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連結決算の一連作業②

本記事は、2021年6月9日にSuperstream様の『管理部の実務課題解決コラム』へ寄稿したものを、一部修正した上で再掲載しております。

連結決算の一連作業(その2)


(1) はじめに

株式会社アクリア、コンサルタントの成田です。

前回から引き続き「連結決算の一連作業」について取り上げていきます。
連結決算の一連作業は、大まかなステップとして、

 ① 事前準備
 ② 連結パッケージ入手時の作業
 ③ 連結仕訳の入力
 ④ 事後検証

があり、今回は②連結パッケージ入手時の作業、③連結仕訳の入力、次回は④事後検証を説明します。

(2) 連結パッケージ入手時の作業

子会社から提出された連結パッケージ(連結決算を行うためのデータ収集用のフォーマット)は、手作業により作成されることもありますので、必ずしも完璧に入力されているとは限りません。このため、提出された連結パッケージは、連結決算担当者による確認作業(=レビュー)を行います。

具体的なレビューの方法としては、例えば下記のようなものがあります。

① 連結パッケージの入力漏れチェック

前回のコラム(「連結決算の一連作業(その1)」)にも記載しましたが、連結パッケージは、「個別財務諸表」「相手先別の取引明細」「勘定科目ごとの増減明細」など複数あることが多いです。
このため、親会社及び子会社の単体決算担当者が、すべての連結パッケージに必要十分な情報を入力出来ずに、不完全な連結パッケージを提出してくる可能性があります。

そこで、連結パッケージへの入力漏れを防止するため、親会社の経理担当者は「単体決算担当者から提出された連結パッケージに、必要十分な情報が記載されているかどうか」の確認を行います。

② 連結パッケージ間の整合性チェック

連結パッケージの入力誤りの例として、以下のようなものがあります。

☑「個別財務諸表」と「勘定科目ごとの増減明細」との間で整合性が取れていない
(個別財務諸表と増減明細の期末残高が一致していない。個別財務諸表には存在しない科目が増減明細上に存在する。等)
☑「個別財務諸表」と「相手先別の取引明細」との間で整合性が取れていない
(相手先別の売上高を集計すると、個別財務諸表の売上高の金額を超えている。個別財務諸表には存在しない科目が相手先別の取引明細上に存在する。等)

これらの誤りを防止するために「連結パッケージ間の整合性を確認し、各連結パッケージが適切にリンクしているかどうか」の確認を行います。

③ 入力内容の推移分析

連結パッケージに入力された財務数値については、全体を俯瞰して眺めることで、入力漏れや入力誤りを防止出来ることがあります。

具体的な方法としては、個別財務諸表を四半期毎(又は月次毎)に財務数値を並べ、推移分析を行います。
これにより、著増減の有無を把握(いわゆる”あたりを付ける”と言われるもの)し、その増減が不自然なものであれば、単体決算担当者に内容の問い合わせを行います。

この問い合わせの結果、「○○という大型の取引によるものです。」という合理的な回答もありますが、「連結パッケージの入力を間違っていました・・・。」というケースも少なくありません。

なお、推移分析については、単に数値の推移を追うことだけでも入力漏れや入力誤りを防止する効果はありますが、会社ごとに「ビジネスモデル」や「予算」、「当期に行われた特殊な取引」等を念頭に置きながら財務数値をレビューするとより一層効果があると思います。

(3) 連結仕訳の入力

連結仕訳については、様々な仕訳がありますが、最もポピュラーな「資本連結(投資と資本の相殺消去)」「内部取引消去」「未実現損益の消去」について説明します。

① 資本連結(投資と資本の相殺消去)

新規に子会社を取得した場合や、他の会社に子会社を売却した場合等組織再編を行った際は、投資と資本の相殺消去を行ったり、個別上の株式売買取引から連結上の株式売買取引への調整処理を行ったりします。
これを資本連結と言います。資本連結の処理を行う際は、契約書等のエビデンスを入手し、取引内容(取引金額、売買等された株数、取引が行われた会社)を正確に把握し、該当する会計基準を確認してから連結仕訳を起票します。

なお、複雑なものに関しては適宜監査法人にも相談するとよろしいかと思います。

② 内部取引消去

連結会社間の取引については、連結上は相殺消去します。これを内部取引消去といいます。

実務としては「相手先別の取引明細」上の情報を利用して、内部取引消去を行います。
すべての連結会社が「相手先別の取引明細」を正確に入力している場合は、各連結会社が主張する取引金額は一致しますので、容易に内部取引の相殺消去を行えると思います。

しかしながら、実務では、連結パッケージの入力誤り等により取引金額が一致しないこと(これを不突合と言ったりします。)の方が多いです。
この場合、各連結会社に問い合わせを行い、この不突合の原因を調査します。

私の経験上、この不突合の要因は主に2つあります。
一つは「相手先別の取引明細」の入力誤りです。
この場合の対処としては、担当者に「相手先別の取引明細」を修正してもらうことになります。

そしてもう一つは、「片方の会社で、そもそも取引が認識されていない(単体で起票されていない)」というものです。
この場合の対処としては、担当者に当該取引に関する起票をしてもらう、または、連結仕訳で修正することになります。
この点、単体で修正するか、連結で修正するかの判断については、取引ごとに検討することになりますが、適宜監査法人に相談するとよろしいかと思います。

この内部取引消去は、連結会社の数が多ければ多いほど、不突合の件数が多くなります。
この点すべての不突合を解消するのは煩雑ですので、重要性を鑑みて不突合を解消しないこともあります。
この場合、収益と費用、債権と債務、親会社報告金額と子会社報告金額のいずれの金額を「正」とするか、不突合金額をどの勘定科目で処理するかをあらかじめ決めておくこととが肝要となります。

③ 未実現損益内部取引消去

未実現損益の消去については、購買会社の期末在庫の金額、販売会社の利益率を把握して、連結仕訳を行います。

利益率については、より詳細に「商品種類ごとの利益率」を利用する、ざっくりと「販売会社の売上総利益率」を利用する等様々な方法がありますが、これは重要性を鑑みて判断することになります。

注意点としては、連結担当者が把握した販売会社の利益率(特に商品種類ごとの利益率)については、うっかり購買会社にお伝えにならないようご留意ください。

(4) まとめ

「連結パッケージのレビュー」や「連結仕訳入力のための入念な準備や検討」は、実際のところ相当数の時間や労力を使います。

しかしながら、これを怠ると、連結精算表が作成した後に、経理部上長・監査役・監査法人等からの指摘により、何度も何度も連結精算表のアップデートを行うことが必要となる可能性もあり、ひいては「連結パッケージのレビュー」や「連結仕訳入力のための入念な準備や検討」の比にならないぐらい時間や労力を使うことになります。

特に「連結パッケージのレビュー」については、連結決算作業の早期化に非常に効果的だと考えておりますので、是非実務で実践していただけますと幸甚です。

次回は、④事後検証を説明します。


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