髪を切る

こんな髪型にしてみたら?
と、テレビを見ながら夫が言った。出演していた池田エライザさんのようなショートボブにしたらどうかという提案だ。
髪を切る予定はなかったのだが、気がつけば一年近く美容院に行っていないし、切ってみようかなという気になった。

ここ数年はデコ出しのひっつめ髪で過ごしてきた。おでこの広さがコンプレックスだったが、見た目さえ気にしなければ前髪なしはストレスフリーでなかなか快適だ。忙しさに髪の手入れが行き届かなくても、結んでしまえばある程度ごまかせる。(はい、ただのずぼらです。)

後日予約をとり、バタバタと美容院に向かう。いい年のおばはんが、池田エライザさんの写真を見せてこんな感じにしてくれと頼むのは、気恥ずかしい。

(ちなみに池田エライザさんは、さっぱり若い芸能人を知らない私が、珍しく名前と顔が一致する1人だ。バラエティー番組に出ているのを見て、「この人見たことあるな~」と思ったら、映画『ルームロンダリング』であひるを抱えていた(正確にはあひるのランプ)女の子だった)個性派美人といった印象だ。今されているカットは姫カットというのか、多分私がしたら、平安時代の人になること間違いなしなので却下。

気恥ずかしいが、いつもながら用意不周到な私は、美容院の椅子に座ってからバタバタと池田エライザさんの画像を検索し(その場でするなよ)、姫カット前の画像の中から一枚、彼女の写真を見せる。

「『長さ』とか『雰囲気』は大体こんな感じでお願いします」

あくまで髪型だけの話ですよといった口ぶり、のつもりである。

「ちょっと見せてください」

サッと見せて携帯をしまおうとすると店長がストップをかける。

そうだ、彼はとても仕事熱心なのだ。画像を拡大すると、「写真を撮らせてください」とiPadで撮影される。
「これは・・・」

「髪質とかくせの感じがありますから、こういう風にはならないかもしれません」(ごもっともです)

「大体の、大体の形で大丈夫です😀」

恥ずかしいものだから、とにかく形だからとしどろもどろに答える私であった。

髪型は丁寧にブローしていただき、写真に近いものに仕上がった。ありがとう、店長‼️

髪に関しては、数年前からいつから白髪染めを始めるか問題も浮上したままくすぶり続けている。白髪が増え始め、そりゃあ染めたい気持ちは山々なのだけど、染めたら最後、延々と染め続けなければならない(多分そうなる)無限ループに陥るかと思うと、二の足を踏んでしまうのだ。

全ては考え過ぎな私が、自意識過剰なだけなのだとわかっている。誰も私の前髪があろうがなかろうが、多少白髪があろうがなかろうが、気にしていないのだ。

そうは言っても、いくつになっても、乙女心は続くものなのだ。



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