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春から社会人アスリートになる皆さんへ

 ようこそ、この終わりのない深淵の世界へ。 少し前からこの世界に飛び込んだ一人として、仲間が増えることが大変嬉しく思います。 私やチームメイトが経験してきたことを少しシェアさせて頂き、何かの役に立てばと思います。


深淵の世界へようこそ。

①生活環境を整える。

 まず皆さんが4/1になり、やるべきことは生活環境を整えることです。たとえ慣れ親しんだ土地で新生活をスタートさせようと、新生活でのストレスはどんな環境でも絶対に起きます。
 学生とは異なり、対価を頂いている以上、まずは対価に見合う人間に、戦力になることが何よりも優先すべき事項です。そのためにも、生活環境を整え業務に向かって下さい。
 あなたが人生を賭けて取り組んできた競技は、簡単に理解されるものではありません。わざわざ休日に、仕事終わりにスポーツをして疲れる意味が周囲には理解されません。社内にはスポーツ経験をしている同期や先輩もいるかと思いますが、社会人にまでやる程のツワモノはそうそういません。過去を美化するのではなく、今も戦う戦士はレアな存在です。
 社会が理解し難い存在であっても、社会人でも競技継続する意思があるあなたを私はリスペクトします。あなたのことを理解してくれる人は、周囲にいなくともSNS界隈にはいるはずです。そして、仲間を見つけることも可能です。身近な環境で理解されないことに憤ってはいけません。我々は狂気の中にいます。これを自覚するだけでもだいぶ違います。
 また、社会人となり必要なコミュニケーションは可能な限り取ることをお勧めします。狂気を理解されないものと決めつけ、不用意に隔たりを作ってはいけません。理解されなくとも、あなたの真摯な仕事ぶりや競技に対する姿勢を見ていたら心を許してくれる時が来ます。そのためのコミュニケーションは怠らないことが大事です。
 遠征や合宿など競技を優先したい時に、業務に穴を開けてしまうことが発生します。その時に、快く送り出してもらえる環境をまず作ることが、この終わりのない戦いに挑む上で最も大事なことだと思います。

②”運動”を継続する意識に。

 社会人になっても競技を続ける意思を持っているあなたは十分に冬期練習を積んできたことでしょう。卒業旅行にもシューズとスパイクを忍ばせ、練習場所を探していたことでしょう。なんなら卒業旅行が合宿となった人もいるでしょう。私もそうでした。
 このようなタイプは学生時代の貯筋を失わないように、練習時間の確保に躍起になると思います。しかし、それは悪手です。神経性のストレスは、初期段階は根性でなんとかなりますが、徐々に体を蝕みあなたの感覚を鈍化させ、更なるストレスを生み出します。学生時代のことは学生時代のこととして割り切って考え、新しい環境で0からスタートするんだと気持ちの方が楽です。頑張ってきたことを無碍にするのではなく、固執しないようにした方が精神衛生上は健全です。 
 とはいうものの思うように動けないことがストレスであるというのもわかります。私も運動依存症という診断を受けたことがありますので。 ですが、学生と同じ練習はできません。まずは週に数回、体を動かす習慣を作ることをお勧めします。15分でもいいです。
 15分あればやれることがあります。2-3kmのジョグはスプリンターでもできます。 100m程度の坂道であれば5−6本は走れます。また、100m-200mの距離をショートリカバリーで繋げば5〜10本くらい走ることもできます。補強だって補強も数種目できます。全部をやろうとしたら身が持ちません。まずは、ほんの少し運動を継続することであなたの精神の健康は保たれます。W-upも含めて15分で行うトレーニングを考えるのも意外と楽しいです。
 学生時代のトレーニングは足し算とすると社会人のトレーニングは引き算です。この引き算はセンスが必要です。あなたを構成する一番のインパクトのあるトレーニングはなんだったのか。自分自身に向き合うことができます。制約が競技力を高めるヒントになるかなと思います。
 一旦、陸上競技場から離れて考えてみると、必要なトレーニングは案外地球上のどこでも可能であるということに気づきます。こうでなきゃいけないという発想をいかに壊せるかが大事です。あなたのオリジナルを見つけてください。そして教えてください。

③深淵の世界の楽しみ方

 時間については学生時代に比べればビハインドがある状況ですが、働いていただいた報酬を学生時代よりも投資することができます。 これは結構楽しいです。余裕があるとあのシューズ試してみようかな?このウエアいいな!このジム行ってみよ!など別の楽しみがあります。投資は社会人陸上の醍醐味です。カートに入れて一日経っても気になるのであれば、ポチりましょう。経済を回しましょう。
 帰宅後、あなたの足をトレーニングに向かわせるのであれば、数万円の投資は安いものです。自分自身を甘やかしていきましょう。(冗談半分でもありますが、道具の進化を感じることも多いので損はないはずです。)

 あなたと同じを道を通ってきた深淵の世界の住人は、あなたが思っているよりも多く存在します。出勤前にウエイトをしたり、子供が寝静まってからサーキットをしたり、パンプアップしスーツのズボンが何枚も破けていたり、在宅ワークの昼休みに走りに行ったり…私ですら”狂気”に感じるエピソードが沢山あるのがこの世界です。10数年前にこの深淵の世界に踏み込んだ時とは比較にならないくらい狂気にひた走る先人が沢山います。そして、彼らはとても優しくあなたの悩みを聞いてくれるはずです。もちろん私もその一人です。1日でも長くこの深淵の世界を楽しみましょう。どこかでお会いできることを楽しみにしています。


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