人生リハーサル 「リハーサルガム」
〇あらすじ
入社1年目の新人サラリーマン「佐藤マサル(さとうまさる)」。仕事は失敗だらけで上司に怒られてばかりな毎日だが 持ち前の明るさと、誰にも負けない努力と根性で毎日頑張っていた。会社のマドンナ「牧村ハナ(まきむらはな)」に密かに想いを寄せるマサルは、次の企画会議で成功したらハナに告白をしようと決心する。会議当日。マサルの注意不足で会議はトラブルを招く事態に……、上司には失望され、ハナには呆れられ、全てが嫌になってしまったマサル。そんなマサルの前に丸坊主のピンクのタンクトップを着た「キャサリン」と名乗る男が現れる。キャサリンはマサルに「リハーサルガム」と、変わった名前のガムを渡す。見た目は何処にでも売ってそうな普通のガムだが「1日が2回になる」と言われて、マサルはガムを噛んでしまう。そして……翌日。会社に来るとまた「同じ日」になっていて!?。リハーサルガムで全てをやり直すことに成功して自信がついたマサルは、ハナに告白をしようと食事に誘う。大好きなハナと憧れの食事。だけど、ハナの様子がおかしくて……?
①「人生リハーサル」abさんのテーマをお借りしました。
◎主人公 佐藤マサル
ヒロイン 牧村ハナ
謎の男 キャサリン
上司 須藤
後輩社員 村上
────────────────────────
〇 会社オフィスにて
マサル「ん〜〜っ!……」 〇伸びをするマサル。
〇ハナがマサルのデスクにコーヒーを置く。
ハナ「佐藤くん、お疲れ様」
マサル「ま、牧村さん!」(ガタッと立ち上がる)
ハナ「今日、例の企画会議でしょ?。頑張ってね」
マサル「あ、う、うん!絶対頑張る!。てか、絶対成功するから!任せといて!」
ハナ「ふふ、佐藤くんっていつも元気いっぱいだよね。」
〇優しく笑うハナ その表情にドキッとするマサル。
牧村さんの笑顔は俺の心をホッとさせてくれる。まるで温かいコーヒーみたいな、飲んだらホッとして、「さぁ、今日も頑張ろう」って思わせてくれるような……。そんな彼女を好きになった。
でも、いつも仕事で失敗してカッコ悪い所しか見せれてない自分に自信がなかった。けど、
マサル「牧村さん……、あのさ…」
今日の会議が成功したら……
マサル「今日の会議が成功したら、俺とーーーー」
〇上司・須藤登場
須藤「おい!!今日の企画会議の担当誰だ!?」
マサル「は、はい!俺です!。」
須藤「佐藤…お前 今日の企画会議、あんな内容でプレゼンする気か?」
マサル「え…」
須藤「企画書の内容が全て白紙になってるが……。どういうことだ?」
マサル「そんなはず!ちゃんとデータは保存して村上に…!」
須藤「村上、佐藤からデータは貰ったのか?」
〇村上登場
村上「佐藤先輩からデータは送られて来なかったんで、準備したくてもできませんでしたー」(バカにした感じで答える)
マサル「村上!お前 俺のメール見てなかったのか!?」
村上「メール?見てませんけど?」
マサル「は!?」
村上「須藤さん、俺提案しても良いですかね?これなんですけど……」
〇村上は須藤にパソコンで企画内容を見せる
須藤「村上、お前がこの企画のプレゼンをやれ。」
村上「マジすか!?ありがとうございます〜!」
須藤「佐藤……今日は村上のフォローにまわれ」
村上「佐藤先輩シクヨロでーす」
マサル「須藤さん!俺にやらせて下さい!」
〇須藤に頭を下げるマサル。
須藤「悪いが今回は村上にやってもらう。お前の注意不足には呆れたよ……」
村上「佐藤先輩これからはちゃんと送ったってTELして下さいよー。俺ぇ、あんまメールとか見ないし♪」
〇立ち尽くしてしまうマサル。
ハナ「さ…佐藤くん」
〇心配そうにマサルを見るハナ
マサル「お…俺ダメだなぁ……。またやっちゃった……」
ハナ「…佐藤くん!…今からでも遅くないよ!私も手伝うからコピーして印刷…」
マサル「ごめん……牧村さん……。」
ハナ「諦めちゃうの…?佐藤くんって……そんな人だったんだ…っ」
〇ハナ、オフィスから出ていく。
マサル「……」
〇立ち尽くすマサル
〇時間経過・夕方 マサル 会社付近を1人で歩く。
マサル「はぁ……」
全てが悪夢のような月曜日。夢なら覚めて欲しいと何度願ったか。1日が長すぎて、俺のメンタルは豆腐のように崩れていった。今日がやり直せるなら本当にやり直したい。
