の同じ年生まれとわかった。
「今年はじめてやねえ、今年もよろしく」
「こちらこそ。今年もまたちょくちょく寄らせてもらいますわ」
「ところでお客さん、ちょっと太ったんちゃう」
「正月で日本酒飲みすぎてちょっと」
「いや、ちょっとやなしにかなりみたいやけど」
「そういう大将も顔円うなってるよ」
「いや、腹がよう減るんですわ、最近。ほんまメタボ腹やなあ」
と言いながら下腹を上へ持ち上げる。
「それにしても福田さんも何がしたいんか、
ようわかりませんなあ、前の安倍さんもそうやったけど。
ああいう人らを首相にするいうんは、お客さん、わたしらの年代の責任やねえ」
「いや私もそう思うわ。向こうだけがあかんのとちごて、うちらもそんなの関係ネエ!とは言えんよな」
「中曽根さんの頃までは、これがしたい、こっちの方向に持っていきたいとか、エエワルイは別として首相の考えがわかりましたわな、
今の日本はどっちゃ向いていくんか、皆目見えませんがな。若い連中ばっか責めてもアカン、わしらの世代がよう考えなあかん」
「そやけどなんででっしゃろな、日本こないにぬるなったんわ」
ハイ、お待ち、玉葱2本、レンコン2本、白身魚やったね、ソースはかけるほうでしたな。白身はタルタルソースでどうぞ」
「そら大将、63年の間 政権政党が変わらんから、それで既得権益持っている連中が徒党組んで新しいメンバー入れささんように頑張ってはるからちゃう?
官製談合やら民間会社の談合てマスコミは大騒ぎしてるけど、日本で一番大きいて最悪の談合は[政党の候補者相乗り]や。
1人の市長候補が自公民の全部から推薦を受けるなんて、市民の選択権を取り上げる最たる談合やと思わへん?
神戸市かて63年間市長自体がみんな助役ちゅう神戸市の職員上がりや。歴代の市長さんはみな自公民の推薦受けて当選してはるわ。
勿論神戸市の職員さん方の応援を受けてな。市民より職員組合の処遇を第一にして、市会議員さんとは仲良くやって強面の古手議員の横車を通して上げてたら安泰や」
「そういえばJR長田駅前エリアの再開発で市が幽霊ビル20何棟作って7%しか借り手がないそうや。民間会社やったらとっくに倒産ですわな。」
「そらお役所は別の発想やと思うよ。選挙を応援してくれた地元大手企業さんに再開発計画の長期大型工事を作って上げたんやから、市長はお役に立ったと胸張ってると思うよ」
「ところでお客さん、わしらの若いころは役所勤めは民より給料やすうて、行くやつもそうおらんかった。
いつの間にやら年金やら含めてええ身分になっとうなあ。うかつなことに今までそんなんもあんまり見てなかったわ。
○駅ビルの一階にあるこの串揚げ屋の大将は、40代くらいまで大手運送会社で長距離トラックの運転手をやっていたらしい。
鳥取と兵庫県境の戸倉峠を雪のシーズンに走らないといけないしんどさを聞いた事がある。(今は新戸倉トンネルが出来て峠越えはしなくともすむ)
これまでの何回かの話の感じでは組合の幹部もしていたようで、会社労務との裏の裏のやりとりが嫌になったかかで辞めたような気配がある。
笑顔はたやさないが時々見せる目つきに、修羅場を度胸で渡る世界を歩いたことがある人に特有の表情が出る。
「こないだから、あのコロンビア大学出のあのひと、しばらく顔見せませんで、また入院しとうみたいやな」
「病院入って、アルコール抜いて、また飲みたおしての一年をやってるらしい。うち来てるお客さんでエート1人、2人・・5人はおりまっせ、
そういうアル中のお客さんが。みんな手の指が震えるんですな」
「イヤ僕もコップ酒のとき、ついでもろたカウンターからコップ持ってきしな、震えてこぼすようになったら酒控えなアカンとおもてます。
いまのとこホレ見ての通り大丈夫やけど」
「アル中も重度になると国が治療費だすんやてね。税金で入院して退院したらまた好きに飲んでるちゅうのはどないやろ」
「羨ましいような、なりたくないような、やなあ」
「ほな今日はこれでご馳走さん、勘定して」
「ありがとう、次はちいっとアゴの肉落としてきてな」
「ご互いさまや!!」
2008年1月15日記
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