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すれ違いじゃなくて永遠の片想いでしょ

コンビニを出ると横道からふいに自転車が顔をだしてきた
ギリギリぶつからずによけた
「あ、スミマセン」とかそういうのはナシで
見慣れた夜空に星は無く
今日も今日とていつだって眠たいぼくは
不機嫌顔でアパートへ帰る
ぼくはあのころとはずいぶん変わってしまって
社畜そのものという疲れたサラリーマン的な見た目で
きっと君はぼくに気付かなかったと思う
君はあのころと変わらず屈託なくさっぱりしていて明るくて
だけど自分に少し雑なのも同じで
おつりを渡してくれたその手の宇宙観ネイルもピンクの髪も
まだらに痛んでパサパサに乾いて

君は夜行性の蝶々
真夜中でも昼間のようなテンションで愉しげに笑って歌って
派手な羽をひろげてあちこちふらひらふらひら
ぼくは石の下でうずくまっているダンゴムシ
指でほじくり出されて弄ばれて
それで最後に踏まれて終わるのかもしれないけれど
君だってほんとうは弱くて
自分でその身を火に焦がしてしまうのかもしれないけれど
ぼくの中の君はずっと夜行性の蝶々のまま
ダンゴムシのぼくも相変わらず身体をまるめて
現実から自分を隠したつもりで静かに無言で生きている

ぼくたちは別々の世界をそんなふうにこれからも
生きているふりをして
そんなふうに何かを諦めたまま
生きているふりをして
そうして永遠にさようなら


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