女子高生とメル友(死語)になった話【第1話】
スマートフォンが日本に登場してから10年以上経過して、ネットはもちろんのことカメラに動画に地図に予約に支払いに…とスマホは生活必需品の筆頭に挙げられるようにまでなりました。
私自身もスマホユーザーとなってもう7〜8年経ったのだけれど、携帯電話(ガラケー)は15年間使っていたのでガラケー時代の方がまだ長いはず。それなのにスマホの無い時代に自分がどういう生活をしていたのかが今となっては思い出せない。それくらいスマホ依存となってしまった。
最近ふとガラケー時代にはどんな生活していたんだっけ?と昔の記憶を辿っている内にひとつの甘酸っぱい記憶を思い出した。
以前よりnoteを書いてみたかったので、その思い出を最初のネタとして書こうと思いました。
これは今まで誰にも話したことのない話、そして実話です。
時は2000年代初頭、当時私は20代半ば。自分の携帯電話に1通のショートメール(SMS)が届いた所から一連の話が始まります。
ある日の仕事中に見知らぬ電話番号から届いたショートメールの文面はこんなものでした。
『神奈川県に住む17歳女子です!よかったら仲良くして下さい!』
今なら100%迷惑メール、返信するとアダルトサイトやフィッシングサイトとかに誘導されるアレ。もちろん20年前だって迷惑メールもあったのだけど、その当時はまだ「本物」も多かったのです。
その当時はTinderのような出会い系アプリはおろかTwitterもInstagramもFacebookもまだ存在しないから、携帯電話を通じて見知らぬ異性と知り合うなんてことは難しかった時代。
それでも若さとは素晴らしいもので、当時の若人達は携帯電話で見知らぬ異性と知り合う方法を考えつくのです。その方法が、
適当な電話番号にショートメールを送りまくる
という「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」を地で行く作戦。若いって恐ろしい。
当時はまだ携帯電話自体が「若者のツール」みたいな感じで40歳代以上では携帯電話を持ってない人も多かった時代。とはいえその作戦で成功した人は多くはないだろう。少なくとも周りでは聞いたことがない。
そもそもそういう無謀なことをするのは大抵が若い男性であって女性が行うケースは少なかったと思う。実際に見知らぬ男性から同様の「仲良くしてください」メールはそれまでにも何件か来たことはあった。もちろん男からだから全て無視してたけど。
しかし今回は女性から!しかも女子高生!
返信するか一応迷った…のも一瞬、数秒後にはもう返信の文面を入力していた。
「僕は大阪に住んでる25歳の男です」
恐る恐る返信するとすぐに返事が来る
『えー!大阪!去年行ったよ!』
「どこ行ったの?」
『USJ!家族旅行で!』
当時はUSJがオープンしてまだ数年という頃。
「僕はまだ行ったことないよ。楽しかった?」
『楽しかったよー、ねぇ名前は?』
「あべ(ホントは下の名前)、そちらは?」
『サトミ!あべくんよろしくね!』
「こちらこそよろしく」
歳の差、地域の差はあれど会話は続いていく。
相手が見えないとはいえ楽しいなぁ…いやいや相手は高校生なんだから変なことは考えちゃダメだよな、なんて思っていたら唐突に流れとは関係ないことをサトミが言い出した。
『実は私ね有名なバンドのボーカルと付き合ってるの。バンドのイニシャルは「P」、わかる?』
ん…?
予想外な角度からの話題転換に一瞬身構える。
これはクイズじゃないよな…
やっぱり迷惑メールなのかな…
とはいえここで無下に扱ってしまうとせっかくの楽しい時間が終わってしまいそうだ、それはなんか惜しい気がする。
ちなみに冒頭さらっと書いたが仕事中である。
「あんまり音楽詳しくないんだよね」
『えー有名だよ、TVにも出てるよ』
音楽番組なんてHEY!HEY!HEY!とかカウントダウンTVをたまに見るくらいである。乏しい音楽知識では正直自信はないが何も答えないのは下の下だ。
「PERSONZってのはいたなぁ、ピロウズとか」
『違うよーもっと有名だよー』
「あ、わかった!PIERROT?」
『ちがーう』
「ごめん、もう降参」
『PENICILLINだよ?知ってる?』
PENICILLIN!忘れてた。確かにちょっと前に流行ってたな!最近見てないけど…
「あーPENICILLIN!もちろん知ってるよ!ロマンスの!」
『そうそう知ってるじゃん』
「そのボーカルってハクエイだよね?」
『そうだよ!付き合ってるの!内緒だよ』
いやいや内緒って言われても……
ハクエイが幾つかは知らないが私より年上なのは間違いない。TVに出るようなバンドマンが高校生と付き合ってるって?ないない!ないでしょ!
あーこれはあれだ、思春期の女子特有の憧れの人との妄想ごっこだ、それに私は付き合わされてるんだろうか?
それとも出待ちとかで1回だけヤられちゃって彼女って思い込んでる系なのかもしれない。
なんにせよこっちは大人だから(?)相手の妄想話に全力で乗っかることに決めた。
なぜなら女子高生とのメールは楽しいからだ!
「へー!すごい!彼カッコいいよね!」
『でしょ!でも本当に内緒、約束してよ』
「もちろん、誰にも言わないよ」
『ありがとー』
ふと我に返る、そういや仕事中だった。長々とメールしてたけれど周りにバレてないだろうか。
「ゴメン、仕事中なんだ」
『ありがとー!またメールするね!』
「こちらこそありがとう、いつでもどうぞ」
こうして自称ハクエイの彼女、サトミとメールのやり取りがはじまった。
第2話へ続く
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