山際も星もぼくらに気づいては

赤い公園が描く東京が好きだ。

アンニュイで、なんでか少し田舎の匂いがして、でもやっぱりキラキラしてる、生身の東京。

10代の頃憧れた東京はどこにもないって知った今でも、赤い公園の中にある東京は私の隣にあって、いつも愛でて、いいなぁって、わかんないけどどっかそのへんの近くにあるんだなって思う。

駅のホームの階段を降りるときの生ぬるい風とか、住宅街に時々現れる小さい畑とか、個人商店の店先の色の焼けた小型家電の段ボールとか。そういうものを見た時の、どこからか込み上げてくる切なさや郷愁みたいなもの。

不協和音ギリギリの尖ったメロディも、ガールズバンド然としたポップなナンバーも、変幻自在で、でも通底してるイズムみたいなものがあって、そういうところもすごく好きだ。

今年は悲しいニュースが多くて、その度に少しずつ傷がついて、でも日常を生きるために瘡蓋を作って、なんとか今に食い下がってる感じ。

意味があるとかないとかそんなこと関係ないし、考えたくもない。でも、その人の作り出したものに、見も知らぬ私は少なからず救われて、だからその人を救えない自分が悲しいし寂しい。そんなことばかりだ。

でも、なんとも月並みな表現だけど、夜は明けるし明日は来る。泣いたって笑ったってそれは変わらない。

「ランドリーで漂白を」。初めて聞いた赤い公園のアルバム。大学の近くのTSUTAYAで借りた。当時使ってたsonyのウォークマンに入れてた。こんなもの、同年代の人が作り出してることになんだか凄まじい衝撃を受けたのを覚えてる。なんだったらちょっと嫉妬した。曲書いたことはおろかバンドをやったこともないのに。馬鹿みたいだな。今でも大好き。井の頭線の中でよく聞いてる。

覗き穴のPV。夏休み実家で見てたスペースシャワーでよく流れてた。

熱唱祭り、開演間際に駆け込んで、入り口近くで見たの覚えてる。すんごく楽しいライブだった。

石野さんが加入してからなかなかライブも行けなくて、そんなこんなしてるうちにコロナやらなんやら。見とけばよかったってなるのはわかってたのに、でもこんな早くそんなこと思うなんて、夢にも思わなかった。

何を思ったらいいのかまだよくわからない。きっとみんな、もっと、そうなんだろう。でも私のプレイリストから、彼女の曲が消えることはきっと一生ない。それだけはずっとずっとそう。


もう一度はじめよう

ぼくらのよる


今はまだ何も始められないし、でも明日からまた私は私の生活を繰り返すだけで、でもいつか、もう一度、はじめられたらいい。もうよくわかんないけどそんなことを思う。

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