マサル「今日をやり直したい……」
?「やり直せるわよ」
〇マサルの背後から ピンクのタンクトップを着た、丸坊主の男登場。
マサル「うわぁぁ!?」
?「ちょっと!!大きな声出さないでちょうだい!!」
マサル「誰!?……し、しかも!お……オカm」 男にガっと頬を掴まれる
キャサリン「やぁねぇ〜怒 誰がオカマですって?。てか、アタシの名前はキャサリンよ!」
〇パッとマサルの頬を離すキャサリン。
マサル「え…キャサリン?って顔じゃない……」
キャサリン「お前いっぺん死んでおくか?」
マサル「ごめんなさい。って、キャサリンさんここの社員なんですか……?(恐る恐る)」
キャサリン「アタシはたまーにここの会社付近で、パンとかお菓子を販売してるのっ」
マサル「あ…そうなんですか……ハハハハハハ!じゃ、失礼します!」
キャサリン「待たんかい。お兄さんさ、人生やり直したくない?」
マサル「……はい?」
キャサリン「あたしが作ったガムなんだけどさ、噛むと1日が2回くるガムなのよぉ。…名付けて「リハーサルガム」ってやつ?」
マサル「ちょっと待って話が1個も入ってこないしついていけない」
キャサリン「あんたすんごいブサイクな顔してたから特別にタダであげるわ。でも、あんまり噛みすぎちゃダメよ?。人間欲が出ると大切な物も失うからっ」
〇キャサリンはマサルに曜日が書かれたガムを渡す。
キャサリン「バイビー!今度感想聞かせてね〜」
マサル「ちょっと!キャサリンさん!」
〇ガムに視線を落とす
マサル「リハーサルガム…か。今日って、月曜日か。」
〇マサルは月曜日のガムを噛む
マサル「藁じゃないけど…ガムにもすがりたいくらいだからな…」
暗転して 次の日─────────────────
〇オフィス
マサル「おはようございます…」
須藤「おはよう」
マサル「須藤さん…!昨日は本当に申し訳ありませんでした。俺の注意力がたりなくて……っ」
須藤「?佐藤…、なんの事を言ってるんだ?。それより、今日の午後からの会議頼んだぞ。期待してるからな」
〇ポンポンとマサルの肩を叩いて去る。
マサル「…………え?」
〇マサルは慌ててスマホを見る
マサル「……月……曜日!?」
ハナ「佐藤くん、おはよう!」
マサル「ま、牧村さん!今日って何曜日!?」
ハナ「え……?月曜日だけど……。それより、今日の企画会議は上手くいきそう?」
マサル「会議…そうだ!会議!。牧村さん!お願い手伝って!!」
〇ハナの腕を掴んで走り出すマサル。
ハナ「ちょ、ちょっと!?佐藤くん!?」
マサル「俺、今日は上手く行きそうなんだ!」
ハナ「……もしかして」
マサル「牧村さん!今日の会議が上手く行ったら、俺と食事に行ってください!」
〇マサルは自信たっぷりにハナに言う。
ハナ「……うん。」
〇小さく頷くハナ。少し切なげに
〇会議後──────────────────
マサル「会議が無事成功した……」
ハナ「佐藤くんお疲れ様!。もー、コピーまだって聞いた時は焦ったけど間に合って良かったね。須藤さんとか皆、佐藤くんの企画褒めてたよ!」
マサル「いや…牧村さんが手伝ってくれたから…。俺、なんとかやりとげられたよ!ありがとう!。」
これは夢じゃない。現実だ。
火曜日が来た。
また俺は失敗をした。
ガムを噛んだら、また同じ火曜日が来た。
俺はキャサリンさんから貰ったリハーサルガムを使って何回も自分の失敗をやり直した。水曜日 木曜日 金曜日 土曜日 日曜日 また繰り返して月曜日。
これなら牧村さんも……俺を好きになってくれる。2回目を完璧にすれば……
〇お洒落な高級レストランにて
ハナ「佐藤くんからご飯誘ってくれるなんて一生ないと思ってた」
マサル「俺はずっと誘いたかったんだ。」
〇ハナを優しく見つめるマサル。
マサル「牧村さんはいつでも綺麗だね」
ハナ「…」
マサル「どうかした?」
ハナ「佐藤くん…「何枚噛んだの」?」
マサル「え?」
ハナ「「リハーサルガム」噛んでるんでしょ?」
マサル「ど、どうしてその事を!?」
ハナ「やっぱり……。いつも失敗してる佐藤くんが、1日ある2回目は失敗してないんだもん」
マサル「い、いつもって……」
ハナ「キャサリンさんに貰ったのね……。」
マサル「どうして牧村さんが「リハーサルガム」のこと知ってるの!?。し、しかも俺の失敗とか…やり直した所とかも全部知ってるし!!」
