見出し画像

009【21世紀の社会契約】を読んで


書籍情報

書籍名:21世紀の社会契約
著:ミノーシュ・シャフィク
訳:森内薫
発行日:2022年4月


内容判定

●読みにくさレベル……【2.5】
●参考文献……注付き、巻末に60Pほどの参考文献一覧有り
●内容の偏り……特になし
●内容ページ数……約230P


概要

 社会契約とは何か?から始まり、現代における社会契約の役割や重要性を育児、教育、就職、医療、労働、年金、貯蓄、介護などの面から説明している。


どういう人が読むべきか

 おそらく社会契約というタイトルだけを見るとあまりピンとこないかもしれない。しかし内容は生活に関する身近な話題であり、社会保障や格差の話に繋がっている。内容は私たちや政府は社会のためになにをするべきか、という視点で書かれており、身近な話題と相まって比較的読みやすい。大きな政府論や格差とも密接に関わる話であり、現社会の問題点をわかりやすくまとめている。


キーワード

・ベヴァリッジ報告書
・マルチステークホルダー資本主義
・育児
・チャイルドペナルティ
・学び直し
・フェアイニング
・ギグワーカー
・ブーメランチルドレン
・ブルントラント委員会


以下、感想

 私はよく「責任」という概念で話をしたり、思考をまとめることが多い。この本はある意味ではそれによく似ている。社会契約という概念は責任と置き換えても問題ないように思える。
 文中でもこの「責任」を一体誰が背負うのかという話が前半部分から続いていく。まず私たちは親、つまりは家族がいなければ存在しえないし、現代社会においてはコミュニティ、集団、国、世界と様々な繋がりと責任を負って生きている。しかし責任というのはあまりにも漠然としていて、これだけでは社会が成り立たない。ルールや法律がなければ、ここまで平穏な社会にはならないだろう。こうしたルールや法律に従っているというのが社会契約であり、私たちは当たり前のように法律を遵守し、税金を納め、国の決定に従う。今問題になっているのは、責任の考え方をより矮小化させていくと…つまりはあなたの人生はあなた個人によって決めるのだ、という状態になると結局は強い人だけがやりたい放題できる社会になるということである。これは、ここ数十年のグローバル化と規制緩和により、責任をより個人が判断するようになったことで格差の問題が広がったという事実が示している。

 こうしたリベラル色の強い本、もしくは著者においてはポピュリストやポピュリズムには否定的であるスタンスが非常に多い。これはポピュリズム自体が問題なのであろうか?私が考えるに、それが問題なのではなく、その無責任さが良くないのだろうと考える。欲望のままに意見を主張し、それがまかり通るのであれば社会は成り立たない。
 この本の(もしくは著者の)考え方の根底にはそもそも私たち個人個人が社会契約、つまりは個人として生活しているだけではなく、なんらかの形で社会に貢献していることによって社会が成り立っているのだという考えがある。私が思うにここらへんの社会へ貢献しているという意識が日本においては

ここから先は

4,007字

¥ 150

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?