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下手なシャレはやめなシャレ、上手なシャレはオシャレ

「あ あ」って書いて「イノウエ カヨコ」と読む、自称世界一読めない名前のVTuberです。よろしくお願いします。
名前からわかる通り、言葉遊びや謎解きが好きな者です。

好きな言葉遊びは日本語ならなんでも。
得意な言葉遊びはなぞかけと回文、そして今回のテーマ「ダジャレ」です。

ダジャレって、どうしてもオヤジギャグなんかの印象が強いので、
「その場を凍らせるもの」
「スベることが前提のもの」
「つまらないことが一周回って面白いもの」
みたいなイメージがあると思うんです。
でも、そんなことないんですよ! ダジャレって面白くて奥深いんですよ!!

ということでここからは、「オシャレなシャレ」を考えるにはどうしたらいいか、というのを私なりに論じてみたいと思います。
(論調の硬さとテーマの柔らかさで相殺してくれると信じています)


ダジャレの4分類

ダジャレは、以下のような4種類に分類できるという先行研究があります。

先行研究 fujit33(2018)

どの型においても、質と量がしっかりしているのが理想です。
完成度の高いダジャレはオシャレに見えますし、多少無理があっても大作ならかっこいいんです。
それを踏まえた上で【完全反復型・不完全反復型】【変形反復型・潜在表現重複型】の2グループに分け、よりオシャレにする方法を考えます。

表音ダジャレ

まずは【完全反復型・不完全反復型】。
どちらも音を(ほぼ)そのまま繰り返すダジャレで、「表音ダジャレ」と言えます。よく聞くダジャレはだいたいこれですよね。
単純に見えますけど、同音異義語やぎなた読みを駆使していてとてもスマートです。
表音ダジャレは音の並びに重きを置きますから、音の長さを確保できればオシャレになりそうです。
ただし、長くするのは文章全体じゃなくて、反復する文字列です。具体的には5文字以上を狙いたいですね。

よく知られるものだと「野口英世の愚痴ひでーよ」は長くてなかなかオシャレです。
オヤジギャグに数える人も多いでしょうけど、最初に聞いた時はけっこう衝撃的じゃありませんでした? 少なくとも私は、よくできてるなあって感心した記憶があります。

他には、ダジャレの手法を取り入れた安全標語で「1メートルは一命取る」なんてのもあります。高さ1メートルからでも、落ちたり転んだりしたら命に関わるから気をつけよう、という意味です。
6文字を(発音上は)完全に反復して、かつ意味が通っている。質と量を両立した反復型の名作です。


表意ダジャレ

次は【変形反復型・潜在表現重複型】について。
こっちは音を聞いただけではわかりづらく、言葉や文章の意味に注目する必要があります。
ダジャレに貴賤はありませんけど、表音ダジャレよりも一段階高度な「表意ダジャレ」と言えますね。
先行研究の図に含まれていない例で言うと、「春は揚げもの」「いい国作ろうキャバクラ幕府」みたいな、文章中の言葉をよく似た響きの言葉に置き換えるものも、潜在表現重複型に含めていいと思います。

先行研究の図の「倒産か、辛かったな(父さん、カツラ買ったな)」は、ぎなた読みやダブルミーニングとして完成度は高いですが、不思議とあまりオシャレに見えません。
原因は、文章としての意味に重きを置いていないこと。表意ダジャレは意味を重視してこそオシャレになるんです。
そしてこの場合の「意味」は、「言葉の距離感」と言い換えることができます。

「言葉の距離感」

先行研究の図の「すいま千羽鶴」を例にとってみましょう。
このダジャレを目にした時、私たちは反射的に「千羽鶴が謝っている」という情景を思い浮かべます。
でも、当たり前ですけど千羽鶴は謝りませんから、この情景はちょっと想像しづらいですよね。
では少し変えて「すいま千利休」ならどうでしょう。
千利休は人間なので、謝る姿を容易に想像できます。また、茶道の大家であるよぼよぼのおじいちゃんが謝っている情景は少しの悲愴と大いなる非日常を感じさせ、おかしみをもたらします。きっと。

このように、言葉と言葉の距離が遠すぎると、ダジャレは具体性を失って理解しづらくなり、オシャレではなくなってしまうのです。
では反対に、言葉と言葉の距離が近すぎるとどうなるでしょう。
例えば「すいま先生」。生徒が先生に謝ることは、特に珍しいことでもありません。つまり「すいません」と「先生」の距離は近すぎます。
こうなるとダジャレというよりは、軽口や略語のように見えてしまいます。収まりはいいですけど、オシャレには感じませんね。

情景が想像できないほど遠くもなく、こじんまりと収まってしまうほど近くもなく、ちょうどよく離れた言葉を掛け合わせる。これが表意ダジャレをオシャレに見せるコツです。

この観点から見ると、「春は揚げもの」がとんでもない完成度であることに気づきますよね。
枕草子の冒頭「春はあけぼの」のイメージが相まって、春のほのぼのとした日の出の時間にとんかつか何かを揚げている、または頬張っている。
突飛な情景ではありますけど、なぜか容易に想像できてしまう。そしてとても平和でちょっとバカバカしい。
「あけぼの」と「揚げもの」、似た音でこんなにもちょうどいい距離感の言葉はめったにありません。


さいごに

ダジャレを大きく2つのパターンに分けて、それぞれ「音の長さ」「言葉の距離感」が大切だという話を長々としてきました。
もちろん、どのパターンにおいても、これらを両立できればベストです。でもダジャレ道は長く険しい修羅の道ですから、そう上手くいかないことも多いでしょう。
そんな時にこの記事を思い出し、少しでもオシャレなダジャレの助けとしていただけたなら、とっても嬉しいです。

最後にせっかくなので、私が言葉遊びコミュニティ『p:/ピーコロン』の「だじゃれ」チャンネルで発言したダジャレを貼っておきます。

はい、この程度の者がダジャレを語っていました。


この記事は【言葉遊び Advent Calender 2023】に参加しています!


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