棚卸資産について

 棚卸資産は、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産であり、企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産のほか、売却を予定しない資産であっても、販売活動及び一般活動において短期間に消費される事務用消耗品等も含まれる。
 我が国では、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等も棚卸資産の範囲に含めている。これは、製造用以外のものであっても短期的に消費される点や実務上の便宜が考慮されたためであると言われている。また、一般にこのような財貨は重要性が乏しいとも考えられる。ただし、当該事務用消耗品等は販売費及び一般管理費となるものであるため、棚卸資産とされる項目は将来費用化された際に売上原価となるものに限定すべきとする立場からは、これを棚卸資産の範囲に含めることについて批判されることがある。また、当該事務用消耗品等を棚卸資産の範囲に含めることは国際的な会計基準と異なると指摘される。

 棚卸資産については、原則として購入対価又は製造原価に引取費用等の付随費用を加算して取得原価とし、個別法、先入先出法、平均原価法、売価還元法の中から選択した方法を適用して売上原価等の払出原価と期末棚卸資産の価額を算定する。なお、平成20年9月の「棚卸資産の評価に関する会計基準」の改正により後入先出法の採用は認められなくなった。

 棚卸資産の数量計算の方法には定期棚卸法と恒久棚卸法とがある。重要な棚卸資産については、売上原価が正確に算定できる恒久棚卸法が合理的と考えられるが、この方法のみでは棚卸減耗を把握できないため、期末に実地棚卸を行うことを求められている。
  なお、重要性の乏しい棚卸資産に関しては、恒久棚卸法(継続記録法)に代えて、定期棚卸法(棚卸計算法)を採用することも認められている。

 棚卸資産を掛仕入した場合、仕入代金には決済を遅らせるために必要な利息が含まれていると考えられる。その場合、理論的に考えると、利息は非原価項目であることから、制度上、棚卸資産の取得原価は、仕入代金から当該利息を控除した金額とされ、仕入代金の早期決済をせず、仕入割引を受けなかったときに、当該利息を財務費用として処理することが妥当である。
 しかし、我が国では仕入割引制度が広く普及しているとは言い難いことから、仕入代金から利息を控除することは現実的には困難であるとされる。そこで、制度上は、仕入割引を仕入代金の早期決済という財務努力の成果として棚卸資産の仕入取引とは別個の取引と考え、仕入割引時に割引相当額を財務収益として処理することとされている。


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