今読まなければ後悔する


唐突に、そう思った。
「今死んだら後悔することって本を読んでいないことだな」と急に思い出したかのように感じて、先輩から勧められて4ヶ月中途半端どころか、10ページぐらいしか進んでいなかった「ジェノサイド」を凄まじい勢いで読破した。

面白かった。
久しぶりに感じる本を読み終えた後の清々しさ。これだ。私はこの心の気持ちよさを感じたかったのだ。

本は不思議だ。
経験していない事がまるで自分が経験したように心に馴染む時がある。本から学ぶことがある。

私の本をよく読む友人から「本を100冊読むより一度恋愛をした方が学ぶことができる」と言われた事がある。しかし恋愛では得られないものもまた、本にはあると感じた。この心地よさはたまらない。

昔付き合っていた人に振られてとても悲しくて、寂しくてその人にまた愛されたくてたまらなくなった事がある。

「陰陽師」で有名な夢枕漠という人の本をたまたま読んで、そこに男女が出てくる。一度は愛し合った仲であったが男の気持ちは離れ別の女の元に通い始めると男は体調を崩す。そんな時陰陽師に相談し、藁で男の人形を作り髪を一本入れると瞬く間に藁は男の姿に形を変えた。深夜別れた女が鬼になり男の家を訪れると、男の姿に形を変えた藁の人形にすがりつき、泣き、そして最後は鬼の形相で藁の人形に襲いかかる。そんな彼女の姿を物陰から見ていた男は涙を流しながら「もう戻らぬ、離れた人の心はもう戻らぬのだよ。」とつぶやく。

その時ストンと気持ちが落ちた。「あぁ、戻らないのだな。離れた人の気持ちは戻らないのだな。」思ったり、感じたりするのではなく理解出来た事で私は離れた彼の気持ちを受け入れる事ができた。もう10年以上前に読んだ本だけど、それから別れがある度私の気持ちの切り替えがスムーズにいったのにはこの本との出合いがあるからだろう。

本は人生の道標。誰かの人生。つまりは私のバイブルなのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?