ロマンチックミラクル

16年ほど前、とあるドラム掲示板でのやりとりがきっかけで東京都内で実際にお会いし、ツアーで久留米にいらした際はバックヤードで見学もさせていただき、今もSNS上でお付き合いをさせていただいている同業の先輩・井出幸彦さんが今朝こんなツイートを。


既視感がすごい。
3,4枚目の写真で見えるシェルのエッジの感じは、僕が2000年頃にナッシュビルのドラムDIYショップ・Drum Supply Houseを知って最初に作ったスネア(ケラー社製RFリング付メイプル8plyシェル)とそっくり。
(それがわかる写真がない・・)
1,2枚目の写真で見える昔のP社の通称「餃子ラグ」に見た目瓜二つなラグはコレだし、ストレイナーはコレ。バットはコレ

「僕と同様にDSHで自作したものでは?」と直感。
ただこの頃はまだ「ドラムDIY」という概念自体がまだ国内ではほとんどなかったはず。
気になってパソコンであらためてツイート写真を確認。
スマホで見た時は起き抜けだったからか赤に見えていたシェル色、実はオレンジパールだった。

・・これって、ひょっとして???



先述した僕のスネア自作の直後、当時いた高校生の生徒が真似て自分も作りたがったので、僕のスネア基準で自分なりに変えたい部分を自由に選んでもらい、発注を代行した。
穴あけ位置の決め方、ドリルを使う際の注意点など製作の要諦は教え、着荷したら工具と作業スペースも貸し、生徒本人の作業を見守っていた。

完成したら早速試打。
金属パーツ類のチョイスが異なるとはいえ、シェルスペックが全く同じだったこともあって、僕のスネアとそっくりなイメージの音ではあったと漠然と覚えている。



・・その時の、それやん!!!画像1

(写真はこのスネア完成時に撮影)




その生徒はそれから数ヶ月経った頃事情によりレッスンをやめてその後は会っておらず、どういう経緯でこのスネアを手放したのかはわからない。
どうもこのスネア、使われた形跡がほとんど見受けられない。
経年によるくすみや錆の様子から、もしかしたらドラム自体をやめて久しく、荷物整理でオークションなどに出したのか、あるいは本人は東京に移住していて直接売りに出したのか。



余談だけど(いや余談じゃないんだけど)、2004年の春、先述のドラム掲示板のオフ会が企画され、僕は件の自作スネアを持って東京に出掛けた。
オレンジパールちゃんとの違いは、ラグ(Slingerlandタイプ)、フープ(Slingerlandタイプ)、ストレイナー&バット(Ludwig純正)。シェルスペックはまったく同一。

DSCF0010 のコピー

(写真はその時のオフ会で撮影)

その時いらしてた井出さんが、このスネアをずいぶんお気に召してくださった。
井出さんご本人からついさっきDMでこのように伺ってさらにビックリ。

「『あのスネア』の衝撃も忘れられません。真剣に作ってもらおうかと考えていた時期もあります」


それほど思っていただいたスネアの分け御魂みたいなスネアが、16年の時空を超えて井出さんの手に!!!

画像3

(写真は井出さんより頂戴し、加工)

昭和のキャバレー全盛時代のバンドマンをルーツとする「ドンバ」(バンドマンのことを昭和のバンドマン用語でそう言う)の同楽器プレイヤー同士というものは、相互にトラ(代役)をお願いし合ったりの協力関係にもなりえ、仕事の競合相手ともなりうる、絶妙に微妙な関係である笑
(もっとも井出さんと僕とでは活動エリアが全く違うのでそうはなっていない)
アーティスト的な活動というより、呼ばれた現場で、たとえ初見リハなしぶっつけ本番であっても音楽的に違和感なく堅実に演奏することを望まれる、地味で地道な伴奏職人的演奏家。

そんな地味なおっさん二人にこんなロマンチックでアメイジングなミラクルが起きますか!笑




ちなみに僕のその自作スネア、しばらく知人のご子息にレンタルしていたら「ものすごく気に入ってしまったので譲ってほしい」と懇願され、迷いに迷って結局譲ったんだけど、正直後悔がまったくないわけではない。
そんなに誰かに切望される音を持つスネアなら、もう一度同じスペックで作ってやっぱり持っていたくなってきた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?