iGEM Ambassadorの活動に関して

2023 iGEM Community Ambassador to Asia and Oceaniaを務めておりました、阿部です。今日はiGEM Ambassadorの活動について紹介したいと思います。

iGEM Community AmbassadorはiGEM Communityという国際的な合成生物学のコミュニティの一員として新しいチームや人々をiGEMに勧誘したりiGEMを広報したりする役割を担っています。

私が2020年大会に出場した際、丹羽さんが日本でアンバサダーをされていました。その際、質問対応や輪読会での知識の豊富さなどに多く助けられたことを覚えています。私の中でのアンバサダーは丹羽さんのようなイメージでした。自分には到底難しいと思い、まさか自分がアンバサダーをすることになるなんて1年前は思ってもいませんでした。

実際、応募すると決めるまで、アンバサダーの仕事や役割などについて特にチェックしてもいませんでした。おそらく、iGEM competitionに出場経験のある方でも、アンバサダーをiGEMとの関わり方の1つの選択肢として考えている人は多くないと思います。

そこで、今回はiGEMにどっぷりハマってしまった皆様、特に研究室配属やチームとしての方針などの事情で来年の出場は難しいかもしれないけどなんらかの形でiGEMと関わりたい!という方に向けてiGEM Communityを介したiGEMとの関わり方についてご紹介できればと思います。

iGEM CommunityはiGEM competitionへの参加経験の有無に関わらず参加することができる世界規模の合成生物学のコミュニティです。このコミュニティは合成生物学に関心を持つ学生、研究者、教員、および専門家からなります。iGEMは、合成生物学の研究とイノベーションを推進し、未来のバイオテクノロジーに貢献することを目的としていて、その活動の幅は多岐に渡ります。

活動の方法は大まかに2つあります。1つは地域に特化して幅広い活動をするアンバサダーとしての関わり方。もう1つは地域にとらわれず合成生物学に関するあるトピックに着目し、そのトピックに関するプロジェクトを行うという関わり方です。後者に関しては、プロジェクトを提案してチームを率いるproject headという役割と、project headが進めているプロジェクトに興味を持ち、チームの一員として活動に参加するという役割があります。

私は今年前者のiGEM Community Ambassador to Asia and Oceaniaを担いました。まず、アンバサダーの活動内容についてご紹介します。各地域(私の場合アジア・オセアニア地域)に10人弱ずつのアンバサダーがおり、それぞれregional meetingが月に一度開かれ、活動報告や課題・解決策などの共有を行います。加えて、global meetingという全ての地域のアンバサダーが集まるミーティングも必要に応じて(registration freeze前やjudging handbookが公開されるタイミング, Jamboreeの前など)開かれます。これらは全部オンラインなのと、日本が東側にあるため平日の夜が多いので、授業や他の予定との重複を避けることが比較的やりやすかったです。注意点としては、国際ミーティング特にヨーロッパやアフリカなどからも参加者がいるglobal meetingは日本時間の深夜(1時ごろになることも)になりがちであったため、朝型人間には少し難しいかもしれません。(が、夜型人間にはありがたい時間設定です。)また、具体的な年間のスケジュールとしては、Jamboree終了後の11月にアンバサダーやProject Headの募集があり、12月に選考(書類選考と面接)があり無事選ばれると1月から本格的に活動が開始するという感じでスタートしました。1月にはコミュニティの理念の共有や、iGEMのサイトの見方の説明やその説明をする練習をしたり、質問対応の練習をしたり、サイエンスコミュニケーションの方法についてを学んだりする初期研修がありました。その後の活動はいくつかの仕事を除いてほとんど個々のアンバサダーに託されています。

共通する仕事:
・定例ミーティング(regional+ global)
・毎月の活動報告書の作成
・最終活動報告書の作成
・各種データベースの拡充
・Promotion Videoの検閲(字幕の間違えがないか,国旗が出てくるなど規定違反はないか, 誰かを傷つける表現などが含まれていないか)

各自任意で行う仕事:
・SNSやblogの更新
・インタビューなどの実施
・学会などのイベントでのiGEMの宣伝, 新規チームのリクルート
・イベントなどの開催
・iGEMリーグの開催/手伝い
・参加者からの質問対応 ※judgeに関することは答えられない
・iGEM Community Projectへの参加
など

では具体的な個々の活動は何をしているのかという話に移っていきたいと思います。iGEM Ambassadorとして期待されている活動目標は以下の4つです。
・Recruit potential teams
・Expand the local iGEM communities
・Connect with alumni and help improve the iGEM Community
・Interface for teams and voice for their regional iGEM communities
上記の目標に向けて活動するのですが、そのアプローチ、具体的に何をするかは個々のアンバサダーに委ねられています。

私のiGEMアンバサダーとしての主な目標は、非英語話者向けの言語の壁を取り除き、合成生物学に興味を持つすべての人々にiGEM competitionをよりアクセス可能にすることでした。そのため、iGEMのイベントの詳細を私の母国語に翻訳し、X (twitter)やdiscordで共有し、情報によりアクセスしやすくすることを目指しました。言語の壁なしにiGEM参加者間での議論を奨励し、お互いのプロジェクトを向上させるために、母国語でのmeetupを開催しました。Judging sessionに備えて英語のQ&A直前練習会を実施しました。

