MAZDA2

 あなたとクルマ、どんな物語がありますか。

マツダと書き出しておいて、これは金曜ロードショーの間だけ流れるSUBARUのCM。わたしはこのCMがとても好きだ。たまにしか見られないな、と思って探したらこの時間だけに流れるショートストーリーだと知ったんだけど、知ってましたか?

父が定年退職したとき、その退職金を使ってマツダの車を買った。一目惚れだったのだと言う。その日、なぜか母も同時に車を買った。父は新車、母は軽自動車の中古だった。ある年の正月、初売りに行くなんて珍しいな~と家でゴロゴロしていたら、車買っちゃった!と言いながら帰ってくるから笑ってしまった。お正月に契約して、実際にうちに来たのは春に近いころだと思う。

その時から、わたしはDEMIOが好きだった。父の車も母の車もDEMIOではないのだけど、あのお尻のフォルムがたまらないな、と初めて車を好きになった。詳しくないけれど、マツダさんの車は、なんだか折り目(のように見える部分)がシャープな気がする。他社の車がスッと追っただけの折り紙なら、マツダさんの車はしっかりと折り目がついているような感じがする。(語彙力はここまで…)そんなところも、ほかの自動車メーカーよりマツダさんの車が好きな理由で、その中でも形がとても素敵と思ったのがDEMIOだった。次に買うならDEMIOがいいなあ、わたしが乗るならDEMIOがいいなあ、お父さんの車は大きくて運転しにくいから(事実一度ぶつけた)DEMIOに買い替えない?なんて言いながら、数年が経った。

この間、中古で買った母の車は幾度かトラブルに見舞われた。冷房の効きが悪いと思ったら穴が開いて何かが漏れていた、みたいなのとか、ぶつけられたりとか。まあしょうがないねえ、なんて言っていたけれど、これまた数年前から、車買い替えたいなあと呟くことが増えた。リースにする?見に行ってみる?と言っていたけれどなかなか行動に移すまではなくて、時々大きめのスーパーで車の展示会をやっていると立ち寄ったりはするもののパンフレットすら貰わない。まあ言っているだけかな、と思っていたら、本当の本当に車を、それも新車を買いたいのだと言ったのが、2020年の12月下旬のことだった。車検に出すなら、もう今のタイミングだ、と。

運転の頻度的に、不慣れなわたしも一緒に乗るから、軽自動車じゃなくて普通車。それなりに安全性が備わっているものがいい、というのが母の希望。わたしはもう、DEMIO一択。DEMIOは今、MAZDA2というお名前に変わっている。母的には他も見てみたい、とのことで、その場で求めるスペック、値段を一気に調べた。トヨタならこれ、日産ならこれ、とあたりをつけて、「わたしは比較したとしても多分MAZDA2が良いって言うと思う。気持ちは変わらないと思うから、MAZDA2にも、今挙げたほかの車にも試乗してきて」と伝えている間に、父が車検を予約したばかりのディーラーさんへ連絡。ちょっと、車検キャンセルにしてもらってもいい?車を買おうかという話が出ているんだ、と。その晩の間にはMAZDA2のおすすめポイントがびっしり書き込まれたパンフレットがポストに投函されていて、ディーラーのお兄さんのファインプレイにひそかに感動した。

そんなこんながあり、翌日試乗に行ってもらって、結局他社の車と比較することなく母がMAZDA2を選んだ。良いよ、こういうところが気に入らなかったとか、ちゃんと考えようよ。ほかの車も見て決めないと、きっと新車を買うのは最後だよ。そう伝えたけれど、おそらく母としても、ここでMAZDA2を選ばなかったとしていつまでも娘は「DEMIOちゃんが一番」と言い続けると予想したのだろう。言い続けてきてよかった。色はわたしが決めた。車のナンバーは、どんなナンバーのものが来るか楽しみにしようと決めなかった。

車は一か月足らずで納車されることになった。新しい車が来たらまずどこへ行きたいか?を年末年始でたくさん話して、行き先を決めて、父の車には犬用のドライブシートもあるけど、新しい車にも乗せたいよね、と新車用にも買った。1月の誕生日には、母とわたしの分お揃いで、ちょっとお高めのキーケースも買った。新しい車が来ることを、本当に楽しみにしていて、そろそろお気づきかもしれないけれど、納車された一週間後に内示が出た。

わたしとクルマにはこんな物語があった。たったの2ヶ月しか乗れなかった(もちろん、実家で母が大切に乗ってくれているけれど)。わたしも少なくない額を出資した。多分この感じだとしばらく実家にいそうだし、コロナが明けたら行動範囲を広げたいし、むしろ遠くまで行きやすい車があればコロナが広まっていても気分転換の遠出もしやすいなと思っていた。そういうところから、またしばらく運転しない日々に逆戻りだ。

散歩に出るたびに、ふと顔を上げてマツダ車を見つけると嬉しい。それがMAZDA2だともっともっと嬉しい。わたしと同じように、あの車を選んでくれた人がいるのだと思うと。そろそろ親善大使にでもなろうかな。

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