初めての網膜剥離(2)入院〜手術前生活

入院したのは午前9時。案内された部屋はすでに二人の患者さんがおられました。とはいえ直接的にご挨拶をできる雰囲気ではなく(カーテンも閉まってるし何やらもめてる声もしたし)早々にパジャマに着替えて母と診察室へ手術の内容について再説明。フランクな笑顔で先生と看護士さんに迎えられ、衝撃のひとこと。

「実はね、網膜2カ所破れててね。今回大きく剥がれたのは前々からある上の方じゃなくて、外側の方。それで鼻側が大きく欠けて見えるのね」

母も私も「へぇ〜(・・)」という顔。

眼球の模型を使って位置を説明してくれました。「当然2カ所以外にも剥がれそうな部分があれば同時に処置します」と。

「手術は局所麻酔で行うので声も聞こえるし手足も動かせます。こめかみの所とまぶたの下3カ所に打ちますね…これが少し痛いかなぁ。まあ大丈夫よ(え?)そしたらその後に眼球に3カ所から器具を入れて処置していきますね」と眼球模型をパカッと開いて、「網膜をくっつける処置をして、閉じる際に同時に水晶体をとってしまって人工レンズをはめ込む手術もしますよ」と。で、人工レンズの説明として、また模型からレンズ部分を取り出してみせて、

「このレンズはピントが一カ所にしか合わないので、右眼の視力に合わせるように調整するんですが、どうしても見え方は変わってきます。老眼っぽくなるかな。それはだんだん慣れてくるけれど、最初のうちは大きく見えたり、小さく見えたり、歪んだりします。こればかりは仕方がないのでね。」

さらに「それでどうしても片目で見ちゃいそうになるんですよね。でもね、慣れるためには必ず両目で見るようにがんばってください。慣れるまでは大変だけど、その方が治りも早いから」

結構コレが衝撃でした。見え方元通りに治るんじゃないんだ!?と。大きく見えたり小さく見えたりってどういうこと!?診察時は平静を装っていたけれど内心ドキドキで早く部屋戻ってググりたいと思ったほど。

「網膜剥離という病気は昔は治りにくいと言われていた病気だけど、今は手術をすれば8割9割は治る病気です。そして病気の治り方はこの病気に関しては患者さんの努力次第です。手術後3日間はとくにうつむきの状態を守ってもらうことになります。」

「これがね〜、きついんですよね〜、ハッハッハ(笑)」

笑顔で酷なことをおっしゃる先生(笑)この時はあまりその意味をちゃんと考えていなかった私。

「手術後は4日後。前日には感染予防のための目薬が一日かけてあるから、それまでは何してもいいよ〜(^^)散歩とか読書とか」

解放されて初めての入院食はざるうどんでした。これがかなり多くて。母(調理師)も驚く量。さすがにここ数日不摂生だし暑いし食欲もないしなんたって緊張してるしでだいぶ残しました。配膳してくださる方々に申し訳ないと思いつつお膳を下げに廊下へ行ってみると、私以上にいっぱい残ってるお膳がたくさん。そっか、無理に食べなくていいんだ、と思い直しました。

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新型コロナの影響で全面的に面会禁止、面会できるのは病院から許可を得た家族のみということで、母には12日間のうち入院日、手術日とその4日後と退院日に来てもらいました。会うのは談話室。病室には入院初日と手術日のみしか入れませんでした。もちろんマスク着用。

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母が帰った後、ひととおりググり、考えたところでどうしようもないと落ち着き、身体を動かしたくて病棟内をうろうろ。看護士さんも「あちこち探検してもいいよ〜、ただし外来がある階以外ね。」と言ってくれたので、患者図書室へ行ってみることに。

患者図書室は寄付された漫画や小説や雑誌やそれはもう好きな古本屋さんのような香しい場所(褒めてます)。産科病棟をつなぐ渡り廊下の一角、ベビーベッドや器具などの置き場になっている所で、業者さんや患者さんがまばらに行き交うものの基本的には無人。夏とはいえ冷房が効いているので太陽の日差しもちょうどいいくらいでしばらくそこで過ごしていました。本はマニアックなものが多かった。

ここの場所ならではの光景もありました。

若い男性が足早に通りすぎ、しばらくして奥さんと仲睦まじく歩いて行く姿、たくさんの荷物を持った老夫婦、優しい面立ちで小さな男の子を真ん中にして手をつなぐ家族、赤ちゃんの元気な泣き声、器具のメンテに来た若い作業員を指導しているベテランの技師さん、打ち合わせしながら歩く看護士さんたち

もちろん病院なのでそれぞれ大変な思いを抱えてそこにいるのですが(自分も含め)とても優しい気持ちが溢れる場所だったことは覚えています。

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手術までの日常は、朝6時起床、すぐに体温計られて朝食までうとうとして、朝食食べたら図書室行って読み切れなかった本をかりてきて昼食食べて、また体温計られて音楽聴きながらベッドで読書。疲れたら寝たり、散歩したり、同室で仲良くなった患者さんとお話したり、時間が来たら入浴してご飯。終わったら体温計って消灯時間が21時。

当然寝れないんですよね。そんな早い時間。しかも1時間に一回看護士さんが見回りでライトを照らしてくるので浅い眠りだとすぐ起きちゃう。あきらめて何度か睡眠薬をもらいました。結果、爆睡。昼間に動きすぎて頭痛を起こしてしばらく動けなかった時もありました。

その頃の左眼はだいたい半分くらいが見えなくなっていました。でも不安は特に感じませんでした。同室の患者さんとのおしゃべりや、社長からのSOS電話や、SNS等があったからだと思います。

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手術前日は朝から目薬投与がありました。感染予防のため。自分で差そうとしましたが、看護士さんにやってもらう日々が退院日まで続きます。

で、いよいよ手術日。


(3)へ続く






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