見出し画像

月次決算について留意すべきポイント

本記事は、2021年2月9日にSuperstream様の『管理部の実務課題解決コラム』へ寄稿したものを、一部修正した上で再掲載しております。

月次決算について留意すべきポイント


(1) はじめに

株式会社アクリア、コンサルタントの大熊です

今回は、「月次決算について留意すべきポイント」について取り上げていきたいと思います。

(2) 月次決算の目的

年次決算や四半期決算は法定開示が求められているのに対して、月次決算は開示が求められておりません。

そのため、月次決算を行ったとしても、外部に情報を提供する法的な義務はなく、予算実績差異分析を実施し当初予算の修正や経営戦略の修正等が必要ないかを確認したり、将来予測の精度を高め意思決定の根拠とするなど主に経営管理に用いられます。

したがって、月次決算は経営判断に有用な情報を、タイムリーに提供することが大きな目的であるといえます。

(3) 月次決算の作業スケジュール

業務フローにより各社違いはありますが、経費等の申請は第2営業日から第3営業日辺りで締め、第5営業日から第8営業日辺りで月次決算を締める会社が一般的といえます。

前述したとおり月次決算は経営陣に対するタイムリーな情報提供が主目的であるため、正確性のみならず適時性を重視して短期間で実施可能な方法を模索し業務フローを設計することになります。

(4) 月次決算の作業内容

i. 棚卸資産の評価

棚卸資産の評価については、その重要性に応じて実施を検討する価値があります。

期末棚卸資産残高は、その性質上、一般的に内部資料のみで、残高が完結するため、適切な管理が必要になります。
単に残高を把握するだけではなく、陳腐化等を把握する仕組みを構築して、評価損を取り込むことができれば、正確な月次決算ということだけなく、棚卸資産の管理にも役立つことになります。棚卸資産管理が経営上重要である場合には特に意思決定情報としても月次決算に取り入れることが有用であると考えられます。

ii. 連結決算/セグメント会計

連結決算/セグメント会計につきましては、多くの場合は実施に当たり工数が嵩むことが想定されるため、その必要性及びどの程度までの正確性を求めるかといった費用対効果の観点において慎重に判断した方が良いものの、グループ間取引が活発であり単体決算の合算のみではグループ全体の経営状況が適切に判断できない場合、セグメントが会社毎には単純に区切れずセグメント集計を実施しないとセグメント毎の経営状況が正確に把握できない場合等には、経営管理上重要な決算作業となることが想定されます。

経営陣に対するタイムリーな情報提供という月次決算の主目的を鑑みると、グループ全体の実態を反映する連結会計や、意思決定単位としての各セグメント情報は有用であると考えられます。

一方、月次決算で当該情報を提供するには多くの内部コストが発生しますのでどの程度まで正確に実施するか/省力化できる箇所がないかといった検討や業務フロー及びシステムの見直しは必要ないか等、目的に照らして適切な設計ができるかが重要となります。

iii. その他

上記以外においても、年次決算や四半期決算などでは、減損会計や税効果会計、退職給付会計などの適用が求められます。

月次決算においては、すべてを実施する必要は無く、使える時間と効果を勘案して月次決算の設計を行うことがポイントとなります。
時間や資源の制約上、簡便的な方法を採用する場合もありますが、年次決算の手続を踏まえて月次決算を積み重ねた結果と年次決算での結果に大差が出ないよう、注意する必要があります。

バックテストを実施して、簡便的な方法の妥当性を事前に検証する、例えば月次3か月分を合算したときに概ね四半期の金額になっているかを検証する方法等が考えられます。

(5) 月次決算の早期化

タイムリーな情報提供が求められる月次決算においてはスケジュールの厳守、また月次決算確定の早期化が課題になることもあります。

月次決算早期化に必要な要素として、早期に金額確定できるよう取引先連携や事前ルール設定等の整備をしておくこと、また月初に入る前に各種準備ができるよう業務フローを構築し効率化のためデータ加工を進めるなど月次決算に対する事前準備を実施することが挙げられます。
例えば、人事システムと会計システムが連携していない場合では、人事システムからのデータをエクセルで抽出し加工の上、仕訳を取り込むといった作業が想定されます。この際に加工の方法を整理し、毎月使用できるファイルを事前準備として用意することができれば、効率化につながります。

また、リモート作業との兼ね合いでも、システムの変更も検討材料に挙げられます。
硬直的な運用しかできないシステムを、柔軟なものに変更することができれば、自社の業務フローとシステムを合わせることにより効率化に繋げることが可能です。エクセルでの自動取込や、様々な情報を仕訳データに持たせるなど、次月以降の作業が少しでも効率的に進むよう改善を実施することが重要となります。
月次決算は年12回も実施する作業になりますので、細かな改善の積み重ねが業務効率化につながり大きな差になります。

月次決算の設計/早期化といっても対応範囲が広く細かい点にも拘り続ければ終わりのない改善作業となります。
また、将来的なビジネスの変化、人事異動等を原因として業務フローや担当社員が変更されることも想定して設計する必要もあります。
業務フローを可視化しボトルネックとなっていて改善効果が大きい作業から着手する、将来の設計変更時に耐えうる仕組みやノウハウ共有の仕組みを構築する点において、経験豊富な外部の会計コンサルタントを活用することが望ましい場合も多いと考えます。

株式会社アクリアでは、手を動かすコンサルティングとして、決算早期化を実現するための現状分析/影響度調査/改善計画立案・実行/継続的な運用体制の構築/クライアント様と同時運用による引継の実施等により、失敗のできない決算作業を確実に実行しつつ、業務改善や決算早期化を費用対効果が大きい論点から進めることが可能です。
開示でミスが出ている、連結決算の締めが遅いといった原因の根本が個別決算の精度が悪い子会社が存在したり、月次決算の早期化/効率化/正確性担保に課題があるケースもありますので、そういった課題を認識されている場合には一度ご相談くださいませ。


Vision 意志ある人が輝く社会に

Recruit チームでやればもっとおもしろい


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?