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"頑張っている自分に酔ってはいないか?”


反省を通じて見える競技への取り組み方

 シーズンも徐々に始まり、指導をしている高校生は都道府県大会を終え、
中学生は夏の通信・総体に向けての出場権を得るために日々トレーニングに励んでいる。
 一昨年の夏頃から、小学生だけでなく中学生も継続的に指導するようになった。競技を頑張りたいという子も増えてきたので、今年から試合毎に報告と反省を送ってもらっているが、これが面白い。課題が明確になっている子、やりきれない思いを言葉に表現できない子、書いているうちにどんどん湧き上がってきたんだろうなと熱を感じる子、”なんとなく”書いている子。普段のトレーニングでは見れない競技に対する向き合い方を垣間見れる。
 
 私は自身いろんな競技の取り組み方があっていいと思っている。友達に会いに行くのも、暇な時間を潰すのも、少しでも強くなりたいのも各々大切な価値観だと思う。しかしながら、集団を形成し、時間を共にする以上は、ある程度の方向性の納得感はお互いに必要なことである。
 競技力に関係なく、目標を掲げ、周囲を巻き込むような取り組みをしているのであれば、その目標に向かって最大限のサポートをしたいと考えている。
ハードルを4歩で完走できるようになることも、県大会に入賞したいというのも目指す山の高さは違えど、目標に向かって歩くという点では同じである。

”頑張っている自分に酔ってはいないか?”

 結果を出したい。県大会に行きたい。
明確な目標があるから、各大会の結果から目標に対するチャレンジの可否を反省に綴っている。陸上競技はこの目標までの距離を掴みやすい競技だと思う。上位大会への切符は、IH路線を除き、記録を越えることで得られる。目標とする記録と現在の記録の差分が、目標達成に必要な距離である。 

 〇〇秒を出したい。△m飛びたい。

これは小学生でも引き算すれば、わかることだ。反省の意味はこの引き算した結果、自身がどのような行動の変容を起こさなければ行けないか?を言語化し、取り組むことである。数字の差が生まれる理由を分析する必要がある。同じ学校の先輩の動きだったり、他校の同級生だったり、トップ選手だったりと客観的な数値だけでない”動き”の違いを見つけなければいけない。今の時代、中学生でもほとんどがスマートフォンを持っているし、タブレットの進化もあって、簡単に自分の動きを撮影でき、以前よりも簡単に動きの違いを見つけることができる。
 
 違いを見つけたら次にやるべきことは、数字の差を生み出している動きの違いの改善のプロセスである。課題に対するトレーニングを考え、効果が得られたのかの検証が必要となる。この仮説→検証のプロセスがなければ成長は鈍化する。
 仮に、下記の英単語のテストで高得点を取ることで考えてみよう。

 課題:次週の英単語テストで高得点を取りたい。
 方法①:毎日発音を10分聴く。
 方法②:毎日単語の書き取りを10分行う。

 方法の①も②も”英語の勉強”でいえば、どちらも英語の勉強になっている。しかし、課題に対してのインパクトは短期的に見れば②の方が高いだろう。決して①の効果がないということではなく、”次週”というタイムリミットが存在する以上、全てを網羅する時間もなく、より課題に対するインパクトが大きなものを選択するべきであろう。
 陸上のトレーニングも同様で、効果がないものはないと思う。ただ、自身の課題に対しての得られる効果の大きさ、期限までに行うべき事の優先順位が異なる。
 この仮説をたて、検証し、結果どうであったかを考察するプロセスこそが反省をする意味である。

 ”次の大会に向けて、練習を頑張ります。”

 大事なマインド、大事な姿勢だと思う。トレーニングを頑張ることは素晴らしいことである。何かの目標がなければ頑張れない。
 しかし、目標達成に向けた反省としては物足りず、”頑張る”という言葉で思考を止めてしまっているようにも感じる。何をどう頑張るのか?課題に対してどんなアプローチをしたのか?それが大事な部分である。
 厳しいかもしれないが、スポーツに限らず何かを目指すということは、”頑張ること”は当たり前でありそこで勝敗は決しない。何を、どのように取り組んだか?自分のこと本当に自分事として取り組めたか?の差が結果に現れると思う。
 ”頑張ること”は最低限でありスタートラインでしかない。そんなことで自己陶酔しては成長は見込めない。強豪校が強豪であり続ける理由は、当たり前の基準の高さにあると常々思う。当たり前の基準を高いチームに成長してほしい。

だから、あえて言う。

"頑張っている自分に酔ってはいないか?”


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