guidin' my steps, guardin' my life from now until death

2023年1月、30代にも突入したし、婚活でもするかとPairsというマッチングアプリをやっていた。

イケメンでもゴールドマンサックス勤務でも伊藤忠商事勤務でもないし、普通にアルゴリズムがオススメしてくる系の女の人にいいねを押したって、マッチング率は非常に低い。

Pairsというアプリのいいところは、日本で一番会員が多いところ。
つまりは、ニッチな趣味とかでも一定数、繋がれる人がいるっていうこと。

大した取り柄とかははないけれど、海外のR&Bが好きとかのニッチな趣味はあったので、そういうニッチな趣味の合う人だったら、話をするだけでも十分楽しかったりするし、何とかなるかなと思って、 FKJ っていう海外のアーティストのコミュニティに入っている大阪の人にいいねを片っ端から送ったりしていた。

で、そんな中、ある一人の女の人とマッチングする。
マッチングした最初にこちらからテンプレ的なあいさつメッセージを送ったのだが、返信はしばらく来ず、ログインすらしていない感じだった。

で、2週間後くらいに、よろしくお願いしますー、みたいな当たり障りのない返信がたしか来て、返信は来ないものだと思っていたのでちょっと驚いて、このパターンだとマメなメッセージのやりとりはできなさそうだなと直感したので、ダメ元でいきなり電話に誘った。

そしたら向こうも丁度暇なタイミングだったのか、スッと通話することに。

…意外と話が盛り上がった。

最近、どんな音楽聴いてるのみたいな話になって、僕はLittle SimzというUKの女性ラッパーの話をした。

2023年1月、職場でかかってるFM802のその月のパワープッシュはLittle Simzの Gorilla 

普段、ラジオの曲なんて全然、立板に水って感じで意識にひっかかることはないのに、イントロのファンファーレからはじまるその独特なラップは耳から離れず、なんかいい年になりそうだなと思った。で、1月はLittle Simzを個人的にもよく聴いていた。

そして彼女に、最近の気になってる音楽を聴いた。その答えに電撃が走った。

『Cleo Sol … クレオ・ソル』

なんでビックリしたかって、僕はその電話の直前に、はじめてその名前を認識していたから。
2022年の年間ベストアルバムとかを調べていて、UKのメディアのトップにはSaultっていう聴き馴染みのない匿名のR&Bグループのアルバムがランクインしていた。
そのグループのプロデューサーはInflo
2022年、Brit Awardの40年の歴史で初めて黒人としてベストプロデューサー賞を受賞した天才

で、彼はまさに僕がハマっていたLittle Simzのアルバムのプロデュースもやっていて、クレオソルは彼が主催する匿名のR&Bユニット、Saultのボーカルであり、また妻でもあった。

そんなわけで、彼女が『クレオ・ソル』という言葉を発した瞬間、何か、運命的なものを感じた僕は、
まさかクレオソルの話ができるとは思わなかったといって、二週間後、会う約束をした。

彼女は短大を卒業して二年ほど京都の料亭で仲居さんとして勤務したのち、当時、デザイナーへの転職を目指して、職業訓練校に通ったのち、転職中というステータスだった。

自分はWebエンジニアだが、もともとWebデザインの専門学校にいって制作会社で働いていたりしていたので、そこらへんの転職事情みたいなものには鼻が利くので話を聞いたりしていた。

彼女に見せてもらった、転職用のポートフォリオサイト、それがまた、僕の心を捉えた。

彼女がデザインした、架空の美容室や、架空のアパレルのECサイトを数点集約したポートフォリオ。

コピペじゃない、絶妙な、8月のカリフォルニアの午後2時の空の色みたいな清涼感のある、ライトブルー。そこで食べるオレンジのアイスクリームみたいなアクセントカラー。

なんというか絶妙なのだ。絶妙に淡くて、ニュアンスで語りかけてくる系の、ビジネスでは選択されなさそうな絶妙なトーン。
彼女がこだわりを持ってその色を選択したことがちゃんと伝わってくる。

それに、サイトにある彼女の自作のベクターのイラストも、シンプルな丸い線でこれがまた、絶妙に良い

レベッカ・シュガーの『スティーブン・ユニバース』みたいな感じ

steven universe

余白とか、テキストの扱いとか、そういう職業デザイナーをやれば、誰でも当たり前にできるようになるようなことは全くできていなかったけれど、
『センスの原液』みたいなポートフォリオ

だから、共有してもらったあと、すぐに電話した。

思ってたよりめっちゃいい。これはイケる。絶対、就職できる。

そう、彼女に伝えた。

で、2週間後彼女に会った。
京都で待ち合わせをして、京セラ美術館のアンディ・ウォーホル展へ行った。

相変わらず、好きな映画とか音楽だとかの話をしたりしていた。

彼女も僕もパルプ・フィクションとレオンが好きだった。
ソフィアコッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』は彼女はみていなかったので、勧めた。

日本の音楽も聴くの?と訊くと
彼女は『カネコアヤノ』が好きだと言った。

僕は当時『カネコアヤノ』をちゃんと聴いたことがなく、よりにもよって一番言ってはいけないことをいった。

『カネコアヤノって、あいみょんみたいなやつ?』

今ならわかる。
それだけは絶対に言ってはいけなかった。

実際に会った彼女には、共有してもらったポートフォリオサイトみたいなトキメキを感じた。

顔立ちが美しいとか、そういうのじゃなくて、何か言語化できない魅力

で、僕はとにかく彼女が『かわいい』と思って、それを伝えたくて、でも自分でも彼女のどこに『かわいさ』を感じるのかわからなくて 口から出た言葉が

『年下ってかわいいね』 みたいな意味不明な発言

その時、丁度、1歳年上の人と、お茶をしたばっかりっていうのもあって、その年上の人とお茶をしたときには感じなかったときめきに自分でも動揺して、口をついてこんな言葉が出てしまったのかもしれない。

しかし、振り返れば、これもよくなかった。
『年下ならなんでもいい人』
というような風に捉えられてしまった。

言語化できなかっただけなんだ。

僕は、『一般的なものさし』じゃない、『僕だけの主観』で『かわいい』と動揺するほど強く感じたんです

それをいつもの癖で『正確に』表現しようとしたがために、言葉を失ってしまった。

だって言葉ってそもそもの定義からして主観をある一定の共通概念に押し込もとするものだから。

まぁ、そんな感じで彼女との一回目のデート?は終わった。








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