財務会計の基礎概念

 「企業会計原文」の前文「企業会計原則の設定について」には、「企業会計原則は、企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当って従わなければならない基準である。」と記載されていることから、「企業会計原則」は帰納的アプローチにより形成されているといわれる。
 なお、帰納的アプローチにより形成された会計基準は、すでに実務で広く普及した一般的な会計処理方法等から構成されているため、遵守され易いとえる。しかし、帰納的アプローチには、会計実務に問題点があってもそれを改善するような会計基準は形成されにくく、また、基準全体の整合性や守備一貫性が確保される保証がない等の問題点がある。
 この問題を解消し、会計基準を論理的に体系付けるために、演繹的アプローチ(会計の前提となる過程や会計の目的を最初に規定し、これらの仮定や目的と最もうまく首尾一貫するように具体的な会計処理のルールを導き出してくれる方法)が主張される。演繹的アプローチの代表例には、財務会計の諸概念を規定したフレームワーク(概念フレームワーク)を設定し、これと首尾一貫する具体的な会計基準の再構築をめざす試みがある。

 会計公準とは、会社が守るべき最低限の会計ルールのことをいい、一般的に考えられるギルマンの三公準は、企業実態の公準、継続企業の公準(会計期間の公準)、貨幣評価の公準である。

 会計首体論の代表的な見解には、資本等式を導く資本主理論と貸借対照表を導く企業主体論があり、現行の企業会計では資本主理論に基づいた会計が行われているといわれる。
 なお、会計主体論とは、企業と出資者の関係をいかに解釈し、会計上の判断を出資者と企業のいずれの立場から行うべきかについて考察するものであり、その代表的な見解の一つである資本主理論は、企業を資本主のものと捉え、会計の主体を資本主とする立場である。他方、もう一つの代表的な見解である企業主体理論は、企業を資本主とは別個独立の存在と捉え、会計の主体を資本主とは別個独立の存在である企業それ自体と考える立場にある。

 静態論的会計によれば、企業の債務弁済能力を開示するために、換金可能なもののみが資産として考えられ、貸借対照表は企業の財産価値(解散価値)を表示するものとして捉えられる。そして、企業の短期支払能力を明示するために、資産は流動資産と固定資産に分類されることになると考えられる。他方、動態的会計によれば、企業の収益力を開示するために、適正な期間損益計算のズレを収容する残高表として捉えられる。そして、損益計算との関わりが重視されるため、資産は貨幣性資産を費用性資産とに分類されることになると考えられる。

Source: 財務会計の概念フレームワーク


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