ハナ「……私も……リハーサルガム噛んでるから」
〇ハナはカバンからリハーサルガムを取り出す。
マサル「それ…!!」
ハナ「私ね、本当はダメな女なの。佐藤くんにはバレたくなかったけど……」
マサル「牧村さんはダメなんかじゃないよ!。いつだって優しくて……可愛くて……皆のマドンナで……」
ハナ「それはガムを噛んでるハナだから。ガムを噛まないハナは、面倒くさがり屋の酒癖悪い女なんだ。部屋も汚いし。」
マサル「う、嘘だ……」
ハナ「これが、本当の私なの。」
マサル「じゃ……牧村さんは偽りの自分を見せてたの?俺を騙してたの?」
ハナ「そうね……。佐藤くんのこと、好きだから。」
マサル「え……」
ハナ「覚えてる?入社式の時、佐藤くん遅刻して来たよね?。あの時、正直「この人大丈夫かなぁ〜」って思って!……、でも、佐藤くん…明るく元気に「おはようございます!」って言っててさ」
マサル「…そ、そうだったっけ」
ハナ「確かに遅刻してきたし、なんだコイツって思ったけど……、なんかいつの間にか佐藤くんの明るい所とかめげない所、いつだって元気な所好きになったんだ……」
マサル「……」
ハナ「私は、この人に釣り合える可愛い彼女になれるかなって……ずっと悩んでた。そしたら…キャサリンさんが現れて「リハーサルガム」を私にくれたの。私はそのガムのおかげで、全部ダメな所をカバーできた。」
〇悲しい表情になるハナ
ハナ「でも、佐藤くんとの距離はどんどん遠のいていくばかりだって気づいて……。こんな偽った完璧な牧村ハナじゃ、佐藤マサルの心は掴めないって……」
マサル「牧村さん……」
ハナ「だから私はガムを捨てて、本当の姿で貴方に告白しようとしたの。…でも、佐藤くんもリハーサルガムを貰ってたなんて……」
マサル「……酷いよ……俺、牧村さんのこと……本当に好きで……。でも……俺もずっと……」
ハナ「ごめんね…。佐藤くんの好きだった牧村ハナはもう居ない……。こんな私を貴方は愛せないでしょ?」
マサル「……牧村さんは……、ガムを噛んでない俺を愛せるの?」
ハナ「うん……。大好き。ずっと愛してられる」
マサル「俺は……ずっと牧村さんの事が好きだった。でも、俺の好きだった牧村さんは嘘の牧村さんで……、本当の牧村さんは……」
〇マサルはハナの手を握る
マサル「とっても正直で、素直で素敵な人だよ。」
ハナ「佐藤くん……」
マサル「君をもっと知りたい。リハーサルなんかなくてもありのままの牧村さんを知りたいし、俺のことを知って欲しい!」
ハナ「私は……そんな佐藤くんを好きになったんだ。いつだって真っ直ぐで明るくて前向きなところ」
マサル「牧村さん……」
キャサリン「お話は済んだかしら?」
〇キャサリン登場。
マサル「きゃ、キャサリンさん!?」
ハナ「相変わらず神出鬼没ね…」
キャサリン「んで、あーた達「リハーサルガム」どうするの?」
ハナ「私は捨てるわ」
キャサリン「お兄さん。あんたは?」
マサル「俺は……」
〇マサルはガムを強く握り締める
マサル「俺も捨てる」
キャサリン「そう。なら、魔法の時間は終わりね。あんた達見てるの楽しかったわっ。」
〇キャサリンは指パッチンをする。
キャサリン「またどこかで……会いましょっ」
マサル「……あ」
〇マサルの視界がぼやけていく
〇そのまま暗転
キャサリンさんはあの日以来、姿を見せることもなく、俺達の非日常的な日々は終わりを迎えた。
〇オフィスにて
須藤「佐藤!同じミスを何回も繰り返すな!」
マサル「はい!すみません!」
バシャ
〇須藤のスーツにコーヒーをかけてしまうハナ。
ハナ「きゃー!?須藤さんごめんなさい!!」
須藤「熱いよ!牧村さん!!」
俺たちは失敗だらけの毎日。
だけど、この失敗は成功への近道
この失敗があるから、次に進める。そんな気がする。
〇公園
ハナ「マサルくーん!」
マサル「ハナちゃん!」
俺たちは晴れてカップルに。
〇自然に手を繋いで歩く2人(マサルとハナ)
ハナちゃんのダメな所、少しずつだけど好きになろう。リハーサルなんかなくたって、人生なんとかなるもんだ
〇空を見上げるマサル
マサル「綺麗な空だね。」
ハナ「そうね」
〇お互い微笑みながら
〇最後は2人の後ろ姿を写して
終
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