meetupに関して、今年はコロナ対策が徐々に緩和され、幸い8月に実施した2nd Japan Meetup, 12月に実施した3rd Japan Meetupを対面で実施することができました。オンラインと比較して交流のしやすさが格段と高い対面でのイベントではありますが、全国のiGEMチームが皆するイベントを行うにあたって、どこで開催するにしても遠方からお越しいただくことになるチームが出てきてしまいます。現状、iGEM Japan communityの運営、竹内、滝沢、私のうち、2人が東京、1人が北海道におり、会場の確保の都合上、2回連続の東京開催となってしまいました。(関西チームの皆さんには申し訳ない限りです。)
せっかく、集まっていただくので少しでも交流や議論を盛り上げられればと思い、企画など新たに考えてみました。(いかがでしたでしょうか..?)
各企画の意図としては次のようなことを考えていました。
・アイスブレイク:より発言しやすい雰囲気作りのため
・席の配置を机を囲むような形ではなくする(2nd):会話を促進したい
・席をチームがランダムになるように設定(3rd):新たな交流の機会に
・iGEMの説明:iGEMを新たに紹介する場にもしたい
・企業の方などの招待:各チームの活動を知っていただきコラボレーションや支援のきっかけになれば幸い
・交流会の実施:普段discordで話している人などと実際に顔合わせて話せる機会を設けたい
・ポスターセッション(3rd):これは第2回meetupのフィードバックを受けて取り入れてみました。発表者とより密に議論を深められたり、自分が気になるところを深堀りできることから、(+今回出場チームのプロジェクト内容についてはpresentation videoが公開されていることも踏まえて)プロジェクト内容にプレゼンスタイルではなくこちらにしました。
・反省点の共有(3rd):今回Jamboreeの直後だったことから取り入れてみました。チーム単位での反省会はあるとは思うのですが、各チームで共通して躓くところも多いと思い、プログラムに加えました。特に出場経験のないチームやチーム内に出場経験のある学生がいないチームにとって、どういうところで苦労するのかをあらかじめ知ってイメージすることで、早い段階で対策を練ることができれば初出場の大変さを少しでも軽減することにつながるかと思います。今回のmeetupで最も挙がっていたwikiのコンテンツがfreezeまでに間に合わなかったという問題については出場経験の豊富なチームですら分かっていても毎年のように直面してしまう問題かと思います。日本語でも、完璧ではなくてもメモのようなものでも大丈夫なので、活動初期からwikiを意識しつつ文章として活動の記録を残しておくことが後々涙ができるほど助かります。
・リアルタイムアンケートコーナー:他のチームではどうなのか、他のiGEMerはどうなんだろうと気になっていることを匿名で聞けたら面白そう!日本のiGEMチームに参加している人たちはどんな層なのか調査してみたいという思いと、それをその場で共有できたら盛り上がるんじゃないかという思いつきで企画してみました。

アンバサダーの活動としては上記の他に学会でのiGEMの紹介や講演会の開催などです。また、引き続き続けていきたいこととして、今のiGEMチームの連絡先など(チームごとの任意にはなるかと思いますが、できればJudging feedbackも)をコミュニティとして残していきたいと思っています。個人の連絡先についてはコミュニティ内でも公開するつもりはないですが、コミュニティの中で誰かしらが引き継いでいけるような仕組みにはしたいです。というのも、大学として出場経験はあるもののすでに活動が停止してしまい、当時のメンバーも卒業してしまい、連絡が取れないという状況で再びチームを立ち上げたいという学生からいくつか連絡をいただき、wikiなどから連絡先を見つけるのが難しいような場合もあり、連絡をつなげるのは(まず連絡を繋げていいか確認した上で!)個々のチームではなくコミュニティだからこそできることの1つなのかなと思い、残していければいいなと思っています。

長々と駄文を書いてしまいましたが、日本のiGEMコミュニティに革命を起こしたい!という方はもちろん、チーム間の交流を促進したい!という方でも、このブログを読んでアンバサダーやってみたいなと思っていただけた方がいればdiscordあるいはX(twitter) @ReiA2023のDMにご連絡ください!

みなさんご存知の通りiGEM competitionに現役で参加している場合、やるべきことが多いため、「日本チーム全体でこんなのがあったらいいな〜」というようなことがあってもなかなか時間を割けない人が多いと思います。そんな痒くても手が届かないようなところを少しでもサポートできればと思い、今回アンバサダーを引き受けました。

アンバサダーをやってよかったこととしては、多くの方に新たに出会えたことです。日本のiGEMerとチームを超えて密にお話しできたこと、iGEM Communityを通じで日本以外のiGEMerとも一緒に活動できたこと、HQの方の考えを直接お聞きできる機会があったこともアンバサダーをやっていたから広がった輪だと感じています。iGEM Japan communityの中には自分が大学院生であるということから、"なんでも知っている人"のように感じる方もいたかもしれませんが、全くそんなことはなく、日々活動を通じて勉強させていただいていました。アンバサダーとして活動する中で、現役iGEMerの方々の聡明さや発想の斬新さなどに何度も何度も驚かされ、むしろ自分も頑張らなくてはと自分を見直すきっかけにもなりました。

先代のアンバサダーと比較して何ができたかわからないですが、何かお役に立てたことがあれば幸いです。

ともかく、このブログを通じてお話ししたかったこととしては、iGEMに関する活動はiGEM competitionだけではないということです。ぜひiGEM Communityにもよかったら参加して、活動の範囲を、あるいは人とのつながりを広げてみてください。

最後に、アンバサダーの任期が終了したためigemのメールアドレス(rei@igem.org)が無効になってしまうとのことです。文中にも書きましたが、discordあるいはtwitterのDMを通じてご連絡いただければと思います。

アンバサダーの任期は終了しましたが、iGEMとのつながりが全くなくなるというわけではなく、お力になれる点はお手伝いできればと思っているので、引き続きよろしくお願いします。

阿部

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